これまで幾つかのレーベルからワルター指揮の「魔笛」については発売されてきました。その度に購入すべきか迷ってきたのですが、最近、エピタグラフ原盤でキングインターナショナルから「ワルター没後60年企画のライヴ録音シリーズ」で再発売されたのを機会に、ワルターのファンとして、また、モーツアルトの「魔笛」を愛する者として、ついに購入しました。
「ワルターの名盤・名演奏」については、すでに8回にわたり投稿をしましたが、今回は、<番外追加編>として紹介することにしました。
■モーツァルト:歌劇『魔笛』全曲(英語歌唱)
ルシーン・アマーラ(ソプラノ:パミーナ)
ブライアン・サリヴァン(テノール:タミーノ)
ロバータ・ピーターズ(ソプラノ:夜の女王)
ジェローム・ハインズ(バス:ザラストロ)
セオドア・アップマン(バリトン:パパゲーノ)
ローレル・ハーリー(ソプラノ:パパゲーナ)
ポール・フランク(テノール:モノスタトス)
ジョージ・ロンドン(バス:弁者)、他
メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団
ブルーノ・ワルター(指揮)
録音:1956年3月3日 メトロポリタン歌劇場
録音方式:モノラル(ライヴ) 原盤:エピタグラフ
多くのオペラ公演を行ったワルターですが、オペラのスタジオ録音は残していません。1962年に2つのオペラ、「魔笛」とベートーヴェンの「フィデリオ」を録音する計画があったようですがワルターは同年の2月に他界しています
今回紹介する「魔笛」は、1956年にニューヨークのメトロポリタン歌劇場でのモーツアルト200年祭における「魔笛」公演の放送用ライブ録音です。この「魔笛」の公演での特徴はドイツ語ではなく、台詞、歌唱とも英語版であることでしょう。幕中は途切れなしに収録されており、当時のオペラのライブ録音としては、まずまずの音質となっているため、歌手の動きや声、オーケストラの音も良く捉えられてはいます。
(最新リマスター音源のUHQCD化ということですが、輸入盤等これまでに発売されたものと比較すると音が改善されているかどうかは、聴いていないのでわかりません)
この「魔笛」公演の録音は、伝説的な名演として現在でも高く評価されていますが、その評価を広めたのが今は亡き評論家の宇野功芳氏。彼は「ワルターの全レコードを上廻る絶品であり、これを聴かずしてワルターを語ることは不可能な最高の名演」と、大絶賛しています。
確かにこの演奏、オーケストラは序曲からして、やや早めのテンポで気合が入った演奏、気迫に満ちています。また、それぞれ米国の歌手たちも自国の英語版ということもあり、台詞を含め歌の感情表現も素晴らしいと思います。
スタジオ録音ではけっして聴くことが出来ないアリアが歌い終わる度に沸き起こる会場(客席)からの大きな拍手、そして重唱でも多くの場面で拍手が起こり感動的です。(聴いていて拍手が多くて嫌だと、おっしゃる方もいるかもしれません) また、会場内のざわつきや笑いなど・・メトロポリタン歌劇場でのライブ感が十分に伝わってくる貴重な歴史的録音と演奏です。
ドイツ語での「魔笛」を聴き慣れているためか、違和感があるものの、聴いているうちに英語の演奏に慣れてくるから不思議です。
しかし、この演奏は、あくまでワルターのファン(マニア?)や、「魔笛」を愛する人で、多くの異なった演奏を聴きたい方のための歴史的な音源でしょう。
「名演」だとは思いますが、「魔笛」としては万人のクラシック音楽ファンにお勧めする「名盤」ではないと思うのですが・・・と言うのがHIROちゃんの感想です。
「魔笛の名盤・名演奏」として一つだけをお薦めするなら、個人的には1964年DGに録音したカール・ベーム指揮/ベルリン・フィルハーモニー&RIAS室内合唱団/フリッツ・ヴンダーリッヒ、ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ 他 をお薦めしたい。
Yahooブログ時代の2014年に投稿した「魔笛」の名盤・名演奏の記事はこちらです。クリックすれば記事につながります。
では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。