指揮者ウィレム・メンゲルベルクと言えば、今年は生誕150年、没後75年の記念の年です。・・残された録音も全てSP時代のモノラル録音・・・「もう過去の指揮者で音楽として鑑賞できる音質ではない」と、おっしゃるクラシック・ファンも多いのですが、HIROちゃんにとっては、今でも時々LPレコードを取り出して聴く指揮者の一人です。今から約50年前、大学生の時にアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団とのチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」を初めて聴いた時の感動は、今もって変わりません。
テンポ・ルバートが目立ちますが、弦の何とも言えないビブラート、他の演奏では決して聴くことの出来ない、強烈なポルタメントを多用した濃厚な感情表現。第1楽章の前半の体がとろけそうな美しいメロディーの歌わせ方・・・「悲愴」の名盤中の名盤!といって良いでしょう。
メンゲルベルクの演奏を聴き始めた1970年代の頃ですが、日本フォノグラム盤ではなく、当時は日本ビクターからフォンタナ盤として1枚1,200円で「メンゲルベルクの芸術」として発売されていて、ベートーヴェンの交響曲第4番、第5番、第8番、第9番「合唱」は持っていたのですが、後に全曲を聴きたくて、購入したのが下の写真のLPレコード8枚組12,000円の交響曲全集(日本フォノグラム・PHILIPS盤PC5531-38(M))、輸入メタル原盤からのプレスで古い録音ですが当時の演奏スタイルや、ライブ録音での雰囲気は十分に聴き取れます。
この録音は1940年の放送用のライブ録音で、聴衆の拍手の他、曲によっては開始前に指揮棒を譜面台に「カチカチッ!」とたたく音まで収録されています。当時のライブ録音としては十分な音質と言えるでしょう。
全曲ともチャイコフスキーでみせたテンポ・ルバートや、弦のビブラート、そして強烈なポルタメントを多用した濃厚な感情表現は変わりありません。正にメンゲルベルク独特の世界・・・これに更にダイナミックさや重厚さ、そしてライブ独特の緊張感と興奮の爆発的な表現・・・
確かに今では古い職人気質丸出し?の大げさな演奏かもしれませんが、大きな感動を得ることが出来る演奏であることには間違いありません。個人的には特に奇数番号の第3番、第5番、第7番、そして第9番「合唱」が聴きごたえがあり感動的です。その中でも第5番と第9番「合唱」が名盤だと思います。
メンゲルベルクのベートーヴェンの録音は、この他にもコンセルト・ヘボウ管弦楽団との1937年の第5番や、1938年の第8番、第9番「合唱」、ニューヨーク・フィルハーモニックとの1930年の第3番「英雄」、1942年のベルリン放送交響楽団との客演での第7番などの音源も架蔵していますが、全集として聴くなら、やはり1940年のライブ盤でしょう。
ベートーヴェンではありませんが、久しぶりにまた、メンゲルベルクのチャイコフスキーの「悲愴」や、バッハの「マタイ受難曲」でも聴いてみようかな・・・