前回、エーリッヒ・クライバーについて書きましたが、実は「エーリッフ・クライバー・コレクション」のBOXの中には、まだ聴いていないCDが多くあるのですが、名盤は前回のベートーヴェン交響曲と、モーツアルトの歌劇「フィガロの結婚」ということで、ひとまず終わることに・・機会があれば追加で投稿したいと思います。

 

今回はヘルマン・シェルヘンについて書いてみます。

 

ヘルマン・シェルヘン (1891-1966年)

プロフィールはタワーレコードの通販サイトから抜粋

1891年6月21日、ベルリン生まれの指揮者。1966年、フィレンツェでの公演中に急逝。独学でヴァイオリンとヴィオラを学び、1907年からベルリン・フィルのヴィオラ奏者として活躍。1912年、シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」で指揮デビュー。以来、新ウィーン楽派や現代音楽作品の紹介に努め、世界初演作品は150曲にものぼる。第1次大戦の勃発でロシアの捕虜となるが、1922年以降はドイツ放送管などの指揮者を務める。ナチス政権の確立後はスイスに拠点を移し、戦後はアメリカ進出も果たした。ウェストミンスター・レーベルが、設立されるや、毎月のように膨大な録音が残されていますが、知的な演奏でありながら癖がとても強い演奏が多い。

2012/07/30 (2019/07/30更新) (CDジャーナル)

 

彼はウエストミンスターにウィーン国立歌劇場管弦楽団と、ロイヤルフィル・ハーモニー管弦楽団とベートーヴェンの交響曲全曲を録音していますが、これらは、癖があり、あまり高い評価ではなかったようです。その中でも第3番「英雄」は癖の強さが目立つのですが、聴いていてはユニークで、面白い。

彼を一躍有名にしたのが死の1年前にルガノ放送管弦楽団を振った白熱したベートーヴェン交響曲の公開放送ライブ録音です。

こちらは山野楽器から発売された5枚組のBOXです。

 

 

 

この演奏は、とてもユニークな名盤かもしれないが名演奏だろうか?(今回の投稿記事は、過去に投稿したシェルヘンの記事を一部転記、見直しして再投稿するものです)

このルガノ放送管弦楽団によるベートーヴェン交響曲全集ですが、1965年の1月8日から4月5日までの、わずか3か月の間に集中して放送されたスタジオでの観客を入れたライブを録音したもの。ステレオ録音で全曲拍手入り、音も悪くありません。

 この演奏ですが、シェルヘンの亡くなる1年前の最晩年における録音ですが、「とにかく凄い演奏!」というのが第一印象・・

とにかくオーケストラはヘタクソでメチャメチャに近くテンポも異常?・・シェルヘンの指揮が、とにかく力が入っていて、本番なのに指揮をしながら号令と怒鳴っている声が随所に大きく聴かれます。楽団員が必死に演奏しようとするのですが、バラバラ・・手に汗握るようなヒヤヒヤの演奏です。アンサンブルも関係なし、変なところで第2ヴァイオリンやヴィオラの音が極端に大きくなったり・・・休符が長すぎたり、逆に短すぎたり・・この全集は、よほどベートーヴェンの交響曲が好きなマニアでなければ推薦は出来ません。名演?迷演?名盤?

 

そのような演奏なので、聴く人によって評価は大きく異なると思いますが、出来不出来はあります。しかし第3番「英雄」、第6番「田園」、第7番、第8番、は一聴の価値ありです。

とにかくオケはヘタクソでも迫力が凄い!・・・この4曲中で一番まともなのは「英雄」でしょうか。第6番の「田園」ですが、これもどちらかと言うと普通の演奏ではありません。特に嵐の迫力は超凄い!こんなにど派手な演奏の第4楽章は他にありません。第7番の第2楽章、第4楽章での怒鳴り声と、ど迫力!・・第8番の第3楽章にいたっては超スピードでシェルヘンが怒鳴りながらオケを引っ張りますがテンポがついていけず、メチャメチャ。第8番は全曲でも21分位で演奏が終わってしまうとんでもない演奏。

 

これらの演奏は、今は亡き評論家の宇野功芳さんのベタ褒め文に大きな影響を受け、当時は、とても感動したのですが、いま、あらためて聴きなおすと、感動ではなく、駄演奏に感じなくもありません。確かに、この演奏は、ユニークな名盤かもしれないが名演奏だろうか?というのが最近の正直な感想です。

 

シェルヘンのモーツアルト「レクイエム」の名演奏?

