髙田三郎作曲の名作中の名作、合唱組曲「水のいのち」については、男声合唱版のYou Tube のコンサートライブ動画について、前回までに3つの演奏を紹介しましたが、いずれも素晴らしい演奏でした。
 今回は、HIROちゃんの手元にあるLP、CDから混声合唱版、女声合唱版、男声合唱版、それに作曲者自身による編曲ではありませんが、オーケストラ伴奏版について、9種類の演奏を簡単に紹介していきます。


指揮:福永陽一郎/日本アカデミー合唱団/ピアノ:三浦洋一
 カップリング曲:髙田三郎/混声合唱組曲「心の四季」 他1曲
 1970年 東芝EMI (CZ28-9071) CD



 

日本アカデミー合唱団による混声合唱。
福永陽一郎(1926-1990)は、指揮者、編曲者、評論家ですが、指揮者としては特に男声合唱に尽力されたというのがHIROちゃんの印象。(北村協一とのグリークラブ・アルバムとか・・)
ここでの「水のいのち」は混声合唱ですが、プロの合唱団だけに構成のしっかりした演奏で安定しています。充実したハーモニーの中に癖のない感情表現が見られます。飽きのこない堅実な演奏と言えるでしょう。カップリング曲の合唱組曲「心の四季」も素晴らしい。


指揮:木下 保/日本女子大学合唱団/ピアノ:木下歌子 ※女声合唱版
 カップリング曲:髙田三郎/薄氷・女声合唱組曲「心の四季」
 1977年 東芝EMI (TA-72055) LPレコード 



 

 この演奏は女声合唱版によるもの。木下 保(1903~1982)と言えば、昔、年末の「第九」や、歌劇「夕鶴」の上演で活躍した往年の名テノール歌手であり、指揮者です。この女声合唱による「水のいのち」は、5曲全てが、かなり早目のテンポで進んでいきます。そのためか、流れるような隙のない演奏で「全体の音楽の流れを大切にした名演」でしょう。早いテンポですが、歌詞がはっきりした明快な発音で、美しい日本語です。言葉からの感情表現の素晴らしい演奏です。
 合唱団時代に縁があって木下先生のご自宅に団の指揮者の方と何名かで、お邪魔したことがあり、先生が歌に対しての日本語の美しさやニュアンスについて熱く語られたことを覚えています。また、先生に合唱団として直接、御指導を受けた貴重な経験があります。その時も言葉の発音などについて細やかなご指導を受けました。合唱では言葉を大切にする先生でした。
なお、2面のカップリング曲、聖心女子大学グリークラブによる合唱組曲「心の四季」も素晴らしい演奏だ。CDでの復活を望みたい・・・

作曲者自身による自作自演盤が2枚、手元にあります。


指揮:髙田三郎/神戸中央合唱団/ピアノ:高田江里
 カップリング曲:髙田三郎/混声合唱組曲「心の四季」
 1981年 ビクター音楽産業 (SJX-1111) LPレコード




指揮:髙田三郎/豊中混声合唱団/ピアノ:高田江里
 カップリング曲:髙田三郎/混声合唱「渡辺直己短歌集」 他3曲
 1998年4月 フォンテック (FOCD9510) CD




 1枚目はLPレコードです。 合唱はアマチュアですが合唱コンクールの全国大会常連だった「神戸中央合唱団」 作曲者の意図する感情表現が汲み取れるこの曲の代表的名盤でしょう。どの曲をとっても細部にわたる内面的な感情が良く表れた演奏といえるでしょう。( なお、この録音はYou Tube で聴くことが出来ます。末尾のアドレスから見てください。)
 CDの豊中混声合唱団との演奏ですが、前記の神戸中央合唱団と聴き比べると、基本的なスタイルに大きな違いはないように感じます。
実は、HIROちゃんの手元にある第6刷の「水のいのち」の楽譜の最後のページには、作曲者自身による「演奏上の注意」として、全5曲ごとに曲の開始から終わるまでについて、歌詞と合わせながら詳細な各パートとのバランス、テンポ設定、音の強弱、言葉の発音、歌詞の表現方法などが発想(演奏)記号、速度記号等を使いながら、事細かく書かれています。
 しかしながら、これら2種類の自作自演盤を聴いてみると、必ずしも自身が書いた「演奏上の注意」とは異なったテンポの変化や表現が見られます。とは、言えやはり作曲者自身による、この2枚の演奏は作曲者の伝えたい感情などが良く表れた名演と言えるでしょう。
 なお、LPでの2面は作曲者自身による指揮で、大久保混声合唱団による、合唱組曲「心の四季」、これも内面的な感情が良く表れた演奏といえるでしょう。
 また、CDのカップリング曲、豊中混声合唱団との混声合唱のための「啄木短歌集」、混声合唱のための「渡辺直己短歌集」、混声合唱とピアノのための「青森の子守歌」、混声合唱とピアノのための「山形の子守歌」は、全てHIROちゃんにとって初めて聴いた髙田作品でしたが、特に朗読を加えた「渡辺直己短歌集」は、興味深く聴くことが出来ました。

 以前のブログでも書きましたが、県の「合唱祭」で、県合唱連盟の役員の方と交えた髙田先生との食事の際、「私はタカダではなく、濁らないタカタです。」「タカタのタカは、高ではなく旧漢字の髙と書きます」と、自己紹介されたことを思い出しました・・・今から50年くらい昔の話です・・・

 次回は、この「水のいのち」がぞっこんお気に入りだった指揮者、音楽評論家の宇野功芳 氏が指揮した2つの演奏など5種類のCDを紹介します。


髙田三郎指揮/神戸中央合唱団の演奏は、You Tube で聴くことが出来ます。
第5曲の「海よ」は、この組曲の中でも名曲中の名曲!

第1曲「雨」

http://www.youtube.com/watch?v=20xnHlQvXJU
第2曲 「水たまり」
http://www.youtube.com/watch?v=WQtt7IYoglg
第3曲 「川」
http://www.youtube.com/watch?v=1CBBi_35mhU
第4曲 「海」
http://www.youtube.com/watch?v=68vqOSnbiAY
第5曲 「海よ」
http://www.youtube.com/watch?v=xElvJw32gFI

では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。