「名指揮者の名盤・名演奏」は間が空いてしまいましたが、今回からはヴィルヘルム・フルトヴェングラーを紹介します。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
※タワーレコード通販サイトのプロフィールから転記
指揮者、作曲家。1886年ドイツ、ベルリン生まれ。ラインベルガー、シリングスらに師事し、1915年マンハイム歌劇場の指揮者になり認められるようになる。20年にベルリン国立歌劇場、22年にはニキシュの後任としてベルリン・フィル常任指揮者に就任する。戦時中はドイツに留まり、ユダヤ人音楽家の擁護などナチスと対立もするが、戦後は戦犯として裁かれ、復帰したのは47年から。カリスマ性を持った巨匠として、未だに崇拝されている。
2012/08/30 (2013/03/26更新) (CDジャーナル)
ベートーヴェンの交響曲はクラシック音楽を聴き始めてから、ずっと好きな曲ですが、フルトヴェングラーの演奏を多く聴くようになったのは、1970年(昭和45年)、大学1年の時に東京の武蔵小山にあった「フォノ」というレコード店でアルバイトを始めた時でした。当時の店長がクラシック・ファンでフルトヴェングラーのベートーヴェンを薦めてくれたのがきっかけでした。また、常連のお客様の中でフルトヴェングラー・ファンがおられ、その方の影響も大きかった。閉店後に喫茶店で何回かコーヒーを奢っていただきながらフルトヴェングラーとソプラノ歌手のシュワルツコップの話をよく聞かされた記憶があります。
さて、手元にあるフルトヴェングラーの音盤のライブラリーですが、ダブリは多くあるもののLPレコードとCDで約250枚位だろうか・・・
その中でもベートーヴェンの交響曲が最も多く、第9番「合唱」の1951年バイロイト盤などはLPでもCDでも相当数をダブって架蔵しています。
現在手元にある、フルトヴェングラーのベートーヴェン交響曲の音源は下記のとおりですが、整理が悪いのであと何枚かはあるかもしれません。写真も全てではありません。
■交響曲第1番ハ長調 作品21
(1952/11/30ライヴ)
②ウィーン・フィルハーモニー(1952)EMI
③シュトゥットガルト放送交響楽団
(1954/03/30ライヴ)
■交響曲第2番ニ長調 作品36
(1948/10/03ライヴ)
■交響曲第3番ホ短調「英雄」作品55
②ウィーン・フィルハーモニー(1947/11ライヴ)
③ベルリン・フィルハーモニー
(1950/06/20ライヴ)
④ベルリン・フィルハーモニー
(1952/12/07ライヴ)
⑤ベルリン・フィルハーモニー
(1952/12/08ライヴ)
⑥ウィーン・フィルハーモニー(1952)EMI
■交響曲第4番変ロ長調 作品60
(1943/06)
②ウィーン・フィルハーモニー
(1944ライヴ)
③ウィーン・フィルハーモニー(1952)EMI
(1953/09/04ライヴ)
■交響曲第5番ハ短調 作品67
①ベルリン・フィルハーモニー(1926)
②ベルリン・フィルハーモニー(1937)
③ベルリン・フィルハーモニー
(1943/06/30ライヴ)
④ベルリン・フィルハーモニー
(1947/05/25ライヴ)
(1947/05/27ライヴ)
⑥ウィーン・フィルハーモニー
(1950/09/25ライヴ)
⑦ローマ・イタリア放送交響楽団
(1952ライヴ)
⑧ベルリン・フィルハーモニー
(1954/05/04ライヴ)
⑨ベルリン・フィルハーモニー
(1954/05/23ライヴ)
⑩ウィーン・フィルハーモニー(1954)EMI
■交響曲第6番ヘ長調「田園」作品68
①ベルリン・フィルハーモニー
(1944/03/20-22)
(1947/05/25ライヴ)
③ベルリン・フィルハーモニー
(1947/08/2ライヴ)
④ウィーン・フィルハーモニー(1952)EMI
⑤ベルリン・フィルハーモニー
(1954/05/23ライヴ)
■交響曲第7番イ長調 作品92
①ベルリン・フィルハーモニー
(1943/11/03ライヴ)
②ウィーン・フィルハーモニー(1950)EMI
③ルツェルン祝祭管弦楽団
(1951/08/15)
※第2楽章リハーサル風景
(1953/04/14ライヴ)
⑤ウィーン・フィルハーモニー
