今回は、1883年生まれの指揮者、ヘルマン・アーベントロートです。
アーベントロートのプロフィール
1883年1月19日、フランクフルト生まれの指揮者。1956年5月29日ドイツのイエーナで没。ミュンヘンで、フェリックス・モットルに師事し、1922年、ベルリン国立歌劇場管の指揮者に就任。1934年からはブルーノ・ワルターの後任としてライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の常任指揮者となる。第ニ次大戦後はライプツィヒ放送響、ベルリン放送響(東ベルリン)の常任指揮者を務め、旧東ドイツ音楽界の重鎮として君臨した。1970年代初めに眠っていた大量の放送録音が陽の目を見ることになり、一躍世界に名が知られた。
2012/08/30 (2013/01/11更新) (CDジャーナル)
アーベントロートの音盤ですが、1980年代前半に、徳間音楽工業からドイツシャルプラッテン原盤で、「アーベントロート生誕100年記念/ヘルマン・アーベントロートの芸術」と題した全17枚のLPレコードが1枚あたり1,500円の廉価盤で発売されました。モーツアルト、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、チャイコフスキーといった作品のレコードで、当初、あまり興味は持たなかったのですが、LPレコードのジャケットの帯には、「ドイツ音楽の伝統をつたえる指揮者たち、フルトヴェングラー、クナッパーツブッシュ、そしてアーベントロート」と書いてあったのを見て、購入したのを思い出しました。この投稿を機会に整理の悪いLPの棚を物色し、見つけ出したのが下記の3枚。それとCDは、MEMORIES盤の廉価盤BOXです。HIROちゃんのアーベントロートの持っているライブラリーは、これで全部。残念ながらモーツアルト、ハイドンなど他の作品は持っていません。
スタジオ録音と言っても多分、放送用録音でぶっつけ本番の放送ライブ録音だと思います。
■ベートーヴェン交響曲第4番変ロ長調 Op.60
1949年スタジオ録音
■ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調「合唱」Op.125
ライプツィヒ放送交響楽団・合唱団
ライプツィヒ音楽大学合唱団 他
1961年スタジオ録音
■チャイコフスキー交響曲第6番ロ短調「悲愴」
ライプツィヒ放送交響楽団 1952年スタジオ録音
■ブラームス交響曲第1番ハ短調Op.68
ライプツィヒ放送交響楽団1949年スタジオ録音
下記のCDは、MEMORIES盤の廉価盤BOX
「ベートーヴェン:作品集」
■第1番 (ライプツィヒ放送響、1949年スタジオ録音)
■第3番「英雄」 (ベルリン放送響、1954/02/13ライヴ)
■第4番 (ライプツィヒ放送響、1949年スタジオ録音)
■第5番「運命」 (ベルリンフィル、1937年スタジオ録音)
■第6番「田園」 (ライプツィヒ放送響、1950年スタジオ録音)
■第7番 (ワルシャワフィル、1954/05/16ライヴ)
■第8番 (ゲヴァントハウス管、1944年スタジオ録音)
■第9番「合唱」 (ライプツィヒ放送響、1951年スタジオ録音)
■レオノーレ序曲第3番(ライプツィヒ放送響、1950年スタジオ)
■「コリオラン」序曲(ライプツィヒ放送響、1949年スタジオ録音)
■「エグモント」序曲(ベルリン放送響、1954年スタジオ録音)
■ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61
(Vn:ダヴィット・オイストラフ/ベルリン放送響1952年ライブ)
「ブラームス交響曲全集」
■交響曲 第1番 (バイエルン国立管 1956/01/16ライヴ)
■交響曲 第2番 (ライプツィヒ放送響 1952年スタジオ録音)
■交響曲 第3番 (ライプツィヒ放送響 1952年スタジオ録音)
■交響曲 第4番 (ライプツィヒ放送響 1954年スタジオ録音)
(ライプツィヒ放送響 1949年スタジオ録音)
■交響曲第5番 (ライプツィヒ放送響 1949年スタジオ録音)
■交響曲第7番 (ベルリン放送響 1956年スタジオ録音)
