今回も「名指揮者の名盤・名演奏」の番外編として、「もう少し長生きしてほしかった名指揮者と名盤」の4回目としてHIROちゃんの架蔵している音盤ライブラリーから今回は、フェレンツ・フリッチャイと、グイド・カンテルリの二人について紹介してみます。

 

フェレンツ・フリッチャイ 1914-1963年

 ハンガリーの指揮者、リスト音楽院でバルトークとコダーイに学ぶ。15歳で指揮デビュー。

1949年からRIAS交響楽団の音楽監督に就任、バイエルン国立歌劇場の音楽監督の後ベルリン・ドイツ・オペラの音楽監督になりますが、病気のため、49歳という若い年齢でこの世を去りました。

 HIROちゃんが架蔵しているフリッチャイの音源は、それほど多くはありません。バルトークの曲も何曲かは持っていますし、モーツアルトの交響曲や歌劇などもあるのですが、ここでは次の曲を名盤として紹介します。

 

・ベートーヴェン交響曲第3番「英雄」

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 録音:1958年 (LP)

 

 

 フリッチャイは、ベートーヴェンの交響曲の第1番、第3番「英雄」、第5番、第7番、第8番、第9番「合唱」をドイツ・グラモフォンに録音していますが、これらの中で「英雄」は最後に録音されたようです。上の写真は今から60年前の中学生の時に、コンビチュニー指揮のベートーヴェン交響曲第9番「合唱」と共に、小遣いをためて購入した、初めてのLPレコードで、今でも大切にしています。当時はフリッチャイという指揮者名も全く知らず、安価だったので購入したものでした。そんな思い入れもあり、HIROちゃんの「名盤」として選んだのですが、テンポは中庸で伸びやかさがあります。ベルリン・フィルの重厚な響きの演奏で「名盤」で良いでしょう。

 

・チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」

 ベルリン放送交響楽団 録音:1959年 (CD)

 

 

 フリッチャイの「悲愴」というと、1960年11月24日のバイエルン放送交響楽団とのライヴ盤も素晴らしいですが、ここでは1959年のステレオ盤をとります。この演奏については、Yahooブログ時代の2014年9月30日投稿で「チャイコフスキーの交響曲名盤名演奏」として以前に記事を書いていますので、一部転記します。

 この演奏は、全曲で50分以上、第1楽章は約22分という、出だしは超スローな不気味ともいえる序奏部。一音、一音が魂を感じます。そして感情のこもった第2主題の美しさ。第1楽章での木管の音が、また素晴らしい。この録音の4年後、1963年、彼は49歳で、この世を去ります。それを自分が予期したような、正に悲愴感あふれる演奏。ゆったりとした前半の演奏。そしてpppppのあとのffの全合奏の強烈な展開部、緊張感と、そして迫力が伝わってくる、すさまじい演奏。2楽章もきれい。3楽章の後半の迫力も凄い。そして、クライマックス後に消えるように終わる4楽章。HIROちゃんにとって大好きな名演奏です。

 

 もう1枚は、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」です。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 録音:1959年 (LP)

 

 

 フリッチャイの「新世界より」のベルリン・フィルハーモニーとの演奏です。彼はモノラルでもRIAS交響楽団と録音をしていますが、このベルリン・フィルとの録音は力強い迫力満点のスケールの大きな演奏です。鮮明で情感も濃厚な演奏です。「新世界」の名盤というと、迫力とスケールのあるケルテス指揮/ウィーン・フィル盤がありますが、これとは、また違ったスケール感が味わえます。

 白血病などの病と闘いながら指揮活動をしていましたが、49歳で逝去したフリッチャイ・・ベートーヴェンの交響曲も全曲録音してほしかったし、まだまだ活躍してほしかった指揮者の一人でした。

 

グイド・カンテルリ 1920-1956年

 今回は、もう一人・・イタリアの指揮者、グイド・カンテルリです。

カンテルリについてもYahooブログ時代の2015年4月24日に「イタリアの名指揮者/カンテルリ」として、記事を投稿していますので、一部修正し、そのまま転記しました。

 

 1920年生まれ、当初はピアニストとしてデビュー、1943年にヴェルディのオペラ「椿姫」を振って指揮者デビュー。大戦後にデビューした指揮者の中では最も高く評価されていたひとり。活躍を期待されていたのですが、1956年、アメリカ公演に行くために搭乗した飛行機が墜落し、36歳という若さで世を去った指揮者です。しかも亡くなる、わずか数日前に、スカラ座の音楽監督に就任することが発表されたばかりだったという、悲運の指揮者でもあるのです。

 予定していたアメリカ公演は、カンテルリと同世代の指揮者として躍進していたレナード・バーンスタインが、コンサートで代役を務めています。

もし、飛行機事故にあわず、そのままスカラ座の音楽監督に就任していたならば・・・と思った方は多いようです。 残念ながら彼の指揮するイタリア・オペラの録音は無いようですが、EMIなどにベートーヴェン、ブラームス、シューベルト、チャイコフスキーの幾つかの交響曲などの名盤を残しています。写真の音源はカンテルリがEMIに残した全録音をCD8枚に収めたBOXです。

 

 