シェルヘンのモーツアルトのレクイエムについては1953年録音のモノラル盤と、1958年、ウエストミンスター原盤のステレオ盤の2種類が手許にあります。どちらも基本的には同じ解釈ですが、このシェルヘンの演奏・・・ベートーヴェンと同じように、名演なのか迷演?なのか、駄演なのか良くわからない・・・他の演奏には見られない個性の強い、異質な演奏です。

1953年盤では、ひたひたと静かに迫ってくる足音のような音で始まる第1曲・・・なんと恐ろしい音の表現なのか・・・、すすり泣くような弦の音ではありません。1958年盤も同じ表現ですが、この1953年盤のほうが恐怖感は凄い・・・

ぶっきら棒のところもあり、異様にも感じるテンポ設定と鋭いアクセント・・・これを表情豊かな演奏と評価して良いのだろうか?シェルヘンのファンがおられれば1953年盤がお薦めです。シェルヘン崇拝者が評価したら、これはとんでもない名盤かも・・

 

■ヘルマン・シェルヘン指揮

  ウィーン国立歌劇場管弦楽団   ウィーン・アカデミー室内合唱団

   ラーズ(S)、レッセル=マイダン(MS)

   ムンテアヌ(T)、スタンデン(B)   (1953年モノラル録音)

 

  

なお、参考までに私のヘルマン・シェルヘンのCDライブラリーは下記のとおりです。(順不同です)

 

■ベートーヴェン

・交響曲第1番 ハ長調 

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1954)

ルガノ放送管弦楽団(1965/01/08ライブ録音)

・交響曲第2番 ニ長調

ロイヤル・フィルハーモニーO(1954)

ルガノ放送管弦楽団(1965/01/08ライブ録音)

・交響曲第3番 変ホ長調「英雄」

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1951)

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1958)ステレオ

ルガノ放送管弦楽団(1965/02/12ライブ録音)

・交響曲第4番 変ロ長調

ロイヤル・フィルハーモニーO(1952or54)

ルガノ放送管弦楽団(1965/02/26ライブ録音)

・交響曲第5番 ハ短調

ロイヤル・フィルハーモニーO(1954)

ルガノ放送管弦楽団(1965/02/26ライブ録音)

・交響曲第6番 ヘ長調「田園」

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1951)

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1958)ステレオ

ルガノ放送管弦楽団(1965/03/12ライブ録音)

・交響曲第7番 イ長調

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1951or52)

ルガノ放送管弦楽団(1965/03/19ライブ録音)

・交響曲第8番 ヘ長調

ロイヤル・フィルハーモニーO(1954)

ルガノ放送管弦楽団(1965/03/19ライブ録音)

・交響曲第9番 ニ短調「合唱」

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1953)

ルガノ放送管弦楽団(1965/04/05ライブ録音)

・レオノーレ序曲第1番、第2番

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1960)

・コリオラン序曲

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1954)

・オラトリオ「かんらん山上のキリスト」作品85

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1962)

■ブラームス

・交響曲第1番 ハ短調

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1953)

・交響曲第3番 ヘ長調

ルガノ放送管弦楽団(1962/04/25ライブ録音)

■モーツアルト

・交響曲第40番 KV550

・交響曲第41番 KV551

・フルートとハープのための協奏曲

Orchestre du Theatredes Champas-Elysees(1953)

・ピアノ協奏曲第15番 K450

ミケランジェリ/ルガノ放送管弦楽団(1956 ライブ録音)

・レクイエム K626

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1953)

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1958)ステレオ

■ハイドン

・交響曲第100番 ト長調

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1958)

■シューマン

・ピアノ協奏曲 イ短調

ミケランジェリ/ルガノ放送管弦楽団(1956 ライブ録音)

■ドヴォルザーク

・チェロ協奏曲作品104

フルニエ/ルガノ放送管弦楽団(1962/04/25 ライブ録音)

■マーラー

・交響曲第1番 

ロイヤル・フィルハーモニーO(1955)

・交響曲第5番嬰ハ短調

フランス国立管弦楽団(1965)

※なんとこの録音はバロックが多いハルモニア・ムンディです。

・交響曲第9番 ニ長調

ウィーン交響楽団(1950 ライブ)

・交響曲第10番 アダージョ

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1952)

■ベルリオーズ

・幻想交響曲

ロンドン交響楽団(1954)

■チャイコフスキー

・序曲「1812年」

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1958)

■ヒンデミット

・ヴァイオリン協奏曲作品36-3(1964)

ゲルレ他

■クルト・ワイル

・ヴァイオリンと管楽のための協奏曲

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1952)

■ストラヴィンスキー

・組曲「火の鳥」

ロイヤル・フィルハーモニーO(1954)

■シェーンベルグ

・弦楽器のための組曲

ベルリン放送交響楽団(1959)

■レゼニック

・ドンナ・ディアナ序曲 

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1957)

■オルフ

・エントラータ

ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1960)

 

では、今日はこのへんで・・・HIROちゃんでした。