(1954/08/30ライヴ)
■交響曲第8番ヘ長調 作品93
①ストックホルム・フィルハーモニー
(1948/11/13ライヴ)
②ベルリン・フィルハーモニー
(1953/04/14ライヴ)
③ウィーン・フィルハーモニー
( 1954/08/30ライヴ)
■交響曲第9番ニ短調「合唱」作品125
①ベルリン・フィルハーモニーO&合唱団
(1937/5/19ライヴ)
ベルガー(S)、ピッツィンガー(A)、
ルードヴィヒ(T)、ヴァツケ(Bs)
②ベルリン・フィルハーモニーO
ブルーノ・キッテル合唱団
(1942/03/22ライヴ)
ブリーム (S),ヘンゲン (A),
アンデルス (T),ヴァツケ(Bs)
③ベルリン・フィルハーモニーO、
ブルーノ・キッテル合唱団
(1942/4/19ライヴ)
※ヒトラー生誕前夜祭のライヴ録音
ベルガー(S)、ピッツィンガー(A)、
ロスヴェンゲ(T)、ワッケ(Bs)、
④ストックホルム・フィルハーモニーO
(1943/12/8ライヴ)
シンベルイ(S)、タネル(A)、
ベッケリン(T)、ビョルリンク(B)
⑤ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(1951/01/07ライヴ)
ゼーフリート(S)、アンダイ(A)、
パツァーク(T)、エーデルマン(B)
⑥ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(1951/01/10ライヴ)
ゼーフリート(S)、アンダイ(A)、
パツァーク(T)、エーデルマン(B)
⑦バイロイト祝祭管弦楽団、同合唱団
エリーザベト・シュワルツコップ(ソプラノ)
エリーザベト・ヘンゲン(アルト)
ハンス・ホップ(テノール)
オットー・エーデルマン(バス)
(1951/07/29ライヴ)バイロイト
⑧ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、
ウィーン国立歌劇場合唱団、
ザルツブルク大聖堂合唱団員
イルムガルト・ゼーフリート(S)、
ジークリ アントン・出るモータ(T)、
アントン・出るモータ(T)、
ヨーゼフ・グラインドル(B)、
(1951/08/31ライヴ)
⑨ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン・ジングアカデミー
イルムガルト・ゼーフリート(ソプラノ)
ロゼッテ・アンダイ(アルト)
アントン・デルモータ(テノール)
パウル・シェフラー(バス)
(1953/05/31ライヴ)
⑩フィルハーモニア管弦楽団、
ルツェルン祝祭合唱団
エリーザベト・シュヴァルツコップ(S)
エリザ・カヴェルティ(A)
エルンスト・ヘフリガー(T)
オットー・エーデルマン(Bs)
(1954/08/22ライヴ)
これらの音源で1950年代にEMIにスタジオ録音した曲以外、ほとんどの録音がライヴ録音です。フルトヴェングラーのベートーヴェンはすべてが名演奏と言っても過言ではないでしょう。特にコンサートでのライヴ録音での壮大なスケール感、迫力、緊張感、感情のうねりと、いったものが顕著に表れていて、感動を覚えます。フルトヴェングラーのベートーヴェン交響曲については、言い尽くされていますので、ここで改めて書く必要もないのですが、HIROちゃんなりに特に印象に残る名演を何枚か選んでみたい。なお、フルトヴェングラーのベートーヴェンの交響曲については、これまで、このブログで何度か投稿していて、その時の感想と今の感想は変わっていません。なので以下の文章については、一部、過去の投稿文を引用、加筆・修正した文章になっています。
最近、とても好きな第3番「英雄」ですが、ウィーン・フィルとの第3番は1944年盤、1947年盤、そして1952年盤があり、他にベルリン・フィルとのライヴもありますが、1944年盤と1952年のウィーン・フィル盤が素晴らしい。特に1944年盤は個性的かつ劇的で聴き手を感動させますが、じっくりと聴くなら1952年のスタジオ録音でしょう。やや遅めのテンポですが、スケールの大きいな堂々とした演奏です。この演奏は「英雄」を語る上では、絶対に外せない1枚でしょう。
