昔CDがまだ高価だったころ、一般のレコード店ではなく、量販店の電気店や、ホームセンター、大型スーパーでのワゴン販売、あるいは駅中の出店などで激安のCDをよく見かけました。安給料のHIROちゃんにとっては、CDプレーヤーでクラシックを聴きたくて演奏者は気にせずに激安CDを良く購入しました。価格は当時480円が最も多かったのですが、PILZの2枚組CDは270円、なんと食品や日用品専門の大型スーパーではONYXや、いろいろな商社の輸入盤などがワゴンにごっそり入っていて1枚100円というところもあり、大量に購入しました。
そんなわけで、HIROちゃんの家の一番手の届かない天井近くのCDの棚には、これらの激安CDが300枚くらい並んでいます。
 その多くは「
PILZ JAPAN (ナガオカのPILZ盤も含む)」、ミカサ通商(株)が輸入販売していた「ONYX CLASSIX」 、そしてNIHON AUDIOが輸入していた、「POINT CLASSICS」 シリーズなどですが、圧倒的にPOINT CLASSICS盤が多くあります。これらの3レーベルだけで冒頭の写真のように143枚あり、その他に150枚以上の激安CDがあります。これらのCDの指揮者は実際には存在しない他の指揮者の演奏に適当な指揮者名を記した、いわゆる幽霊指揮者が多いのが特徴です。
それでも、録音をするくらいなので、スタンダード的な演奏で、一定の評価が出来る演奏も結構多いと思います。

 「ONYX CLASSIX」と、「POINT CLASSICS」の音源は、前記のPILZの原盤からの流用が多いとされているのですが、同じ曲名で聴いてみると確かに演奏時間が同じで曲想も同じと思われるものがあり、同じ音源と思われる演奏でも指揮者名が混同していて指揮者名が違っています。中にはCDジャケット裏側と、表の帯の指揮者名が異なっている、おそまつなものまであります。また、ナガオカのPILZ盤のストラヴィンスキーの演奏では指揮者や楽団の表記が全くないものもあります。(演奏そのものは、まあまあ良いですよ・・・)

 なお、これらの激安CDに記載されている演奏者ですが、指揮者で最も多いのが、
アルベルト・リッツィオと、アルフレッド・ショルツ(アルフレート・ショルツの表記も)、そして、アントン・ナヌートという指揮者です。これら3人は実在の指揮者です。

アルベルト・リッツィオについては実在するらしいのですが、詳細な情報はわかりません。アルフレッド・ショルツはドイツの指揮者であり、音楽プロデューサーということらしいのですが、オーストリア放送協会の放送用録音などを買い取り、「PILZ」というレーベルを設立したようです。Wikipediaや、他のクラシック音楽のホームページなどで、いろいろ調べてみると自分自身が指揮した演奏もあるようですが、他の指揮者名をアルフレッド・ショルツと書き換えた幽霊指揮者としての音源も多くあるらしく、真相はわかりません。

 
アントン・ナヌート(ナヌット、ナヌーと表記のCDもある)(1932-2017)は、あまりにもCD数が多いので、実在するのか、他の指揮者の演奏曲の幽霊指揮者名なのか長い間、謎が多かったのですが、2009年に初来日、紀尾井シンフォニエッタを指揮してHIROちゃんのような「幽霊指揮者/幽霊楽団CDマニア?」達を驚かせました。Wikipediaによると、スロヴェニアの指揮者で、リュヴィヤーナ音楽院で学びスロヴェニア・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者や、スロヴェニア放送交響楽団の音楽監督に就任しています。ヨーロッパではマイナー・レーベルに約150枚位のCDを録音していて、「著名なクラシック音楽の指揮者」とされているようです。
激安CDではリュヴリャーナ放送交響楽団を指揮したものが多く見られます。このリュヴィヤーナ放送交響楽団は、現在のスロヴェニア放送交響楽団のようです?・・ナヌートのCDの中には「フィルハーモニア・スラヴォニカ」という楽団も多く記されていますが、この楽団の実態は良く分かりません。

 現在、東武ランドシステムと、Extonから、スロヴェニア放送交響楽団と、紀尾井シンフォニエッタを指揮した正規盤のCDが発売されていますが、HIROちゃんは購入していません。
アントン・ナヌートのCDは、相当数が手元にありますが、その中では下記のベートーヴェンや、マーラーの曲がなかなか聴きごたえのある演奏だと思います。


