京成百貨店に入るウナギ料理店「日本橋 鰻 伊勢定」で土用の丑の日向けに販売した弁当で130人の食中毒患者が発生しました。横浜市保健所の調査で「黄色ブドウ球菌」を原因とする食中毒と断定しました。一口に食中毒と言っても、ノロウイルスやE型肝炎など、ウイルスによるものや、細菌性のもの、フグや毒キノコなどによる自然毒によるもの、化学物質によるものなど、たくさんの種類があります。
食中毒は、1年中発生しますが、夏は特に細菌性の食中毒が多く発生する季節です。
しかし、細菌性食中毒と言っても多くの種類があり、種類によって潜伏期間(発症するまでの時間)や症状も異なります。そして覚えてほしいのが・・・
食中毒をおこす食べ物は、何の変化もありません!
・味も変わりません。
・臭いも変わりません。
・色も変わりません。
だから怖いのです!!
味が変だったり、変な臭いがしたり、色が変わっていれば食べません。何の変化もないので食べてしまい、中毒になるのです。中毒をおこす食べ物は普通に美味しいのです。
細菌性食中毒の種類はたくさんありますが、今回の原因となった「黄色ブドウ球菌食中毒」については、実は家庭でも多く発生する食中毒で、特に「キャラ弁」では十分な注意が必要です。
※ここからは、「食品衛生学」や、「食品学」が専門のHIROちゃん先生がわかりやすく解説しますネ・・以前に書いた記事から再度、投稿してみます。
お弁当で起こりやすい細菌性食中毒のひとつとして「黄色ブドウ球菌」による食中毒があります。そこで「黄色ブドウ球菌」についてのお勉強・・・
もちろん、黄色ブドウ球菌意外の細菌や、ノロウイルスでも食中毒は起こりますが、今回は、人の手指からの汚染で起こることが多い食中毒の予防についてです。
黄色ブドウ球菌の特徴は・・・
■自然界に広く分布し、普通に健康な人の皮膚や、咽喉、鼻腔、耳、髪の毛などにも多くみられる菌です。(常在菌と言います)特に傷があったり、化膿していたり、手荒れの所には100%いると言ってよいでしょう。
■手指などから、この細菌が食品に混入すると、食品の中で菌が増殖して「エンテロトキシン」という毒素をつくります。一旦、食品中でこの毒が出来てしまうと。厄介なことに、この毒素は加熱しても壊れないのです。ですから、毒が出来てしまったら煮ても焼いても食べ物中に毒素は残るのです。
■潜伏期間は早く、食べてから30分から6時間、平均3時間で吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が出ます。
■原因食品としては手指からの汚染が多いため、弁当類、おにぎり、調理パン、生菓子など人の手が多くかかる食品が多い。
何故、「キャラ弁」が危ないのか…?
カワイイお弁当から食中毒が・・・・
■作ってから食べるまでの時間は出来るだけ短く!
世の中のお母さんは、お子さんが喜ぶようにと、いろいろな食材を使い、色とりどりのカワイイお弁当を作っていますよね。中には朝の4時に起きて作っているお母さんもいるとか…そしてスマホでパチリ!…SNSに投稿…「イイネ!」を貰いキャラ弁作りに朝早くから凝ってしまう・・・これでは食べるまでの時間が長くなります。細菌がゼロという食品は無いと考えてください。
■夏場は弁当に「海苔」をご飯の上にのせると危険が増す!
よく「海苔」をハサミで切ってパンダや、クマさんなどの耳や口をご飯の上にデザインしますが、実は、これが危険!海苔をご飯の上に乗せると海苔がご飯の水分を吸い取り、水分が多くなり細菌が増殖しやすい条件になり、ご飯と海苔の間で菌が増殖します。しかも、使い捨ての手袋をしていては作業がやりにくいからと言って、素手で海苔を切ったり、他のおかず等も素手で形を作ったりしては駄目なのです。前述した手指に付着している「黄色ブドウ球菌」をつけてしまうのです。
キャラ弁でなくても、愛する旦那様のお弁当…、大きなハートマークの「のり弁」は絶対にダメですよ~~~
いくら良く手を洗ったつもりでも、爪などが長い人は手を洗うと逆に手の菌数が洗う前より増えるときがあります。それは洗うことで爪の中の細菌が浮き出てくるからです。…手洗いが重要・・・
■ご飯は完全に冷ましてから!
ご飯は完全に冷ましてから詰めないと、ご飯の暖かさで、おかずの菌が増殖しやすくなります。ご飯は完全に冷ましてから詰めましょう。出来れば、ご飯とおかずは別容器の弁当箱がいいですね。
■生野菜サラダなどは別容器で保冷剤を使いましょう。
実は野菜は土壌から由来する雑菌が非常に多く、夏場の弁当では生野菜から「異臭」が出てきます。別容器に入れて保冷剤と一緒に包むと良いでしょう。
■加熱調理品は十分に加熱する。
よく、お弁当に「卵焼き」を入れますが、卵はサルモネラ菌による食中毒の原因にもなることがあり、また、細菌が増殖しやすい食品です。
ジューシーな卵焼きは弁当には駄目! 十分に固くなるまで加熱しましょう。
■手の荒れやすい方は要注意!
前述したように手荒れや傷があると「黄色ブドウ球菌」が付いていると考えてください。素手で、オニギリをにぎったり、おかずを盛り付けることはしないでください。
■調理中には手で、顔や毛髪に触れないように・・・注意
黄色ブドウ球菌は、健康な人の顔などの皮膚や、髪の毛などにも普通にみられる細菌です。ですから調理中に髪の毛が気になるからといって、髪に触れたりしてはいけません。もし、触ったら必ず手を洗いましょう。
また、食品以外のものに触れた時にもまめに手を洗いましょう。
・・・・ご参考・・・・
細菌検査で検出した「黄色ブドウ球菌」のコロニー(集落)です。実は、この黄色ブドウ球菌は私HIROちゃんの鼻の中を綿棒でチョットだけ拭き取り、培養して検出したものです。
大学に勤務していた時の私の担当科目、「食品衛生学実験」の授業で行った検査結果の写真です。
※使用培地:卵黄加マンニット食塩培地
(コロニーの周りにコアグラーゼ陽性を示す卵黄反応が見られる)
これまでの投稿した「食と安全・安心」に関する投稿記事については、「食の安全・安心・感染症」のテーマから見てくださいネ。
なお、食中毒についてご質問などがあれば、コメント欄で質問してください。
「健康第一!」熱中症にも気を付けてね・・
では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。