家庭でも発生する「ご飯」や「弁当」からの食中毒!と、その予防

HIROちゃんのブログは、アンプ製作やクラシック音楽の投稿が多いのですが、専門は電気関係でも、音楽関係でもなく、「食品衛生学」や、「食品微生物学」、「食品学」などが専門で、食品会社、大学を退職後、現在は調理師養成の専門学校で「食品衛生学」や、「食品衛生学実験」の講師として勤務しています。

 

そこで、今回は、食中毒に注意! 吉田屋の駅弁大規模食中毒から学ぶ「ご飯や弁当による家庭での食中毒防止」と題し、出来るだけわかりやすく説明したいと思います。

今回の食中毒の原因菌となった「セレウス菌」「黄色ブドウ球菌」は、一般家庭でも発生しやすい食中毒です。特に「弁当」、なかでも「キャラ弁」が家庭では発生のリスクが高いのです。

 

まずは、先月に発生した大規模食中毒について・・・

130年続く駅弁の老舗「吉田屋」がおこした食中毒、これまで521人の患者が発生する大規模食中毒となりました。

今回の食中毒について10月16日、青森県八戸保健所は、原因は「御飯」からのセレウス菌と、黄色ブドウ球菌による複合汚染と発表、また原因として次のような項目があげられ報道されました。

1.     他の業者に発注した米飯を指定した温度を超えた状態で受け入れ、冷却するまでに原因菌が増殖した

2.     ご飯の箱などの消毒が不十分だった。

3.     従業員の健康管理が不十分で、臨時従業員の手洗い消毒等が不十分だった。

 

それでは、今回の食中毒の原因となった「セレウス菌」と、「黄色ブドウ球菌」という食中毒菌について説明しましょう。食中毒を起こす細菌は多くの種類がありますが、この「セレウス菌」と、「黄色ブドウ球菌」による食中毒は、実は一般の家庭でも発生しやすい食中毒ですが、性質に違いがあります。

 

食中毒細菌のセレウス菌とは・・実は有益な納豆菌の仲間!

なんと!・・セレウス菌食中毒は加熱食品から発生することが多いのです。

説明が長くなり、少しむずかしい話になりますが、出来るだけわかりやすく説明しましょう。セレウス菌はBacillus(バチルス)属の細菌で多くの種類があり、その中には納豆菌(Bacillus  natto バチルス・ナットウ)や、枯草菌と呼ばれる Bacillus  subtillis (バチルス・スブチルス)などがいます。納豆菌は納豆を作るときの有益な細菌ですよね。バチルス属の細菌は増殖する時に食品をネバネバにする性質があります。納豆がそうですね・・ところが同じバチルス属の細菌でも食品を腐敗させる菌もいるのです。(納豆も腐ってはいるのですが、有益なので発酵と言います) 今は「栗ご飯」のおいしい季節ですが、栗ご飯を常温で少し長い時間放置すると、「栗の周りがヌルヌルする」とか、おじいちゃんや、おばあちゃんが長く常温に置いた御飯が少し匂いが出てきたことを「ほてり臭い」とか「すえた臭い」とか言うことがあります。この臭いの正体は実は生米に残っていたバチルス属の細菌が原因です。また、「栗ご飯」の栗のヌルヌルは、栗に付着していたバチルス属の細菌が原因です。これらのご飯をさらに長い時間放置すると、ご飯が糸を引く状態になります。夏にスパゲッティーを弁当に入れて食べたら少しヌルヌルしたことがありませんか?・・これもバチルス属の細菌が原因で、主に土壌などに多くみられ、特に生米や小麦粉、香辛料などに付着していることがあります。これらのヌルヌルは、いわゆる「初期腐敗」で普通、食中毒はおきません。ところが、バチルス属の中で Bacillus  cereus (バチルス・セレウス)という細菌だと食中毒を起こすのです。

 

セレウス菌は加熱食品から起こることが多い・・どうしてなの?

