『水のいのち』についてはYahooブログ時代の2018年1月に投稿していますが、今回は演奏の音源も9種類のライブラリーとなったこともあり、あらためて『水のいのち』の曲の構成、歌詞などについて紹介すると共に、音源の感想(聴き比べ)について3回くらいに分けて投稿したいと思います。
聴き比べの前に、曲についての簡単な紹介や、HIROちゃんの持っている「水のいのち」の楽譜の紹介などをしたいと思います。
『水のいのち』は、髙田三郎が作曲したピアノ伴奏付きの混声合唱組曲で、1964年(昭和39年)TBSの委嘱により作曲され、芸術祭奨励賞を受賞した曲です。
日本の合唱曲の中では特に人気が高い作品で、「水のいのち」と言えば合唱経験者の方は必ずと言っていいほど、全曲とはいかなくても歌った経験があるのではないでしょうか。特に昭和40年代には全国、どこの合唱団でも歌われたと言っても過言ではないくらいに合唱曲としては大ヒットした作品です。そんなことで混声合唱版の楽譜だけでも100刷の出版を超えています。混声合唱版の他に女声合唱、男声合唱にも編曲されていて、合わせると200刷を超えているようです。また、作曲者の死後に今井邦男氏によって、『混声合唱とオーケストラのための「水のいのち」』 としてオーケストラ伴奏版まで編曲されています。
■曲の構成
曲の構成を簡単にまとめてみました。次の5曲の組曲からなっています。
1.雨 (Lento tranquillo) 変イ長調
静かなゆっくりとした曲で、全てのものにしとしとと落ちる雨を静けさの中で表現した音楽になっています。
2.水たまり (Moderato) ト長調
ややリズミックな音楽、水たまりの泥に人間社会の醜さと、水たまりの水面の美しさで、人の焦がれる気持ちを表現しています。
3.川 (Risoluto) 変ロ短調
曲の初めの歌詞「なぜさかのぼれないか、なぜ低い方へゆくほかはないか」・・・この部分だけで4/4拍子から2/4+5/8拍子→5/4拍子→2/4+5/8拍子→4/4拍子→6/8拍子というように、拍子が短い間に頻繁に変化しながらRisolutoで始まります。それ以後は12/8拍子で曲が進んでいきますが、途中で再び変拍子になったりします。川の流れに対する疑問、逆巻く川の激流、人間たちの生きる悲しみや憧れといったものを歌い上げていきます。
4.海 (Adagietto) ニ長調
大きな海の描写ですが、激しくはなく、m-m-m と、ハミングで静かに打ち寄せる波を表現しています。
5.海よ (Andante) ニ短調
この曲も4/4拍子から5/4拍子→5/8拍子→6/4拍子→5/8拍子~ といった具合に変拍子で曲が進みますが最後は4/4拍子で曲が終わります。
戻った水のいのちが再び空に昇り、雨となり川となり、また輪廻を繰り返すいのちの悲しさや喜びを表現した、全曲の中で最も長い曲となっています。スケールの大きな壮大な合唱曲です。
■歌詞
歌詞については以前yahooブログ時代にHIROちゃんが一度投稿していますが、再度掲載します。
「水のいのち」 歌詞:高野喜久雄
■第1曲 「雨」
降りしきれ 雨よ 降りしきれ すべて 立ちすくむものの上に
また 横たわるものの上に
降りしきれ 雨よ 降りしきれ すべて 許し合うものの上に
また 許し合えぬものの上に
降りしきれ 雨よ そして 立ち返らせよ 井戸を井戸に
庭を庭に 木立を木立に 土を土に
おお すべてを そのものに そのもののてに
■第2曲 「水たまり」
わだちの くぼみ そこの ここの くぼみにたまる 水たまり
流れるすべも めあてもなくて ただ だまって たまるほかはない
どこにでもある 水たまり
やがて 消え失せてゆく 水たまり わたしたちに似ている 水たまり
わたしたちの深さ それは泥の深さ わたしたちの言葉 それは泥の言葉
泥のちぎり 泥のうなずき 泥のまどい だが わたしたちにも いのちはないか
空に向かう いのちはないか あの水たまりの にごった水が
空を うつそうとする ささやかな けれどもいちずないのちはないか
うつした空の 青さのように 澄もう と苦しむ 小さなこころ
うつした空の 高さのままに 在ろう と苦しむ 小さなこころ
■第3曲 「川」
なぜ さかのぼれないか なぜ 低い方へゆくほかはないか
よどむ淵 くるめく渦のいらだち まこと 川は山にこがれ
きりたつ峰にこがれるいのち 空の高みにこがれるいのち
山にこがれて 石をみごもり 空にこがれて 魚をみごもる
さからう石は 山の形 さかのぼる魚は 空を耐える
だが やはり 下へ下へと ゆくほかはない 川の流れ
おお 川は何か 川は何かと問うことを止めよ
わたしたちもまた 同じ石を 同じ魚を みごもるもの
川のこがれを こがれ生きるもの
■第4曲 「海」
