今回は、カール・シューリヒトのベートーヴェンの作品について書いてみます。

HIROちゃんの手元にあるシューリヒトのベートーヴェンは、それほど多くはありません。架蔵しているライブラリーは下記のとおりです。ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ)と、「コリオラン」序曲、「エグモント」序曲の3曲を除いて全て交響曲です。

 

■交響曲第1番 ハ長調 op.21  

①ベルリン市立管弦楽団 

 1941年スタジオ録音 Memories

②ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 1952年スタジオ録音Decca LP

③パリ音楽院管弦楽団

 1958年スタジオ録音 EMI (LP/CD)

シュトゥットガルト放送交響楽団

 1961/03/07ライブ録音 SEVEN  SEAS

⑤フランス国立放送管弦楽団

 1965/06/15ライブ録音 Altus

■交響曲第2番 ニ長調 op.36 

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 1952年スタジオ録音Decca LP

②スイス・ロマンド管弦楽団

 1957年ライブ録音Memories

③パリ音楽院管弦楽団

 1958年スタジオ録音EMI (LP/CD)

■交響曲第3番 変ホ長調op.55 「英雄」 

①シュトゥットガルト放送交響楽団

 1952/02/29ライブ録音Memories

②パリ音楽院管弦楽団

 1958年スタジオ録音 EMI (LP/CD)

③フランス国立放送管弦楽団

 1963/05/14ライブ録音 Altus & Living Stage

■交響曲第4番 変ロ長調op60

①ベルリン市立管弦楽団

 1942年スタジオ録音Memories

②パリ音楽院管弦楽団

 1958年スタジオ録音 EMI (LP/CD)

③シュトゥットガルト放送交響楽団

 1959/04/08ライブ録音 SEVEN  SEAS

■交響曲第5番 ハ短調 op.67「運命」

①パリ音楽院管弦楽団

 1949年スタジオ録音Decca LP

②フランス国立放送管弦楽団

 1956/09/23ライブ録音Memories

③パリ音楽院管弦楽団

 1957年スタジオ録音 EMI (LP/CD)

■交響曲第6番 ヘ長調 op.68「田園」

シュトゥットガルト放送交響楽団

 1957/02/14ライブ録音Memories

②パリ音楽院管弦楽団

 1957年スタジオ録音 EMI (LP/CD)

■交響曲第7番 イ長調 op.92

①ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 1956/12/10ライブ録音Memories

②シュトゥットガルト放送交響楽団

 1952/10/24ライブ録音 Haenssler

③パリ音楽院管弦楽団 1957年スタジオ録音 EMI

■交響曲第8番 ヘ長章 op.93

 パリ音楽院管弦楽団

 1957年スタジオ録音 EMI (LP/CD)

■交響曲第9番ニ短調 op.125「合唱」

①フランス国立放送管弦楽団

 1954/09/12ライブ録音Memories

②フランス国立放送管弦楽団

 1959/03/24ライブ録音 Altus

③シュトゥットガルト放送交響楽団

 1961/09/13ライブ録音 Haenssler

④パリ音楽院管弦楽団

 1958年スタジオ録音 EMI(LP/CD)& TESTAMENT

ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ)

 北ドイツ放送交響楽団(NDR)

 ベルリン聖ヘドヴィッヒ協会合唱団 

 シュターダー、ヘフリガー他

 1957/09/15ライブ録音 Living Stage

■「コリオラン」序曲

 シュトゥットガルト放送交響楽団 1952/09/25ライブ録音

エグモント序曲

 北ドイツ放送交響楽団(NDR) 録音年不明

■ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 ※追加

 ピアノ:バックハウス/スイス・イタリア語放送管弦楽団

 

シューリヒトのベートーヴェン交響曲と言うと、かなり多くの録音が残されていて、全9曲の録音が残っています。

全集の録音と言うと、パリ音楽院との演奏が有名ですが、シュトゥットガルト放送交響楽団や、フランス国立放送管弦楽団などとのコンサートライブの録音も多く残されています・

 

----スタジオ録音から----

まずは、スタジオ録音によるものですが、手元にライブラリーとしてある音源だけですが、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と1952年にDeccaに録音した第1番・第2番、それと同じくDeccaに1949年にパリ音楽院管弦楽団と録音した第5番「運命」の他、ベルリン市立管弦楽団による第1番、第4番のSP録音の復刻CDが手元にあります。このうち第1番、第2番では、ウィーン・フィルハーモニーの気品高いオーケストラの音を聴くことが出来ますが、やはりスタジオ録音の1957年、58年にパリ音楽院管弦楽団とEMIに録音した交響曲全集が名盤・名演奏とされています。

 

 こちらはLPレコード

 

 

 

こちらはCDとBOXです。

 

 この交響曲全集ですが、第9番「合唱」だけがステレオ録音で、他の8曲はモノラル録音です。EMIでは同じ1957年には、オットー・クレンペラーがフィルハーモニア管弦楽団とベートーヴェン交響曲全集のステレオ録音を開始しているのに、なぜ、シューリヒトの録音は第9番「合唱」以外、モノラル録音なのか不思議です。録音したフランスではステレオ化が少し遅れていたのでしょうか・・・(しかもモノラル録音にしても音質はあまり良くありません・・)