実はセレウス菌は、下痢型と「セレウリド」という毒素を作る嘔吐型の2種類があるのですが、どちらも植物の種のような「芽胞」と呼ばれるものを形成します。この「芽胞」は耐熱性があり、100℃で加熱しても死滅しないのです。ですから、炊いたご飯や、チャーハン、加熱したスパゲティーなどでも、温度の高いまま保存すると、芽胞が発芽し菌が増殖し中毒をおこすことがあるのです。(乾麺のスパゲティーでも耐熱性の芽胞が多少残っている場合が多いのです)

 

今回、吉田屋の食中毒では、喫食者から「ご飯が糸を引いていた」という証言がありましたが、元々、耐熱性のある芽胞を形成したセレウス菌が生米に残っていたり、ご飯の容器が洗浄不足だったり消毒が不十分で、しかも高い温度のまま容器に入れたので残っていたセレウス菌が増殖したのでしょう。

厚生労働省(通達時は厚生省)から「弁当および、そうざいの衛生規範」という冊子のような長文の通達があるのですが、「弁当のご飯は十分冷ましてから盛り付けること」と書いてあります。これを遵守しているのは、大手の弁当工場、コンビニ弁当工場、駅弁工場、機内食の工場くらいでしょう。「ほかほか」を売りに温かい弁当を販売している弁当チェーン店は、実は食中毒のリスクが高いのです。確かに容器の掛け紙などには「お早めにお召し上がりください」とは書いてありますが、店員さんから直接「早めに食べてください」とか、「いつ食べますか」とか、「暖かいところでは長く置かないでください」とかの言葉は聞いたことがありません。また、温かいご飯と、おかずを同じ容器に詰めた弁当も食中毒のリスクが高くなります。ご飯の温かさから、おかずまで温かくなってしまうからです。温かい弁当の方がおいしいのですが・・すぐに食べないときはダメですね。

 

家庭での弁当のご飯は十分に冷ましてから詰めること。そしてできれば、ご飯と、おかずの容器は別々にすると良いでしょう。

 

「黄色ブドウ球菌」による食中毒は家庭の弁当での発生が多い。特に「キャラ弁」は食中毒のリスクが高い!

 

今回の吉田屋の弁当による食中毒では、セレウス菌の他に「黄色ブドウ球菌」という食中毒細菌も検出されています。この食中毒細菌が検出されたということは何を意味しているのでしょうか?・・

実は、黄色ブドウ球菌は、普通にみられる細菌で、人の毛髪、皮膚、鼻腔などにも普通にみられる常在菌です。特に手に傷があったり、化膿していたり、手荒れがあるときには100% この菌が付いています。ですから、この黄色ブドウ球菌が検出されたということは、作業者の手洗い消毒が不十分だったり、使い捨ての盛付手袋をしていても、食品以外の物に触れたり、自分の顔や髪に触れたりすると、この細菌が付いてしまうのです。また、作業前の従業員の手指検査を十分に行っていなかったのでしょう。

 

この「黄色ブドウ球菌」は、細菌そのものは熱に弱いのですが、食品内で増殖する時に「エンテロトキシン」という毒が作られますが、この毒素は実は耐熱性があり、100℃で加熱しても分解しないのです。つまり盛付時などで手指についていた黄色ブドウ球菌が食品に入り増殖すると、食品内でエンテロトキシンが作られてしまいます。そうなると加熱しても毒が食品内に残るので食中毒をおこすのです。しかもエンテロトキシンが作られていても「味も色も臭いも変化はありません」 ほとんどの食中毒は、何も変化がなく食べてしまうからおこるのです。

 

なぜ、「キャラ弁」は食中毒のリスクが高いのか?

キャラ弁で最も起こりやすい食中毒のひとつが、これまで説明した「セレウス菌」と、「黄色ブドウ球菌」と言えるでしょう。

「キャラ弁」の食中毒のリスクと、その予防については、下記の投稿を読んでください。

Yahooブログ時代に投稿したもので、ブログの引っ越しで見にくい部分がありますが・・こちらをクリックしてください。

    ↓

キャラ弁は食中毒になりやすいので注意!/ お弁当の食中毒防止について(再投稿) 

 

では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。