今回企画し投稿をはじめた「名指揮者の名盤・名演奏」ですが、大体、生年月の古い指揮者から書いていますが、今回はトーマス・ビーチャムです。
トーマス・ビーチャムのプロフィール
1879年4月29日、英国ランカシャー生まれの指揮者。1961年3月8日ロンドンにて没。オックスフォード大学を中退し、ウッドとモシュコフスキに個人的に作曲を師事した他は、ほとんど独学で音楽を学んだ。1898年、急病のハンス・リヒターの代わりにハレ管弦楽団を指揮してデビュー。1909年には大富豪であった父の財産をつぎ込んで、ビーチャム交響楽団を設立、R.シュトラウスなどの作品を英国に紹介した。1932年、ロンドン・フィルを創設、1946年にはロイヤル・フィルを組織し、亡くなるまで指揮者を務めた。莫大な私財を投じて英国楽壇に貢献した功績は大きく、指揮者としては同時代の作曲家ディーリアスの作品の紹介に務めたことでも知られている。
2012/07/30 (2019/01/16更新) (CDジャーナル
トーマス・ビーチャムですが、EMIに多くの録音を残していて晩年にはステレオ録音でも多くの曲を残しています。
HIROちゃんの持っているビーチャムのライブラリーと言うと、多くはありません。そのうちLPレコードは下記の1枚だけしか見つかりませんでした。東芝EMIから発売されていた廉価盤「ニュー・セラフィム・ベスト150」の中の1枚で当時1,300円でした。
■ビゼー: 「アルルの女/第1組曲&第2組曲」
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
■ビゼー: 交響曲ハ長調/フランス国立放送局管弦楽団
東芝EMI (EAC-30034)
ビーチャムのHIROちゃんの音源は、ほとんどCDで、その多くは低価格で発売されたBOXのCDです。ビーチャムの残した録音は、ヘンデルやハイドン、モーツアルト、ベルリオーズ、シューマン、ロシア国民楽脈、グリーク、シベリウス、そして同じイギリスの作曲家ディーリアスなどが主なレパートリーの中心ですが、ベートーヴェンや、ブラームス、R・シュトラウスと言った作品も録音しています。
今回は手元にあるCDのBOXに収められている曲を主に紹介します。
■トーマス・ビーチャム指揮/ディーリアスの音楽
-- ディーリアス管弦楽、合唱曲、歌劇「村のロメオとジュリエット」歌曲集 –
【CD1】
1) 幻想序曲「丘を越えて遥かに」,
2) そりすべり(冬の夜),
3) ブリッグの定期市,
4) フロリダ組曲,
5) マルシュ・カプリス(奇想行進曲)
【CD2】
1) ダンス・ラプソディ第2番,
2) 夏の夕べ,
3) 春初めてのカッコウの声を聴いて,
4) 川面の夏の夜,
5) 夜明け前の歌,
6) 歌劇「フェニモアとゲルダ」より間奏曲,
7) 「イルメリン」前奏曲,
8) 日没の歌
【CD3】
1) ダンス・ラプソディ第1番,
2) ヴァイオリン協奏曲,
3) ピアノ協奏曲,
4) 交響詩「山の上にて」,
5) 合唱曲「人生のミサ」より第2部への前奏曲
【CD4-5】
1) 歌劇「村のロメオとジュリエット」,
2) 海流,
3) 夏の庭で
【CD6】
1) 付随音楽「ハッサン」より(抜粋),
2) 歌劇「コアンガ」より(抜粋),
3) 古い黒人奴隷の歌による変奏曲 「アパラチア」,
4) 交響詩「おとぎ話」
【CD7】
1) 高い丘の歌,
2) 夜曲「パリ、大都会の歌」、他
【演奏】
トーマス・ビーチャム(指揮)ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団,
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団,ジャン・プーニエ(ヴァイオリン),
ベティ・ビーチャム(ピアノ),ドーラ・ラベット(ソプラノ),
ジョン・キャメロン(バリトン),モーリン・フォレスター(コントラルト),
ビーチャム合唱協会、他
※この項は2018年04月26日の投稿記事を修正し再投稿するものです。
これはEMI原盤、CD7枚組のワーナー・クラシクスのBOXですが、HIROちゃんにとってはディーリアスの曲などイギリス音楽はこれまで、ほとんど聴くことが無いといってもいいくらい未知の曲が多く、ディーリアスの曲を知るためならいいかも・・・と思って購入したBOXです。
CD7枚のうち、CD1とCD2は晩年の1956年、57年のステレオ録音ですが、それ以外の5枚はモノラル録音。中には1930年代のSP録音も多いのですが、前記のようにディーリアスの曲を知る上での鑑賞には問題はないでしょう。
特にCD1とCD2での曲では懐かしさや、自然で美しい旋律が目立つ曲が多く、情景や優しさも曲から伝わってきます。
CD3では、ヴァイオリン協奏曲とピアノ協奏曲と数曲が収められています。協奏曲は作品としてはやや魅力にかけるものの、どちらもロマンチックな曲で、ここでも美しく自然な旋律が目立つので、構えて聴くのではなく聞き流すような感じでも違和感はありません。ピアノ協奏曲の第2楽章のラルゴは叙情感もあり、美しい楽章です。この曲ではOriginai versionと記されていますが、他の版もあるのでしょうか?なお、ピアニストは、Betty Beecham となっていますが、トーマスの妻か娘でしょうか?
