※2021/03/01 13:45
ピアノ伴奏版による演奏の投稿記事を末尾の番外編②に追加しました。
はじめに
前回のその②で★の評価を一部、修正追加しました・・・
今回は前回に続きモーツアルトのミサ曲ハ長調K317「戴冠式」の名盤・名演奏についての3回目の投稿です。ただし、前回書いたように名盤といってもHIROちゃんの好みの演奏ということでご理解ください。ライブラリーとして架蔵しているLPレコードやCDを聴いて勝手に評価したものです。
評価は前回と同様の★の数で表す適当な目安です・・・
★★★★★~★★★★(決定盤)
★★★(推薦盤) ★★(準推薦盤) ★(注目盤)
■トン・コープマン指揮/アムステルダム・バロック管弦楽団、同合唱団 他
録音 1994年
★(注目盤)
古楽器を使ったピリオド奏法。軽快な歌いまわしが多いためか、宗教曲としてのミサ的なものはあまり感じない演奏。特にクレドでは荘厳さなどはあまりなく、軽快に曲が進んでいきます。戴冠ミサの中では独特の演奏で評価に悩む演奏です。秀演なのか・・それとも・・・とりあえず★を1個付けておこう。
なお、このCDのカップリング曲は最高! 「アヴェ・ヴェルム・コルプス」「ヴェスペレハ長調K339」
■ニコラウス・アーノンクール指揮/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
アルノルト・シェーンベルク合唱団 他 録音1986年
★★(準推薦)
キリエ、グローリアを聴いていたら、まあ普通のテンポ・・・これは意外にスタンダードに近い演奏かと思ったら、クレドのテンポ設定には驚き・・・「ああ、やっぱりアーノンクールだ!」・・・
かなり衝撃的な早いテンポと動き・・・やはり所々にアーノンクール独特のスタッカートの強調や、ダイナミックさが見られますね・・
しかし、アニュス・デイのソプラノ独唱はあまり癖がなく、端正で聴いていてなかなかいいです。アーノンクールのモーツアルトの交響曲の解釈は何故か不思議な感動が得られるのですが、この戴冠ミサも不思議な感動ですね。 これも評価に悩む演奏ですが・・・
■ペーター・ノイマン指揮/コレギウム・カルツシアヌム
ケルン室内合唱団
パトリツィア・クヴェッラ(S)、ラ・グレネヴォルト(A)
クリストフ・プレガルディエン(T)、ランツ=ヨーゼフ・セリグ(B)
1988年録音
★★★★(推薦/決定盤)
この演奏は、EMI原盤でVirgin Classics から発売されていた5枚組BOXの「モーツアルト ミサ曲集」の中の1枚。ペーター・ノイマン指揮によるモーツアルトのミサ曲はレクイエムも含め全作品が録音されていて「ミサ曲全集」としてEMIから発売されましたが、国内ではミサ曲の人気がないのでしょうか、ノイマン指揮によるモーツアルトのミサ曲は1曲も発売されませんでした。しかし、この「ミサ曲集」は正に「知られざる名盤!」
やや遅いテンポですが、独唱陣は癖がなく端正、合唱も素晴らしく文句なし。オーケストラは古楽器による演奏です。一言で表せば素直で純粋な演奏、アーノンクールのような刺激性は全くありません。
■ペーター・ノイマン指揮/コレギウム・カルツシアヌム
ケルン室内合唱団
パトリツィア・クヴェッラ(S)、ラ・グレネヴォルト(A)
クリストフ・プレガルディエン(T)、ランツ=ヨーゼフ・セリグ(B)
★★★★(推薦/決定盤)
この演奏もノイマン指揮ですが、前記の演奏と同じ音源のようです。こちらはEMIの10枚組の「ミサ曲全集」からの1枚ですが、前記のVirgin Classics 盤とはだいぶ聴いた印象が異なります。
このCDでは戴冠ミサのために作曲されたと考えられる「教会ソナタ第16番K329/317a 」が、グロリア/Gloria 、クレド/Credo の間に収められた形で録音されていることです。モーツアルトの教会ソナタは、ザルツブルク大聖堂での典礼に奉ずるための単一楽章の演奏時間3、4分程度の器楽作品で、ミサの合間に演奏された曲とされています。 教会ソナタを挟んでも全く違和感はありません。オーケストラとオルガンだけの教会ソナタを曲間に入れることにより、交響曲的な響きや、軽快さ、清々しさなどが加わり、次に演奏するクレド/Credoが、より引き締まった感じになり、曲の品格が大きくなった感じに聴こえます。
■メレディス・デイヴィス指揮/BBCノーザン交響楽団
リーズ・フィルハーモニー合唱団
ジャネット・プライス(S)、ケヴィン・スミス(カウンター・テノール)
アンソニー・ロルフ=ジョンソン(T)、グラハム・タイトゥス(T)