HIROちゃんのこのパリ音楽院管弦楽団との全集ですが、手元には東芝EMIの廉価盤LPレコード(EAC-30113~30119)があるはずですが、何故か第1番・第2番(EAC-30113)と、第4番・第5番(EAC-30115)が見当たりません。どこかに紛れてしまったのか、もしかしたら購入しなかったのかもしれません。 5枚組CDのBOXの全集は、ドイツのEMI盤で、なぜか第9番「合唱」もモノラル盤になっています。(TESTAMENT盤の第9番「合唱」はステレオ)

 

 このパリ音楽院管弦楽団との全集は、全曲ともややテンポの速い演奏で、どちらかと言うと淡々とした演奏で、極端な激しさ、迫力と言ったものはあまり感じません。しかし、パリ音楽院管弦楽団の優美な音色が印象に残ります。特に管楽器の音色に特徴があり、中でもホルンの音は何故か甘ったるい音で「ポワ~~ン・・」という音色にHIROちゃんには聴こえるのですが・・、どうでしょう?・・個人的には何かベートーヴェンの交響曲にはちょっと合わない感じがしないわけでもありません。

この全集の中では個人的に好きな演奏としては、第3番「英雄」、第5番「運命」、第6番「田園」の3曲を選びます。これらの演奏は全てテンポが速く、溌剌としていて軽快さがあります。重厚な響きのベートーヴェンではなく、味わいのある新鮮な演奏と言えるでしょう。

なお、第9番「合唱」のステレオ盤ですが、気品のある演奏の中にも気迫も感じられます。また、特に第3楽章では即興性も感じられるのが特徴でしょう。

 

----コンサートライブの録音から----

 全集として聴くなら前述のEMIの全集でしょう。しかし、曲別に見てみると多くのライブ録音が残されていて、同じ曲でも表現が異なっています。

シューリヒトの演奏は淡々に・・とか飄々として・・とか良く言われるのですが、ライブ演奏ではスタジオ録音とは違った緊張感のある迫力や、生命力のある演奏を聴くことが出来ます。ライブ演奏の中から、いくつか印象に残った交響曲の録音について書いてみました。

 

 

 

 

 

 まずは、晩年のフランス国立放送管弦楽団との③の1963年ライブ録音の第3番「英雄」が何といっても素晴らしい。この録音のCDはいわゆる海賊盤?の2枚組Living Stage盤(カップリング曲はミサ・ソレムニス)と、第1番、第3番「英雄」、第9番「合唱」の3曲を収めた2枚組のAltus盤ですが、非常に鮮明な録音で良い音です。(海賊盤の2枚組Living Stage盤は、かなり昔ワゴン・セールで500円で購入したものですが、海賊盤でも音が良く、HIROちゃんにはAltus盤より鮮明で澄み切った音の感じに聞こえます。Altus盤はどちらかと言うと低域に重点をおいているようで、音が自然です) なお、Altus盤では第3番「英雄」より、第1番、第9番「合唱」の方が音が鮮明ですね。

 

 肝心の演奏ですが、第3番「英雄」ですが「ジャン!・・ ジャン!」の冒頭から緊張感のある演奏です。激しく劇的な表現はあまりありませんが、管楽器(特に木管とホルン)の音色が素晴らしい。第2楽章では細やかな感情の表現が見られ、第3楽章では管楽器は少し抑え気味でしょうか・・そして最も印象的なのが終楽章の最後で大きくテンポを落として終わるところですね。味わい深い演奏と言って良いでしょう。

 

 ②の1959年の第9番「合唱」ですが、明るい澄み切った音ですが迫力は十分。第1楽章の展開部などは凄まじいところがあります。また第2楽章での緊張感あるティンパニ、第3楽章はヴァイオリンの流れる美しさ、生き生きとした第4楽章・・全体的に所々ミスが聞こえますが、ライブならではのもの、気にしないで聴くことにしましょう・・・

 

 また、①の第9番「合唱」は同じフランス国立放送管弦楽団の1954年のモノラルによるライブ録音ですが、モントルー音楽祭でのライブで、即興的なテンポの動きが多い演奏です。オーケストラや、合唱が少し乱れがちなのが残念。

 

 その他、フランス国立放送管弦楽団による演奏では、1956年ライブ録音の②の第5番「運命」の終楽章などは恐ろしくテンポが速く、即興性があって興味深い演奏と言えます。

 

 シュトゥットガルト放送交響楽団との②の第7番や、③の第9番「合唱」の演奏もそれぞれライブらしい独自の細かなリズムや、旋律の歌わせ方、そしてすさまじい迫力も見られる熱演と言えるのですが、録音が悪いのか音があまり良くありません。特に第9番「合唱」では、ステレオですが独唱者の声が十分に捉えられていませんし、合唱やオーケストラの音も貧弱です。

 

 スイス・ロマンド管弦楽団との1957年ライブ録音の②の第2番も即興性があり、なかなか聴きごたえがあります。なお、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による1956年ライブ録音の①の第7番を期待したのですが、Memories盤の音が悪く、迫力さしか感じ取れません。

 

 シューリヒトのベートーヴェン交響曲については、今回紹介した録音の他にもフランス国立放送管弦楽団との他の演奏や、ベルリン・フィル、ウィーン・フィルなど多くのライブ録音が残されていますが、今回はHIROちゃんの持っているライブラリーから簡単に紹介しました。

 次回はシューリヒトのブラームスの作品について書いてみます。また、ブラームスもしばらく聴いていないので、今、聴いているところです。

では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。