CD4とCD5にかけてはオペラで「村のロメオとジュリエット」全曲が収められていますが、残念ながら他の合唱曲や声楽も含め、対訳がないので、ただの音楽として聴くしかありません。そんな訳であまり真剣には聴かなかったので印象にはあまり残らなかった曲でした。
CD6とCD7の中では「アパラチア」、「高い丘の歌」などが興味深く聴くことが出来ました。「高い丘の歌」では曲の後半で合唱が入るなど壮大さも感じられる曲です。
これまでは、なかなかディーリアスを聴くこともなかったのですが、ディーリアスの作品がこれほど情緒性があり自然で美しい音楽だとは思いませんでした。ディーリアスとビーチャムは、親交があったと聞きますが、ビーチャムの演奏は実に自然な演奏と言えます。しかし、曲によっては「ビーチャム編曲」と表示された録音が結構多く、オリジナルのディーリアスの曲想などが、どう異なるのかは全くわかりませんが、編曲によってディーリアスの音楽を壊しているとは思いたくありません。
■トマス・ビーチャム/ハイドン&モーツアルト
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、トマス・ビーチャム(指揮)
こちらもCD10枚組のお買い得の廉価BOX
CD1
ハイドン:
1. 交響曲 第93番ニ長調 (1957年録音)
2. 交響曲 第94番ト長調 「驚愕」(1957年録音)
3. 交響曲 第95番ハ短調 (1957年録音)
以上 モノラル
CD2
1. 交響曲 第96番ニ長調 「奇跡」(1957年録音)
2. 交響曲 第97番ハ長調 (1957/58年録音)
3. 交響曲 第98番変ロ長調 (1957/58年録音)
以上 モノラル
CD3
1. 交響曲 第99番変ホ長調 (1958/58年録音)
2. 交響曲 第100番ト長調 (1958/58年録音)
3. 交響曲 第103番変ホ長調 「太鼓連打」(1958/59年録音)
CD4
1. 交響曲 第101番ニ長調 「時計」(1958/59年録音)
2. 交響曲 第102番変ロ長調 (1958年録音)
3. 交響曲 第104番ニ長調 「ロンドン」(1958/59年録音)
CD5&6
ハイドン:四季(全曲)
エルシー・モリソン、アレクサンダー・ヤング、マイケル・ラングドン
ビーチャム合唱協会(1956年録音)
以上 ステレオ
CD7
モーツァルト:
1. 交響曲 第29番イ長調 K.201(1937年録音)
2. 交響曲 第31番ニ長調 K.297「パリ」(1938年録音)
3. 交響曲 第34番ハ長調 K.338(1940年録音)
4. 「フィガロの結婚」K.492序曲(1937年録音)
5. 「ドン・ジョヴァンニ」K.527序曲(1939/40年録音)
CD8
1. 交響曲 第35番ニ長調 K.385「ハフナー」(1938年録音)
2. 交響曲 第36番ハ長調 K.425「リンツ」(1938/39年録音)
3. 交響曲 第38番ニ長調 K.504「プラハ」(1940年録音)
CD9
1. 交響曲 第39番変ホ長調 K.543 (1940年録音)
2. 交響曲 第40番ト短調 K.550 (1937年録音)
3. 交響曲 第41番ハ長調 K.551「ジュピター」(1934年録音)
CD10
1.「後宮からの誘拐」K.384 序曲 (1956年録音)
以上 モノラル
2. 「エジプトの王 タモス」K.345間奏曲 第2番 (1957年録音)
3. 行進曲 ニ長調K.249(1957年録音)
4. ディヴェルティメント 第2番ニ長調 K.131 (1955/56年録音)
以上 ステレオ
5. ディヴェルティメント 第15番変ロ長調 K.287より 主題と変奏曲、
メヌエット (1947年録音)
6. ヴァイオリン協奏曲 第3番ト長調 K.216
ジョコンダ・デ・ヴィート(ヴァイオリン) (1949年録音)
以上 モノラル
※この項は2017年02月1日の投稿記事を修正し再投稿するものです。
さて、ビーチャムのハイドンの交響曲ですが、モノラルとステレオの混在ですが音はそれほど悪くありません。演奏は一言でいえば、「上品で癖のない格調高い演奏」でしょうか・・・いかにもイギリスの紳士らしい?気品高き演奏です。なかでも第101番「時計」の刻む音などはとても上品、第94番「驚愕」、第100番「軍隊」、104番「ロンドン」どれを聴いてもHIROちゃんには心地よく、そして優雅に聴こえます。