カップリングされていたジョン・プリッチャード指揮によるベートーヴェンの「ミサ曲ハ長調」を聴きたくて購入したCDですが、戴冠ミサでのメレディス・デイヴィスのソリストの起用が異色・・アルトに男性のカウンター・テノールを採用すると共に、なぜバスではなくテノールを2名にしているのか理解できません。はじめは表記のミス・プリントかと思ったのですが、聴いてみるとテノール2名の声です。4人のソロ歌唱部分になると、かなり違和感があります。特にカウンター・テノールの声が目立ちすぎバランスも悪く、バス・パートのテノールの声はかなり小さい。なぜこのようなソロの構成にしたのか理解できません。一度聴けば十分・・・
■ニコル・マット指揮
南西ドイツ・プフォルツハイム室内管弦楽団
ヨーロッパ室内合唱団、他
★★(準推薦)
Brilliantモーツアルト大全集BOXの中の1枚。かなり少人数の合唱であることがわかりますが、全曲をとおして細かいところまで指揮者の指示が見られる細やかな表現が素晴らしい。荘厳さ、華やかさ、力強さを感じる演奏です。
他の演奏と比べると、キリエとアニュス・デイは遅いテンポですが、だらけた感じはしません。・・・
【 番外編① 】
■Ernst Hinreiner 指揮/Mozarteum Chorus and Orchestra 他
まだCDが高価だった30年位前に1枚480円位でホームセンターや駅の構内で売られていた Point Classics シリーズから発売されていたMade in Germany のCD。店によっては1枚300円位のところもありました。
当時はたくさん売られていてHIROちゃんちには、この類のCDが100枚以上あります。中にはきちんとした指揮者や楽団の演奏もありますが、多くは幽霊指揮者か、出どこ不明の音源が多い。
この戴冠ミサは独唱者の名前も表記してあり、演奏そのものは、ある程度の水準の演奏と言えますが、独唱陣はイマイチ・・おすすめは出来ません。
■エルンスト・シンライナー指揮/カメラータ・アカデミア・ザルツブル 他
これも2枚組で250円から500円程度で売られていた、PILZ JAPAN のCD。
オーケストラの名前は違っていますが、前記のPoint Classics シリーズのものと音源は同じようです。音はこちらのPILZ 盤のほうが良い。
なお、もう1枚のグロスマン指揮/ウィーン少年合唱団のモーツアルト「レクイエム」は、なかなかの好演です。
【 番外編② 】
■鈴木良朝 指揮/あひる会合唱団/独唱:団員
この戴冠ミサはピアノ伴奏による全曲です。純粋に合唱を楽しむにはピアノ伴奏版も良いものです。このCDは2005年、水戸芸術館コンサートホールATMで行われた「あひる会合唱団」の第44回の定期演奏会の録音。鈴木良朝 氏の「あひる会合唱団」での指揮活動50年記念演奏会での自主制作による2枚組のCDです。
ピアノ伴奏であり、独唱者4名も団員のアマチュアですが、戴冠ミサの魅力を十分に伝えています。 ただ、男声パートがやや弱いのが残念か・・・
なお、この定期演奏会では、水戸市出身で鈴木氏とも親交が深かった作曲家の池辺普一郎 氏の客演指揮による自作の「東洋民謡集」「人体誌抄・抄」の演奏が録音されていて名演だ。
… あひる会合唱団と鈴木良朝 氏について …
あひる会合唱団は1951年に水戸市民合唱団として創立、その後「あひる会合唱団」に改称。現在も水戸市を中心に活動する一般のアマチュア混声合唱団。特にルネッサンス時代のアカペラ曲をはじめ、モーツアルト、フォーレ、ケルビーニ、ラターなどの宗教曲を得意としている他、現代の邦人作品、ポピュラー・ソングまで幅広い作品に挑戦している。
指揮者の鈴木氏は長年、中学校の英語、音楽の教員、小学校の校長を歴任後、茨城県文化課課長、教育長として県の教育行政・文化向上に尽くされた。
音楽活動として中学校教員時代に茨城交響楽団のティンパニ奏者から常任指揮者となり、その後は「あひる会合唱団」の常任指揮者として亡くなるまで務めました。
昭和49年に茨城県で開催された国民体育大会開会式での式典音楽を担当、県内の多くの小中学校の校歌や、合唱曲の作曲家でもある。
あひる会合唱団のホーム・ページはこちらです。
戴冠ミサ曲は時間にして30分以内の曲なので、多くの音源を聴き直すのも苦痛はなく、あらためてこの曲の魅力に感動しました。しかし★★★★の決定盤が最高で★★★★★は付けませんでした。
CDや、LPの架蔵も1万枚を超え、整理が悪いため、もしかしたら、まだ2、3枚の戴冠ミサの音源はあったかもしれません・・・
これまでの戴冠ミサK317の投稿記事は、こちらです。
モーツアルト/戴冠ミサ曲 ハ長調 K317の名盤・名演奏 その①
モーツアルト/戴冠ミサ曲 ハ長調 K317の名盤・名演奏 その②
「レクイエム」ばかりでなく、ぜひ、戴冠ミサ曲も聴いてみてください。
では、今日は、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。 (^^♪