■交響曲第8番 (ライプツィヒ放送響 1949/09/28ライブ)
■交響曲第9番 (ライプツィヒ放送響 1951/10/29ライブ)
さて、これらの音源ですが、久しぶりにLPレコードを聴いてみました。これらの中ではチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」が印象的です。テンポの変化が大きい演奏で、特に第1楽章はテンポが頻繁に動きます。しかし歌うところは歌いロマンチックな部分も多く、第2主題は甘美な演奏です。全体的には表現が非常に濃厚で凄絶、かなり劇的な演奏で何か古い演奏スタイルのように感じます。メンゲルベルクの演奏のような雰囲気もあるのですが、メンゲルベルクのようにポルタメントを多用した演奏ではありません。
この「悲愴」は、はたして名盤(名演奏)なのか、あるいは現代では「迷演奏」なのか? 評価が難しいのですが「悲愴」としては名盤に入れて良いと思いました。
LPのベートーヴェン交響曲第4番、第9番「合唱」、ブラームス交響曲第1番は、CDのBOXに収められている録音と同じものです。
ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーの交響曲ですが、どの曲もテンポの動きが大きい演奏です。また、テンポの速い楽章とテンポの遅い楽章との差が大きく、聴いていると曲全体のテンポバランスが悪く、何となく落ち着きません。
ベートーヴェンの交響曲ですが、第2番がないのが残念です。これがあれば全集なのに・・
ベートーヴェンではどの曲もテンポの自由な動きが特徴と言えます。例えば第4番ではテンポのかなり遅い第2楽章に対し、第4楽章はかなり早い演奏で差が大きすぎです。確かにインパクトがあって面白い演奏だとは思いますが、落ち着いては聴けない感じです。
第9番「合唱」も同じようなスタイル、第1楽章、第2楽章ではテンポが速く迫力もあるのですが、第3楽章になるとかなりのスローテンポになり美しいのですが、ちょっと聴いていて戸惑います。終楽章もテンポが極端に自由に動く演奏で、やはり落ち着いては聴けません。
他の曲もやはり、テンポの変化が大きく、ベートーヴェンの交響曲については好みもあるかもしれませんが、HIROちゃんとしては、う~~~ん・・ちょっと・・と、いう感じでしょうか・・
ブラームスの交響曲全集ですが、この中で最も良いと思うのはCD1の第3番です。
モノラル録音ですが音も良く、演奏も迫力があり、緊迫感もあります。凄まじいと表現しても良いと思います。これは名演。CD1では続いて第1番になるのですが、続けて聴くと録音レベルが第3番より低く感じ、また音も少し籠りがちに聴こえるので、初めのうちは音が貧弱に感じるのですが、聴いているうちに慣れてきて、それほど悪い音とは感じなくなるから不思議です。
この交響曲第1番は、ライプツィヒ放送交響楽団の演奏ではなく、バイエルン国立歌劇場管弦楽団の演奏会でのライブ録音です。
迫力のある第1楽章、第4楽章、中でも終楽章はなかなかの力演。また、第2楽章は旋律が美しく、この第1番も興味深く聴けました。
ブルックナーですが、当時の録音としてはまあまあでしょう。モノラルでも鑑賞には、何とか十分な音質。全曲とも演奏としては悪くありませんが、ここでもテンポの変化が大きく、緩急をつけた演奏が多い。また曲によっては感情表現が極端に感じられる楽章が多いのですが、どの曲もスケールの大きな演奏です。ここでの第4番、第5番、第7番、第8番、第9番といずれも美しいのですが、選ぶとすれば第9番だろうか・・特に第1楽章の第2主題が素晴らしい表現で、第3楽章も緩急は大きいのですが、寂寥感のある見事な演奏。
でもHIROちゃんの好みとしてはブルックナーの交響曲ではフルトヴェングラーのようなウネリや、アーベントロートのような緩急の差が大きく、極端な感情表現が目立つ演奏はあまり好みません。
久しぶりにアーベントロートの演奏を聴き直してみましたが、なかなか評価が難しい指揮者と言うのが今回の感想でした。
では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。
さて、次回は・・?