交響曲の他ではオラトリオ「四季」が入っていますが、夢中になって聴くほどの曲ではなく、むしろこのBOXにはありませんが、オラトリオ「天地創造」の方を好んでいます。
モーツアルトは、SP録音の復刻盤で音は録音年を考えると悪くはありませんが、これらも気品ある演奏といえるでしょう。
■トマス・ビーチャム/ベートーヴェン、ブラームス、リスト、メンデルスゾーン
ワーグナー、スッペ、シューベルト、R・シュトラウス
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、トマス・ビーチャム(指揮)
【CD1】
ベートーヴェン
1. 交響曲 第2番 ニ長調 作品36 録音:1956-57年
2. 交響曲 第7番 イ長調 作品92 録音:1958-59年
【CD2】
1. ミサ曲ハ長調 作品86 録音:1958年
2. アテネの廃墟 作品113-抜粋 録音:1957年
【CD3】
ブラームス
1. 交響曲 第2番 ニ長調 作品73 録音:1958-59年
2. 運命の歌 作品54(歌唱:英語) 録音:1956年
3. 大学祝典序曲 作品80 録音:1956年
【CD4】
リスト:ファウスト交響曲 録音:1958年
【CD5】
1. メンデルスゾーン
真夏の夜の夢 作品21-序曲 録音:1958年
2. メンデルスゾーン
美しいメルジーネの物語 作品32‐序曲 録音:1958年
3. リスト:オルフェウス 録音:1958年
4. リスト:詩篇 第13番 録音:1955年(モノラル)
5. ワーグナー
ニュルンベルクのマイスタージンガー-序曲
録音:1959年(モノラル)
6. スッペ
詩人と農夫-序曲 録音:1957年
【CD6】
シューベルト
1. 交響曲 第3番 ニ長調 D.200 録音:1958-59年
2. 交響曲 第5番 変ロ長調 D.485 録音:1958年-59年
3. 交響曲 第6番 ハ長調 D.589 録音:1955年
【CD7】
リヒャルト・シュトラウス
1. ドン・キホーテ 作品35 録音:1947-48年(モノラル)
2. 町人貴族 作品60(抜粋) 録音:1947年
【CD8】
1. 英雄の生涯 作品40 録音:1958年
2. 火の災い-ラヴ・シーン 録音:1947年(モノラル)
3. インテルメッツォ 作品72-間奏曲変イ長調
録音:1947年(モノラル)
4. サロメ 作品54-7つのヴェールの踊り
録音:1947年(モノラル)
以上 トーマス・ビーチャム指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
上記のBOXは、ベートーヴェンからロマン派までのドイツ系作品ですが、この中でのHIROちゃんのお薦め曲は、CD2のベートーヴェンの「ミサ曲ハ長調 作品86」です。ベートーヴェンのミサ曲と言うと「ミサ・ソレムニス ニ長調作品123」が有名ですが、このあまり知られていない「ハ長調ミサ」は「ミサ・ソレムニス」と異なり演奏時間も短かいのですが、ベートーヴェンらしい魅力のあるミサ曲です。(アマチュア合唱団の演奏会ではメイン・ステージ曲として良く演奏される曲で、合唱ファンにとってはおなじみのミサ曲の一つです) ビーチャムの演奏はスタンダードな演奏と言えるでしょう。
■トーマス・ビーチャム/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 録音集
こちらはモノラル中心の音源を集めたCD10枚組のBOX。かなり昔ですが東京秋葉原にあった「石丸電気レコード館」の輸入盤売り場で購入したもので紙ケースの裏蓋に980円という価格シールをはがして貼っておいたので当時の価格が分かります。全て録音年の記載がありません。「シベリウスの交響曲第2番」など、なかなか良い演奏や興味ある曲目が多いのですが、音が悪いのが残念。曲目はBOXの裏側をスキャンしました。
これらのBOXのCDの他にも、ベルリオーズの「レクイエム」などのCDも何枚か手元にあるのですが、正直、ビーチャムの音源はそれほど聴き込んでいませんし、手持ちの架蔵音源も少ないため、どれが名盤・名演奏か絞り込むことが出来ないのですが、やはり同時代の親交の深かった作曲家ディーリアスの作品の紹介に務めたことを考えると、録音したディーリアスの一連の作品が名盤と言うことになるのでしょうか・・・
では、今日は、このへんで…HIROちゃんでした。