 各曲ごとの感想について全て詳細に述べることは出来ませんが、いくつか代表曲について簡単に述べるとすれば・・・この中ではモーツアルトの「交響曲第29番」が光ります。この曲はカラヤンなども録音を残していますが、カンテルリの演奏は、一言でいうなら「快活で生き生きとした明るい演奏」でしょうか。

 私の中での、この曲の名盤ベスト1は、この演奏です。

「音楽の冗談」は曲としての魅力が私にはあまり無いので、面白さを感じません。

 ベートーヴェンは交響曲第5番と第7番が収録されています。どちらも重厚さや迫力といったものは、あまり感じられませんが、実に生き生きとしたベートーヴェンです。但し第5番は第1楽章が欠けています。セッションでは第1楽章を最後に録音する予定だったのでしょう。第1楽章を録音しないまま彼は亡くなってしまったのです。他の録音で全楽章のCDは入手できるようですが、このEMIへの第5番で第1楽章が欠落しているのは何とも残念です。

 ブラームスについてもベートーヴェンと同様です。 このBOXのワーグナー:ジークフリート牧歌では、デニス・ブレインの見事なホルンを聴くことが出来ますが、ブラームスの第1番のホルンもフィルハーモニア管弦楽団なので、デニス・ブレインでしょうか?第4楽章のホルンが素晴らしい。

 チャイコフスキーの第5番、第6番も堅実な演奏です。「悲愴」については、私はメンゲルベルクのような濃密で感傷性の強い演奏を好みますが、彼の演奏は感情的なものにあまりとらわれずに、純粋な音楽として取り組んだ演奏のように私は感じました。

 ドビッシー、ラヴェルは、色彩豊かな音色?との表現が良いか、悪いかは、分かりませんが、各楽器のバランスのとれた音楽を聴くことができます。

 

 なお、これらの録音はモノラルからステレオ録音に移行する時期の録音のため、ステレオとモノラルが混在していますが、モノラル録音でも聴きやすい音で鑑賞には、問題ありません。

・・・もし、飛行機事故に合わなかったら、いったいどのような指揮者になっていたのでしょうか・・・彼のイタリア・オペラを聴いてみたかったですね。

 

HIROちゃんの名盤は前記のとおり「モーツアルト交響曲第29番イ長調」ですが、参考にこのBOXの全曲を紹介します。

 

CD1
1. モーツァルト:音楽の冗談 K522 I.アレグロ (録音:1955年8月)
2. モーツァルト:交響曲 第29番 イ長調 K201 (録音:1956年6月)
3. ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67 第2-4楽章

 (録音:1956年6月)
 演奏:フィルハーモニア管弦楽団
CD2
1. ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92 (録音:1956年5月)
2. シューベルト:交響曲 第8番 ロ短調 D759「未完成」

 (録音:1955年8月)
3. ロッシーニ:どろぼうかささぎ序曲 (1952年10月)
 以上、フィルハーモニア管弦楽団
4. ロッシーニ:コリントの包囲序曲 (録音:1949年5月)
 演奏:ローマ・スタビレ・アカデミア・ディ・サンタ・チェチーリア

     管弦楽団
CD3
1. メンデルスゾーン:交響曲 第4番 イ長調 作品90「イタリア」

 (録音:1955年8月)
2. シューマン:交響曲 第4番 二短調 作品120 (録音:1953年5月)
 以上、フィルハーモニア管弦楽団
3. アルフレード・カゼッラ(1883-1947):パガニーニアーナ 作品65

 (録音:1949年5月)
 演奏:ローマ・スタビレ・アカデミア・ディ・サンタ・チェチーリア管弦楽団
CD4
1. ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68 (1953年5月)
2. ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調 作品90 (1955年8月)
 演奏:フィルハーモニア管弦楽団
CD5
1. チャイコフスキー:幻想的序曲「ロメオとジュリエット」

 (録音:1951年10月)
 フィルハーモニア管弦楽団
2. チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64 (1950年9月)
 演奏:ミラノ・スカラ座管弦楽団
CD6
1. ワーグナー:ジークフリート牧歌 (録音:1951年10月)
 フィルハーモニア管弦楽団、デニス・ブレイン(ホルン)
2. チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」

 (録音:1952年10月)
 演奏:フィルハーモニア管弦楽団
CD7
1. ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲 (録音1954年6月)
2. ドビュッシー:3つの夜想曲より、「雪」、「祭り」 (録音:1955年8月)
3. ドビュッシー:海-3つの交響的スケッチ (録音:1954年9月)
4. ドビュッシー:聖セバスティアンの殉教 (録音:1954年6月)
5. ドビュッシー:交響的断章-ユリの庭
6. 同-法悦の踊りと第1幕の終幕
7. 同-受難
8. 同-よき羊飼い
CD8
1. デュカス:魔法使いの弟子
2. ファリャ:三角帽子より 隣人達の踊り
3. 同-粉屋の踊り
4. 同-終幕の踊り (録音:1954年6月)
5. ラヴェル:ダフニスとクロエ 第2組曲より 夜明け
6. 同-パントマイム
7. 同-全員の踊り (録音:1954年6月)
 以上、演奏:フィルハーモニア管弦楽団
8. フランク:交響曲 二短調(全3楽章) (1954年4月)
 NBC交響楽団

 

では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。