空を映そうとして 波一つなく 凪ぐこともある
岩と混じれなくて ひねもす たけり狂うこともある
しかし 凡ての川はみな そなたをさして常に流れた
底に沈むべきものは沈め 空に返すべきものは
空にかえした 人でさえ
行けなくなれば そなたを さしてゆく
そなたの中の 一人の母をさしてゆく
そして そなたは 時経てから 充ち足りた死を
そっと岸辺に打ち上げる 見なさい これを 見なさい と云いたげに
■第5曲 「海よ」
ありとある 芥 よごれ 疲れ果てた水 受け容れて すべて 受け容れて
つねに 新しくよみがえる 海の 不可思議
休みない 汀 波の指 白い指 くりかえし うまず くりかえし 海の砂
億の小石を 数えつづける 海の 不可思議
くらげは 海の月 ひとでは 海の星 海蛍 海の馬 空にこがれ
あこや貝は 光を抱いている そして 深く暗い 海の底では
下から上へ まこと 下から上へ 雪は 白い雪は 降りしきる
おお 海よ たえまない 始まりよ あふれるに みえて 終わるかに みえて
終わることもなく 億年の むかしも いまも そなたは いつも 始まりだ
おお 空へ 空の高みへの 始まりなのだ
のぼれ のぼりゆけ そなた 水のこがれ そなた 水のいのちよ
たとえ 己の重さに 逆らいきれず 雲となり また ふたたび降るとしても
のぼれ のぼりゆけ みえない つばさ いちずな つばさ あるかぎり
のぼれ のぼりゆけ おお
■「水のいのち」の楽譜
混声合唱の「水のいのち」の楽譜が出版されたのは昭和40年10月15日、カワイ楽譜から第1刷が発売されました。今でも人気のある曲で混声合唱版、女声合唱版、男声合唱版を合わせると、前記のように200刷を超えているようです。
HIROちゃんの「水のいのち」の楽譜は高校生時代に一般の合唱団に入っていた時、昭和44年の定期演奏会で使用したもので、その後、職場関係の合唱団の定期演奏会などでも使用しました。
下記の写真の楽譜で、昭和43年4月15日 第6刷発行のもので価格は250円の楽譜です。楽譜の最後には作曲者からの「演奏上の注意」が詳細に5つの曲ごとに書かれています。だいぶ色も褪せた楽譜ですが、第5曲「海よ」から2ページだけスキャンしてみました。赤いボールペンや鉛筆で練習中に指揮者から言われた歌い方や、注意などが、ゴチャゴチャと書き込んであります。(なんと汚い字だろう・・・) 他のページもこんな感じ・・とても懐かしい楽譜です。
■「水のいのち」の音源ライブラリー
現在、HIROちゃんの手元にある「水のいのち」の音源のライブラリーは、混声合唱版5種類、女声合唱版2種類、男声合唱版1種類、オーケストラ伴奏版1種類の全部で下記の9種類です。次回の投稿からこれらの演奏について、少し詳しく紹介していきたいと思います。
●指揮:福永陽一郎/日本アカデミー合唱団/ピアノ:三浦洋一
カップリング曲:髙田三郎/混声合唱組曲「心の四季」 他1曲
1970年 東芝EMI (CZ28-9071) CD
●指揮:木下 保/日本女子大学合唱団/ピアノ:木下歌子 ※女声合唱版
カップリング曲:髙田三郎/薄氷・混声合唱組曲「心の四季」
1977年 東芝EMI (TA-72055) LPレコード
カップリング曲:髙田三郎/混声合唱組曲「心の四季」
1981年 ビクター音楽産業 (SJX-1111) LPレコード
●指揮:髙田三郎/豊中混声合唱団/ピアノ:高田江里
1998年4月 フォンテック (FOCD9510) CD
●指揮:宇野功芳/指導:中沢敏子/カラコレス女声合唱団
ピアノ:梅本千絵 ※女声合唱版
カップリング曲:髙田三郎/女声合唱組曲「私の願い」他1曲
1987年5月 フォンテック (EFCD4085) CD
●指揮:宇野功芳/神戸市混声合唱団/ピアノ:沢田真智子
2011年6月 KRS (KRS470) CD
●指揮:今井邦男/東海メールクワイアー/ピアノ:木島美紗子 ※男声合唱版
カップリング曲:髙田三郎/今井邦男 編曲・男声合唱組曲「残照」他
2013年6月 アールミック(ジョヴァンニ GVCS11315) CD
●指揮:松井慶太/東京混声合唱団/ピアノ:前田勝則
カップリング曲:佐藤眞/混声合唱組曲「蔵王」 他1曲
2011年5月 フォンテック (EFCD4178) CD
●指揮:飯森範親/東京混声合唱団/東京交響楽団 (オーケストラ伴奏版)
カップリング曲:三善晃/混声合唱とオーケストラのための「唱歌の四季」他
2012年3月 オクタヴィア(EXTON OVCL-00464) CD
以前、Yahooブログ時代に投稿した「水のいのち」の投稿記事はこちらです。
クリックすれば記事につながります。
↓
では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。 またね・・・