今回紹介するのは、モーツアルトの「弦楽五重奏曲第4番ト短調K516」です。
五重奏曲は弦楽四重奏に楽器を一つ加えたもので、それにより大きく音のバランスが変化します。5つ目の楽器を何にするかは作曲者によって異なります。シューベルトはチェロを加えて弦楽五重奏曲を作曲していますが、モーツアルトはヴィオラを加えた弦楽五重奏曲としています。
この第4番K516の弦楽五重奏曲は、ほぼ同じ時期に作曲された前作の第3番K515と一対をなしているといわれ、ト短調(K516)と、ハ長調(K515)という調性から対照的な性格の作品となっています。これは交響曲第41番ハ長調「ジュピター」(K551)と、交響曲第40番ト短調(K550)との関係に似ているといわれています。
久しぶりに、この曲を聴いてみようと思ったのですが、交響曲などに比べると室内曲は架蔵している音源はあまり多くありません。整理が悪いので1万枚以上の音源の中からどこにあるのか探すのも大変、何種類あるのかも良く覚えていません。
そんななか、LPレコードの棚とCDの棚から見つけ出したのが次のLP1枚、CD2枚の3種類の演奏です。良く探せば、あと1、2枚は出てくるかもしれません。
■アマデウス弦楽四重奏団
ウェストミンスター盤 東芝EMI LP IWB-60038
ノルバート・ブレイニン(第1ヴァイオリン)、ジークムント・ニッセル(第2ヴァイオリン)
ピーター・ジドロフ(ヴィオラ)、マーティン・ロヴェット(チェロ)、W/セシル・アロノヴィッツ(第2ヴィオラ)
初めてこの曲を購入したLPレコードです。東芝EMI(株)の「ウェストミンスター名盤シリーズ」の中の1枚。アマデウス弦楽四重奏団は、1969年に同じメンバーでDGにステレオでこの曲を再録音していますが、今回のウェストミンスター盤はモノラル録音です。録音年月の表記がジャケットにはありませんが1951年録音のようです。
約70年前の録音ですが、モノラルながらとても聴きやすく良好な音質と言えます。
第1楽章ですが憂いに満ち、緊張感のある演奏で短調のまま悲劇的に終わるのが印象的。第2楽章も同じト短調、第1楽章と同様に憂いに満ちた演奏で、悲劇的な雰囲気が良く伝わってきます。第3楽章のアダージョは、全ての楽器に弱音器を付けての演奏で、静かで瞑想的です。第4楽章は長い短調の序奏から一転してト長調に変わるのですが澄んだ明るい音が印象に残ります。
■グリュミオー・トリオ
(ヴァイオリン:アルトュール・グミュミオー、ヴィオラ:ジョルジュ・ヤンツェル、チェロ:エヴェ・ツァコ)、ヴァイオリン:アルバト・ゲレツ、ヴィオラ:マックス・ルズール
PHILIPUSのCD3枚組BOXの全集からの1枚ですが、このBOXでは第2番K406が第3番と、第4番の後に管楽セレナードからの編曲だったためか第2番K406がK406(K516b)として第4番、K515が第2番、K516が第3番と表記されています。そのため、この全集では聴く際に少し混乱がおきます。
この全集については、以前にも紹介をしているのですが、グリュミオーのヴァイオリンの美しい音を聴くことができます。また、グリュミオーが、この曲の随所で流れる美しいメロディーを、とても深い憂いとして奏でているのが印象的です。
■オルランド四重奏団&今井信子
今井信子(ヴィオラ)、John Harding(第1ヴァイオリン)、
Heinz Oberdorfer(第2ヴァイオリン)
Ferdinand Erblich(ヴィオラ)、Stefan Metz(チェロ)
ブリリアント・クラシックの「モーツアルト大全集」の中の1枚。全曲をとおして上品な音の中にも悲劇的な悲しさが良く伝わってくる演奏です。
今回は、最近このブログでも紹介した自作の小出力の真空管アンプ(12A/71Aコンパチブル・シングル・アンプ)を完成させたことから、室内曲を聴きたくなり取り出したものです。これを機会にベートーヴェンの弦楽四重奏曲などの室内曲をあらためて聴き直してみたいと思いました。
では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。