今回紹介する合唱曲は、日本の代表的なクラシック音楽の作曲家の一人である、林光(1912-2012)の混声合唱のための『カンタータ第1番』 原爆小景より「水ヲ下サイ」です。

  この曲は、これまで何度も紹介しようと思っていた曲なのですが、拙い文章だけでは、この曲がどのような曲なのかを伝えることは、とても無理な恐ろしく凄い曲なのです。しかし、この曲がYou  Tube に投稿されていることを知ったので、ぜひ聴いていただき、あわせて記事を書くことにしました。

 

  この作品は、林光が原民喜の詩「原爆小景」をもとに作曲した混声合唱曲です。この「水ヲ下サイ」は、1958年に『混声合唱のための“カンタータ第1番”』として作曲され、その後、4曲からなる「完結版/原爆小景」として組曲全曲が2001年に完成しています。演奏には非常にテクニックが必要なアカペラの難曲で、広島原爆投下直後の非常に生々しい情景を歌った曲です。

  歌というより、地獄絵図からの悲鳴、叫び、うめき・・

 

壮絶な情景を表している歌詞を紹介します。

 

水ヲ下サイ

アア 水ヲ下サイ

ノマシテ下サイ

死ンダホウガマシデ

死ンダホウガ

アア

タスケテ タスケテ

水ヲ

水ヲ

ドウカ

ドナタカ

オーオーオーオー

オーオーオーオー

天ガ裂ケ

街ガ無クナリ

川ガ

ナガレテヰル

オーオーオーオー

オーオーオーオー

 

とてもとても衝撃的な歌詞です・・・

 

  この「「水ヲ下サイ」の音源ですが、初演した東京混声合唱団の録音もあるようですが、HIROちゃんの手元にある音源は、1970年(昭和45年)の第23回 全日本合唱コンクール全国大会「高校生の部」で金賞を受賞した福島県立会津農林高校合唱団の実況録音盤のLPレコードです。(福島県は合唱人口が昔から非常に多く、合唱活動が最も盛んな合唱王国です)

 

 

 

 

  さて、この福島県立会津農林高校の演奏ですが、NHKでも放送され、合唱ファンのみならず多くの音楽ファンが衝撃を受けた演奏です。

  この曲は、元々、プロの合唱団のために作曲された曲で、かなりの難曲! この時のコンクールの審査員の一人であった全日本合唱連盟理事長の作曲家の石井歓は、女声合唱団が多く、数少ない混声合唱団の会津農林高校合唱団の演奏について、次のような評価を書いています。

 

~ 団員ひとりひとりがこの作品の真奥に触れた充分な心をもって歌っていることが、最大の成果をもたらしたものと言える。男声のひびきの安定さ、節度ある感情の表出は素晴らしいものだと言える ~ 合唱団の作品に接する正しい姿勢が音楽形成のうえに極めて重要であることを改めて感じさせるものである。~ 

 

 当時、NHKで放送された時の音源では歌い終わった後、合唱団員の泣き声が長く大きく聞こえたように記憶しています。紹介したLPレコードでも、末尾に紹介したYou Tube の音源でも合唱団員は泣きながら歌っているのが良くわかります。

 原爆投下直後の壮絶な風景を見事に表現した作品、そして見事に歌い上げた会津農林高校の団員たち・・ 今でもオールドの合唱ファンの間では衝撃的な演奏として記憶に残っている方が多いと思います。 合唱コンクール全国大会での衝撃として、語り継がれる伝説の名演奏だと思います。

 

では、福島県立会津農林高校合唱団の演奏をお聴きください。

(これを聴くと恐怖感で眠れなくなるかもしれません・・それくらい壮絶な演奏です)

 

会津農林高校 水ヲクダサイ - YouTube

 

では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。