佐藤眞(サトウシン)さんという作曲家をご存じだろうか、卒業式や中学校の校内合唱コンクールなどで良く歌われる「大地讃頌」の作曲家と言えば、分かる方も多いと思います。

佐藤眞さんは、1938年、茨城県水戸市出身の83歳。4曲の交響曲、6曲のオペラの他、ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲などを作曲されています。

 また、前述の「大地讃頌」を終曲にもつ、「混声合唱とオーケストラのためのカンタータ 土の歌」、混声合唱組曲「旅」、混声合唱組曲「蔵王」、混声合唱組曲「若い合唱」など、合唱ファンにはお馴染みの曲の作曲家です。

 

 当初はカンタータ「土の歌」か、合唱組曲「蔵王」について投稿しようかと思ったのですが、この2曲については大好きな曲なので、あらためて投稿することとし、今回は「旅」について投稿します。

佐藤眞さんの「旅」、「蔵王」と言えば合唱ファンの中で知らない方はいないでしょう。特にオールドの方にとっては2曲とも非常に懐かしい曲ではないでしょうか。どちらの組曲も昭和40年代前半の頃には、全国の合唱団の定期演奏会などで多く歌われた大ヒット曲です。

特に「旅」については、HIROちゃんが昭和42年の高校1年生の時に入団した、一般の合唱団で初めての定期演奏会で全曲を歌った思い入れのある合唱曲です。多分、その翌年だったかに「蔵王」も定期演奏会で全曲を歌いました。

 

 さて、この合唱組曲「旅」ですが、昭和37年の芸術祭参加作品として、ニッポン放送からの依頼で作曲された作品で、「蔵王」と同じような形式で書かれています。曲としては第6曲の「旅のあとに」が歌う側からすると、やや難曲ではあるのですが、全体としては、易しい歌いやすい曲が多くなっています。

 そのためか、曲全体からみると深さはあまり感じませんが、何と言っても、この曲の魅力は「村の小径で」や、「なぎさ歩めば」、「行こうふたたび」など、美しい旋律の曲が多いことでしょう。中でも「なぎさ歩めば」はソプラノのメロディーだけでも独唱曲の歌曲としても成り立つような、とても美しいメロディーです。

曲は次の7曲から構成されていて、元々は混声合唱ですが、女声合唱、男声合唱にも編曲されています。

 

1.旅立つ日

2.村の小径で

3.旅のよろこび

4.なぎさ歩めば

5.かごにのって

6.旅のあとに

7.行こうふたたび

 

全曲でも20分位の曲ですが、楽譜には演奏前と、各曲と曲の間にナレーションの文章が書かれていて演奏会ではナレーションを入れた構成での演奏が多いと思います。(ナレーションについては「蔵王」と同様、作曲者から省略して演奏しても良いとなっています。 YOU  TUBEでナレーションを入れた全曲の演奏会の映像があったので、末尾にアドレスを紹介します)

 

 さて、HIROちゃんの手元にある「旅」のライブラリーはLPレコードとCDの次の3種類です。(ナレーションは全て省略された構成で録音されています)

 

田中信昭指揮/東京混声合唱団 ピアノ:田中瑤子 

※カップリング曲:混声合唱組曲「蔵王」 

(LP) ビクター音楽産業SJX-1126

 

 

宇野功芳指揮/日本女声合唱団 ピアノ:松行美左子

※カップリング曲:中田喜直、磯部俶 女声合唱曲集など

 (LP) ビクター音楽産業SJX-1168

 

 

宇野功芳指揮/神戸市混声合唱団 ピアノ:沢田真智子(CD)

※カップリング曲:高田三郎/合唱組曲「水のいのち」 他

 (CD) KRS/KRS-470

 

 

これら3種の演奏ですが、どの演奏も素晴らしいのですが、中でも田中信昭指揮/東京混声合唱団の演奏が最もスタンダードで、飽きのこない演奏と言えるでしょう。各曲ともテンポは速くなく、遅くなく・・という感じで何より東京混声合唱団の声とハーモニーは最高と言えます。田中信昭氏の細やかな表現の指示がうかがえる見事な演奏です。

 

評論家でもあった今は亡き、宇野功芳氏の録音が2種類あります。日本女声合唱団を指揮したLPレコード、それと高田三郎作曲の「水のいのち」とカップリングされた神戸市混声合唱団との演奏です。

2種の演奏スタイルはテンポ等に変化はあるものの、基本的にはあまり変わっていないと思いますが、前記は女声合唱・・「旅」の演奏より、カップリングされた中田喜直や磯部俶の女声合唱曲の方が、女声合唱の美しさが感じられます。

神戸市混声合唱団との特別演奏会(2011年6月5日)でのライブ録音ですが、宇野氏がオーケストラを振ったモーツアルトや、ベートーヴェンの交響曲では、『なんじゃこりゃ~~』的な変わった解釈が多かったのですが、ここでは非常に素直な演奏。特に第4曲の「なぎさ歩めば」と、「旅のあとに」の2曲のテンポは非常に遅い演奏ですが、「なぎさ歩めば」は、なんと美しい演奏なのか・・・「旅のあとに」では、ものすごく遅いテンポに驚きますが、細やかな感情表現が見事だと思いました。

 

さて、HIROちゃんの架蔵音源は、この3種類なのですが、YOU  TUBE を見ていたら山田一雄指揮/創価合唱団の演奏を見つけました。1曲ごとに投稿されていましたが、素晴らしい演奏です。ただ、大好きな第4曲の「なぎさ歩めば」でのノイズが目立ったのは少し残念でした。曲の順番とおりに並べたので聴いてみてください。

 

創価合唱団_混声合唱のための組曲「旅」_旅立つ日(SGI) - YouTube

 

創価合唱団_混声合唱組曲「旅」より「村の小径で」(SokaChorus:SGI) - YouTube

 

創価合唱団_混声合唱組曲「旅」より「旅のよろこび」(SokaChorus:SGI) - YouTube

 

創価合唱団_混声合唱のための組曲「旅」より「なぎさ歩めば」(SGI) - YouTube

 

「かごにのって」_創価合唱団_混声合唱のための組曲「旅」より(SGI) - YouTube

 

混声合唱組曲_「旅」より「旅のあとに」_創価合唱団(SokaChorus:SGI) - YouTube

 

混声合唱組曲「旅」より「行こうふたたび」_創価合唱団(SGI) - YouTube

 

なお、投稿記事の中で述べた、ナレーションを入れた構成での演奏会の映像がありましたので、紹介します。演奏自体は少し物足りなさを感じますが、どのようなナレーションでどのように曲がつながるのかを知るには十分な演奏だと思います。

 

ナレーション入り全曲

混声合唱組曲 旅 - YouTube

 

彦根市民合唱団フィルハーモニックShiga第15回定期演奏会

第4ステージ 混声合唱組曲「旅」 佐藤眞作曲 指揮 磨谷真理

 

クラシック音楽ファンと言えば、ベートーヴェンやモーツアルト・・・ばかりでなく、日本人作曲家の合唱曲にもぜひ耳を傾けてはどうでしょう・・・

では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。