ベートーヴェン  ミサ曲ハ長調 作品86
アントン・ナヌート指揮/スロヴァキア・フィルハーモニック管弦楽団・合唱団
このミサ曲ハ長調自体、素晴らしい曲なのですが、現在CDでの発売が少ないので貴重な録音です。合唱もしっかりしていて良い演奏だと思います。


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ベートーヴェン交響曲第5番「運命」/ピアノ協奏曲第1番ハ長調
アントン・ナヌート指揮
リュヴィヤーナ・ラジオ・シンフィニー・オーケストラ
ピアノ:ドゥヴラフカ・トムシク
交響曲第5番は、なかなか堅実な演奏で、協奏曲も好演。


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マーラー交響曲第5番嬰ハ短調
アントン・ナヌート指揮/リュヴィヤーナ放送交響楽団
第4楽章のアダージェットもなかなか美しい。


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 この他では、ドゥヴラフカ・トムシクのピアノとのブラームスのピアノ協奏曲第2番変ロ長調や、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番変ロ長調も好演で楽しめました。

 これら「PILZ」、「ONYX」と、「POINT」のCDでは、幽霊指揮者と思われる演奏が多いのですが、前記のアントン・ナヌートのように、実在する指揮者名をきちんと記した演奏も結構多くあります。中にはクラシック・ファンには知られた指揮者の良い演奏があるので、少しだけ紹介してみましょう。


ベートーヴェン交響曲第3番「英雄
ズデニェク・コシュラー指揮/スロヴァキア・フィルハーモニー

ズデニェク・コシュラー(1928-1995)は、チェコの指揮者。全曲をとおしてバランスのとれた堅実な「英雄」でしょう。

ブルックナー交響曲第4番「ロマンティック」
ミラン・ホルヴァート指揮/オーストリア放送交響楽団


ドヴォルザーク/スラブ舞曲集/スメタナ/売られた花嫁・他
ミラン・ホルヴァート指揮/オーストリア放送交響楽団


ショスタコヴィチ 交響曲第10番 ホ短調
ミラン・ホルヴァート指揮/オーストリア放送交響楽団


 ミラン・ホルヴァート(ホルヴァットとの表記もある)(1919-2014)は、クロアチアの指揮者。ウィーン放送交響楽団の初代主席指揮者などを務めた。NAXOSレーベルから多くの録音が発売されている他、デッカ、グラモフォン、フィリップスの録音もあります。
激安廉価CDの幽霊指揮者名義での実際に指揮をしている一人として良く知られています。なかなか良い演奏が多い。


ベンジャミン・ブリテン/シンプル・シンフォニー
ボフダン・ヴァルハル指揮/スロヴァキア室内管弦楽団

 1950年にスロヴァキア室内管弦楽団を設立した
ボフダン・ヴァルハルは、以前、このブログで上記のシンプル・シンフォニーを紹介したのですが、あらためて手元にある「POINT CLASSICS」のCDをみたらバッハのチェンバロ協奏曲や、ハイドンのチェロ協奏曲第1番、第2番などの伴奏としてスロヴァキア室内管弦楽団の演奏が7枚もありました。これらはなかなかの好演です。

 クラシックに詳しい幽霊指揮者マニア?の中には、どの幽霊指揮者の演奏が実際には誰で、どこの楽団なのかを、演奏時間や演奏スタイルなどから調べている方もおられますね。
HIROちゃんの持っている激安CDで、霊指揮者と思われる何人かの名前を書いてみましょう。もしかしたら、この中には実在する指揮者がいるかもしれませんね・・
これらの本当の指揮者は誰で、楽団はどこの楽団なのだろう?(今回は楽団名は書きませんでしたが・・・)

ヘンリー・アドルフ
ユージン・デュヴィエ
イーゴリ・ゴーゴリ
カルロ・パンテッリ
ウラジミール・ペトロショフ
ペーター・スターン
アレキサンダー・フォン・ピタミック


ばったもんCDともよばれる激安のクラシックCDですが、聴いてみるとなかなか良い演奏もあるので楽しむことも出来ます。
では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。