なお、モノラル録音ですが、電気的に疑似ステレオの盤も手元にありますが、定位は不安定なところはあるものの、音に広がりが出てそれほど悪くありません。 他の曲の疑似ステレオ盤も嫌いではありません。
第5番「運命」もフルトヴェングラーは多くの録音を残していますが、その中でも1947年5月27日のライヴ録音が最高だと思います。・・モノラル盤で決して良い音とは言えませんが、聴いているうちに音も生々しく感じ、演奏に引き込まれていきます。ものすごい緊張感と迫力、特に第3楽章での音のうねりと、第3楽章から第4楽章への長大なクレッシェンドからのド迫力の突入・・・この演奏がステレオ録音だったら・・・と思うとチョット残念。しかし、この演奏なら不満はありません。
もうひとつは、スタジオ録音ですが1954年のウィーン・フィルとの演奏・・・遅いテンポながら堂々とした重厚な演奏です。どちらも名演奏でしょう。
第6番「田園」ですが、1952年のウィーン・フィル盤は、かなり個性的でスローテンポです。のどかな田園という感じはあまりないように思えますが、第5楽章はテンポが激動しますが感動的な絶品・・・
第7番は、1950年のウィーン・フィル盤、第1楽章と第4楽章の両端は、興奮と感動を聴かせてくれます。中でもどんどん加速していく熱狂的な激しさと緊張感は何とも言えません。また、第2楽章での感情表現は正にフルトヴェングラー的で素晴らしい。
第9番「合唱」ですが、フルトヴェングラーの残した第九は、少なくても17種類?はあるといわれていますが、HIROちゃんの手元にあるのは、前記の10種類。
どの録音もライヴ録音で基本的には、同じスタイルの演奏ですが、この中では、1951年のバイロイト祝祭管弦楽団の演奏が最高だと思います。寄せ集めのオケとはいえ、これほどまでに緊張感を持った巨大な、そして美しい演奏はないでしょう。特に第3楽章は、この世とは思えないほどの美しさ、正に、このまま死んでもいいくらいのアダージョ・・・安らぎを感じます。これだけゆっくりとした演奏ながら、ダレたり引きずるような感じは全くありません。第1楽章のスケールの大きさも素晴らしいものがあります。モノラルですが、クラシック音楽ファンなら絶対に聴かなければならない名盤中の名盤でしょう。
この51年のバイロイト盤はLPレコードもCDも写真で紹介したもの以外でも、ダブリで何枚かあり、10枚以上はあるでしょう。
なお、スウェーデン放送局の中継録音によるBIS盤では開始前のアナウンスから最後のアナウンスまで全て収録されているのですが、フルトヴェングラーの足音や演奏前にオケのメンバーにひそひそと話しかける言葉も録音されていません。拍手も異なります。これを聴くとEMI盤の足音などはインチキなのか・・・
いずれにしても、リハーサル録音を修正したものであれ、本番の録音を修正したのであれ、演出として?足音を足したとしても、この日のバイロイト祝祭の演奏は名演奏であることには間違いありません。確かに多少のミスはあっても一発録りの無修正の方が「演奏の記録」としての感動は大きいのですが、セッションでの録音と思って聴いても感動する演奏です。(スウェーデン放送局の中継録音によるBIS盤の音は良くありません)
また、彼の死の年に残したルツェルンでのフィルハーモニア管弦楽団とのライヴも素晴らしい演奏で、この演奏でも第3楽章は絶品、素晴らしい。
1940年代の第九のライヴ録音も多く残されていますが、当然、音も悪いですが、テンポのうねりと共にみられる緊張感や、スケール感などは充分に聴きとれますが、やはり音楽として鑑賞するなら、前述の50年代のものということになります。
但し、40年代の録音の中では1942年3月22日の録音については、特に第1楽章のとてつもない激しい燃焼のスケールの大きさには、感動を覚えます。これは古い演奏ですが大好きな演奏の一つで名盤でしょう。
と、いうことで・・・総合的に判断すれば、フルトヴェングラーのベートーヴェン交響曲の名盤・名演奏は、このベートーヴェン交響曲全集でしょう。
CDのBOXでも持っていますが、これは東芝レコードから発売された交響曲全集のLPのBOX(10,500円・・・これでも当時は安かった)
では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。