2A3/300B兼用/コンパチブル・シングル・アンプですが、最終調整で回路定数等を多少変更し、完成としました。

 

 

 

 

回路定数は多少変更しましたが、シャーシ裏の配線状態は、ほとんど同じです。あらためて紹介します。

 

 

使用した真空管について

 使用した出力管は2A3ですが、前述のとおり今回は、1枚プレートのソヴテック製を使用しました。最近は中国製の2A3Cという白ベースのものが出回っていますが、これもシングル・プレートでなかなか良い音を出してくれます。

 なお、今回製作したアンプは、フィラメント電圧を切り替えることにより、300Bも挿し替えて使用できますが、今回使用した電源トランスでは5V巻き線が整流管用しかありません。そこで6.3Vから抵抗をシリーズにして電圧を5Vに下げました。

 オームの法則で・・300Bのフィラメント規格は5V1.2Aです。6.3Vから5Vに下げるには6.3V-5V=1.3V下げれば良く、シリーズにつなぐ抵抗値は1.3V÷1.2A=1.0833Ω≒1.1Ωということになります。1Ωでも大丈夫だとは思いますが、今回は2.2Ω5Wのセメント抵抗をパラ接続にして1.1Ω10Wで電圧を300B用の5Vにしました。

 

 300Bとしては電源トランスの350Vタップを使い、もう少しプレート電圧を高くして電流も、もう少し流したほうが出力も大きいのですが、B電圧の切替は無しにしてフィラメント電圧の切替だけとしました。

 そのため、2A3としては、プレート電圧が少し高めとなっていますが、自己バイアス抵抗を1KΩとして電流を少し押さえることによって、2A3動作のプレート損失(Pd)は、規格表の動作例と同じ約15Wにしてあります。

 

2A3の動作ですが、300Bについては多くの動作例が規格表に掲載されていますが、2A3のシングルでの動作例は1つしか書いてありません。そこでフィラメント電圧の切替だけで、出来るだけ2A3のプレート電圧を高くするため、規格表のEp―Ⅰp曲線(プレート特性曲線)から2A3の最大プレート損失15Wをオーバーしないよう供給B電圧とバイアス抵抗(Rk)を決めました。その結果が下記の図です。

 

 

 なお、ヒーター電圧を切替へ、300Bに挿し替えても出力部の電圧配分は、プレート電圧、バイアス等、2A3とほとんど同じです。最大出力時の入力感度は、2A3300Bも約0.7Vですが、最大出力は300Bのほうが少し大きく4.6Wでした。

今回のアンプでは2A3の最大プレート損失が15W弱と規格とおりでしたが、300Bの動作では最大プレート損失40Wの規格に対し、15Wで37.5%と、300Bとしては非常に軽い動作で長寿命設計となっています。

 

 ハム音ですが、2A3だと2.5Vと低電圧のため、自己バイアスの場合、ハムバランサーが無くても20~30Ω位の同じ値の2本の抵抗をフィラメントの1番、4番のピンに付け、それぞれつないだ2本の抵抗の中点からバイアス抵抗とコンデンサーをつなげば、ハムはほとんど出ませんが、300Bは5VなのでDC点火する方が多いのですが、今回はAC点火でハムバランサーを付けましたが、DCでなくてもハムバランサーを調整すると、ほとんど聞こえないくらいのハム音まで追い込むことが出来ました。今回は手持ちの関係でハムバランサーは100Ωを使いました。

 

■初段管の回路と使用真空管&ヒーター配線での注意点

 300Bや、2A3ではバイアスが深いので、ドライブがやや難しく、6SN7などの中μ管の2段増幅や、5極管ドライブが良く使われ、WE300Bの91タイプでは5極管のWE310Aや、2A3では6SJ7高信頼管:5693)などが多く使われます。今回の出力回路であれば、バイアスは52Vなので、この約7割52V×0.7=36.4Vあれば大体良いので、12AX76SL7のSRPPあるいはパラ接続でもドライブは可能ですが、今回は出力電圧が高く取りだせる6SJ7としました。

 なお、今回は初段管もコンパチブルで、6SJ7と同じシャープカットオフ5極管の6SH7もそのまま挿せるよう初段管の供給B電圧を決めました。6SH7はカソードが3番ピンにも接続されていますが差し替えには大丈夫です。6SH7を使用すると特性が異なるので、プレート電圧が6SJ7(5693)より高くなりますが、規格はオーバーしていないので大丈夫です。その他に6SJ7や、6SH7の代用として、リモートカットオフですが、6SK7や、6SD7でも代用はできます。

 

