パウル・クレツキはポーランドの指揮者、作曲者ですが、もう50年前(1973年)に亡くなっていますので、知らない方もおられるかもしれません。戦後は指揮者として活躍し、特に、ベートーヴェンやマーラーの曲を得意としていたようです。
クレツキの残したベートーヴェン交響曲というと、以前、このブログでも紹介しましたが、1965年から68年にかけてチェコ・フィルハーモニー管弦楽団とスプラフォンに録音した全集があります。1960年代の録音ですが、スプラフォンのこの録音の音質には驚きです。とても半世紀以上前の録音とは思えないくらい素晴らしい音で、音の分離が良く、各楽器の音が鮮明にとらえられています。
演奏は、インパクトのあるものが多く、人によっては、『これはベートーヴェンではない・・』と、おっしゃるクラシック・ファンもおられるようです。しかし、全曲とも完成度が高く、全9曲の中では、第3番「英雄」、第5番、それに第9番「合唱」の第1楽章が素晴らしく、総合して良いのは第3番「英雄」だろうか・・・リズムを強調したスフォルツァンドのきいたヴァイオリン、時折みせるティンパニーの強打、悲愴感もありながら、迫力を合わせ持った名演だと思います
さて、今回、紹介するのはチェコ・フィルとの全集録音の前に、フランス国立放送管弦楽団と録音した第6番「田園」と、南西ドイツ放送交響楽団(バーデン・バーデン)との第1番ハ長調&第5番ハ短調の2枚のコンサート・ホール・ソサエティのLPレコードです。先週、勤務先の直ぐ近くのリサイクル・リユース店の中古レコード・コーナーで見つけて購入したものです。価格は2枚とも、何と税込み100円!・・・
早速聴いてみました。コンサート・ホールの録音というと、音質はイマイチで、あまり良くない感じが多いのですが、この2枚はステレオ初期の録音で、コンサート・ホールの録音としては、かなり良く感じました。ただ、「田園」の2面の第3楽章に大きな傷があり、音飛びが何度もありました。(この中古コーナーではレコードの検盤は自由で、キズありを承知の上で購入したので文句は言えません)
ベートーヴェン交響曲第6番ヘ長調 「田園」
パウル・クレツキ指揮/フランス国立放送管弦楽団
コンサート・ホール・ソサエティ M2239(LPレコード)
ベートーヴェン交響曲第1番ハ長調&第5番ハ短調
パウル・クレツキ指揮/南西ドイツ放送交響楽団
コンサート・ホール・ソサエティ SMS-2313(LPレコード)
これらの3曲のベートーヴェンですが、基本的な演奏スタイルは、前述のチェコ・フィルハーモニー管弦楽団とのスプラフォンの全集とあまり変わらないように感じます。
「田園」ですが、レガート気味の弦楽器とフランスの楽団特有の管楽器の音色が印象的な第1楽章、第2楽章もなかなか良い。ファゴットや、オーボエ、クラリネットの木管の表現も美しい描写です。繰り返しの音飛びで、まともに聴けなかった第3楽章もまずまず・・・
第4楽章ですが、重心の低いティンパニーと弦とのクライマックスでは、録音のせいか?、音が少し割れたり、潰れた感じになりますが、なかなか迫力のある演奏です。
第5楽章の明るいホルンに導かれるテーマもゆったりとしていて、牧歌風です。この楽章はとても気持ちがよく、幸福感があります。また、充実感と色彩感みたいなものまで感じられる素晴らしい演奏です。
この「田園」ですが、CDでは発売されなかったように思うのですが? CDでの再発売は多分ないだろうな~~~ 残念!
もう1枚の南西ドイツ放送交響楽団との第1番&第5番ですが、このLPは全く傷なしで盤もきれいでした。税込み100円はお宝を発見したような気分です。
さて、こちらの演奏ですが、南西ドイツ放送交響楽団の全体的な音色が良いですね。
2曲の中で第5番は、なかなかインパクトのある演奏です。初めは少し物足りなさを感じるのですが、曲が進むにつれ、熱気が出てきます。終楽章が特に素晴らしく弦も管楽器も迫力を感じます。なかなかの名演でしょう。
もう少し録音が良ければ、南西ドイツ放送交響楽団の音ももっと感動出来たと思う演奏でした。
では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。(^^♪