我が国を代表する合唱指揮者の田中信昭さんが亡くなられた。
9月18日 讀賣新聞からコピーしました。
田中信昭さんは、訃報記事にもあるように東京混声合唱団の創設者で常任指揮者となり、亡くなるまで桂冠指揮者として活躍、声楽をネトケ・レーヴェに、指揮法をクルト・ヴェス、山田一雄に師事しました。
指揮者の田中信昭さんと言っても、クラシック音楽ファンの中には知らないと仰る方が多いと思いますが、合唱ファンにとっては神様的存在の指揮者です。(1977年に来日したカラヤンが普門館で演奏したベートーヴェン交響曲第9番「合唱」での日本プロ合唱団連合と、東京藝術大学合唱団の総指揮を担当した指揮者です)
指揮者というと一般にはオーケストラ指揮者のイメージで、合唱指揮者というと聞きなれないかもしれません。どちらかというと合唱曲に特化した指揮や、オーケストラよりも合唱の指揮を得意とする指揮者だと思います。今は亡き評論家の宇野功芳さんも合唱指揮者と言ってよいでしょう。
(実は私HIROちゃんは、中学時代からの合唱経験者で、若いころに東京で開催された合唱連盟主催の「合唱講習会」に参加したことがあり、田中さんの指導と指揮で歌った経験があります。)
田中氏はこれまで多くの合唱曲の初演やレコーディングをしています。
レコーディングした曲では三善晃の曲が多く、混声合唱組曲「嫁ぐ娘に」や、外山雄三指揮/日本フィルハーモニー交響楽団との1977年3月10日 東京文化会館 日本プロ合唱団連合第7回定期演奏会 実況録音の「レクイエム」は超名演です。
LPレコードです。
以下は、過去のこの演奏を紹介したブログでの投稿から一部抜粋ですが・・曲は、いきなり様々な打楽器群の強打の嵐と、叫ぶような合唱から始まります。単に歌詞に旋律を付けたという音楽ではなく、とにかく曲のはじまりから終わりまで、慟哭そのもの・・厳しく、そして激しい苦しみ・・曲全体が死の恐怖や怒り、生きていくための「人間の叫び」に聞こえます。 狂乱した僧侶が、叫びながらお経を唱えるようにも聞こえる部分があります。オーケストラの打楽器群の激しい強打と共に合唱は歌詞を聞くというより、<人間の叫び>が聴く人にストレートに突き刺さってきます。これが最後まで続くのですから聴いていて苦しくなります。・・この三善晃の慟哭の曲、一度は聴く価値ありの1曲です。この演奏は外山雄三指揮によるものですが、合唱団の総指揮として田中氏の力量が最大限に発揮された超名演奏と言えるでしょう。
また、下記の佐藤真作曲の合唱組曲の「旅」と「蔵王」はオールドの合唱ファンなら誰もが知っている名曲中の名曲で、この録音は名演奏です。この録音では奥様の田中瑤子さんがピアノ伴奏をしています。
(HIROちゃんは、この組曲2曲とも全曲を、何回か所属していたアマチュア合唱団の定期演奏会で歌っています。大好きな曲です)
こちらもビクターから発売されていたLPレコードです。
手元にあるLPレコードからもう1枚・・・
間宮芳生作曲の「合唱のためのコンポジション」から第10番「オンゴー・オーニ」と第1番「混声合唱のためのコンポジション」です。
このLPの録音では第3番と第6番も録音されていますが、こちらは岩城宏之指揮となっています。
中でも田中氏が指揮した第1番「混声合唱団のためのコンポジション」は、単なる民謡の編曲ではなく、囃子詞を素材とする合唱曲で、歌う側としてはかなりの難曲ですが、これは名盤です。東京混声合唱団では今でも何度も歌う「持ち歌」となっています。
(この曲は生で何度も聞いた曲で、学生時代に東京のヤマハホールで、作曲者自身の指揮による演奏を聞いたことがあります。歌ってみたい曲ですが・・歌ったことはありません)
では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。