■ヒーター配線での注意---

 初段管の6SJ7(5693)のヒーター配線ですが、電源トランスに初段管用のヒーター巻き線が足りません。ヒーター・トランスを追加する方法もありますが、今回は回路図を見てもわかるように出力管と共用しています。ハム防止のためと言って片側をアースしないこと。出力管が直熱管のため、アースすると出力管が壊れます。出力管とヒーターを共用すると6SJ7のヒーターには52Vの電圧がかかりますが、6SJ7のヒーター/カソード間の耐圧規格は90Vなので全く問題なしで、52Vのヒーターバイアスがかかっている状態になるので、かえってハム防止になっています。

 

■整流管について

 今回は5U4Gと同じ規格の5U3Gを使用しています。規格表ではコンデンサー・インプットの場合、最初のコンデンサーの容量は10μFとなっていますが、手持ちの関係で2倍の450V20μFを使いましたが、整流後に電圧調整用の90Ωの抵抗があり、これにより、コンデンサーヘの突入電流も抑えることが出来るので全く問題はありません。ここは5R4GでもOKですが、効率が悪いのでプレート電圧等が多少下がりますが聞いた感じは変わりません。大変高価ですがWE274BでもOKです。

なお、傍熱管の5AR4や、5V4CV378などでも8番ピンからDCを取りだしているので、そのまま挿し替え出来ます。ただし電圧が少し高く出ますので、2A3には使用しないでください。プレート損失が少しオーバーします。300Bの場合は5AR4を使うとプレート電圧が多少高くなりますが出力はほとんど変わりません。

 

■回路図について

長い投稿文になっていますが、回路図を掲載します。

 

  

■試聴結果・・・

昨日から時々、電源スイッチを長く入れエージングをしています。

詳しい試聴をする前に2A3300Bで、参考にオシロスコープで100Hz、1KHz、10KHzの矩形波(方形波)を低周波発振器で入力し波形を見てみたところ、100Hzでは低域の減衰が見られ、10KHzでも思った以上に高域での減衰が確認でき、いわゆるカマボコ特性まではいかないまでも、広帯域とは言えない特性です。しかし耳で聴いた感じはバランスのとれた素晴らしい音に聞こえます。FNBをかければ低域、高域共に伸びますが、直熱3極管ということもあり、今回は無帰還アンプとしました。2A3300B共に不満は全くありません。可聴部での低音、高音は十分に出ていて伸びもあります。

 

 使用したソヴテックの2A3と、中国製の300Bですが、どちらもシングル・プレートで同じような構造のプレートのためか、音の傾向は同じに聞こえます。今日は、2A3をRCA社のものに差し替えて試聴、更に300Bはウエスタン・エレクトロニックのWE300B(1986年製)に差し替えて音の違いを聴いてみました。

 

RCA2A3・・・

 

 

WE300B・・・

 

 今回のアンプは出力トランス10Wのもので、ノグチ(現:ゼネラルトランス販売)のPMF-10Wでこのクラスでは音の違いは出るのだろうかと思ったのですが、やはり多少異なりますね。ソヴテックの2A3は1枚プレートということもあってか、とてもクリアーで繊細でありながら輪郭のしっかりした音です。同じ電気特性の2A3でもRCAのものはシングルプレートのものは高価で持っていません。H型2段プレートのものです。こちらもしっかりした音ですが、良く聞くとソヴテックと異なり音に柔らかさや、余韻的なものを感じバランスの良くとれた音です。特にボーカルがきれい・・

どちらの音が好きかは個人によって異なるでしょう。

 

 ウエスタンのWE300Bですが、10Wクラスの出力トランスでも全く音が違います。雰囲気音みたいな音を感じますし、音に安定感があり、音に豊かさや豊潤さを感じます。同じ300BでもWEは別物ですね・・300Aはもっといいですね・・友人のアンプで聞いたことがあります。

まあ、今回のアンプにWE300Bはもったいない話・・チャイナ製で十分楽しめます。ソヴテックの2A3が良いかも・・・

 

自作のアンプとしては、結構良く出来たと思うので、300Bまでは予備が少ないので、出力管はソヴテックの2A3だけを付けて、フリマに出品を考えています。

 

----お願い----

このブログでは、同じ回路のアンプの製作を、おすすめしているものではありません。また、アンプの試聴結果は、個人的な感想です。したがって、このブログ内記事の回路図等は、参考にしないで下さい。同じ回路のアンプを、お作りになるのは自由だとは思いますが、全て自己責任の上、製作くださるよう、お願いいたします。投稿者としての責任は一切持ちません。真空管アンプ製作は、高電圧等による感電死や、火災、火気事故、シャシー加工時での怪我など、注意が必要です。安全第一で楽しいアンプ作りをしましょう。

 

では、今日は、このへんで・・

長い投稿を読んでいただきありがとうございました。 HIROちゃんでした。