久しぶりに古典管のコンパチブル・アンプの製作を始める前に、今回は直熱3極管71Aと、12Aが挿し換えできるコンパチブル・アンプを紹介します。

 

  71A(171A)12A(112A)ですが、真空管の規格表では、アンプの設計上、重要な最大プレート損失の表記がどちらもありません。ですからアンプの設計にあたっては規格表の動作例を参考に回路設計をしていきます。(どちらもシングルでの動作例のみしか書いてありません)

 

71Aの主な動作例

  Ep:  90V           135V           180V

     Ip: 10mA        17.3mA         20mA

   -Eg: -16.5V        -27V         -40.5V

    Rk:  1600Ω   1700Ω     2150Ω

  RL: 3kΩ       3kΩ    4.8kΩ

  Po: 0.125W       0.4W          0.79W

 

12Aの主な動作例

  Ep:  90V           135V           180V

     Ip:  5mA         6.2mA          7.7mA

   -Eg: -4.5V         -9V           -13.5V

    Rk:    -              -                -

  RL: 5kΩ       9kΩ    10.65kΩ

  Po: 0.035W       0.13W         0.285W

 

  と、上記のように、出力管といっても71Aは最大出力が約0.8W12Aは、わずか約0.3Wという小出力で、どちらもラジオ球、日本では並四ラジオの出力管として12Aが多く使用され、マグネチック・スピーカーを鳴らしていました。

  動作例を見てもわかるように、71A12Aは、かなり特性の異なった出力管ですが、プレート電圧が最大でも180Vと低く、フィラメントの規格がどちらも5V/0.25Aで元々は電池管です。ベースのソケットもUXでピン接続は同じ・・・共通点もあり、プレート電圧・電流と、バイアス電圧を上手く調整すれば、多少、動作点は違っても兼用のアンプの製作は可能です。その場合、注意しなければならないのは、最大プレート損失を超えないことですが、前記のように規格表に記載がありません。そのため動作例から71Aの場合には180V×20mA=3.6W12Aは180V×7.7mA≒1.4Wを最大プレート損失(Pd)として回路設計をすれば安全といえます。(若干のオーバーは大丈夫でしょう?)

 

 これまで制作した71A/12Aの兼用アンプは6台作りましたが、それらの中から2台のアンプを紹介します。

 

 

上の写真は、オールST管で小型に組んだCR結合の兼用アンプです。前段の6Z-DH3Aのヒーターと、出力管のフィラメント点火用の巻き線が共通ですが、特に問題はありません。ハムもほとんどなしです。今作るなら電源トランスはゼネラルトランス(旧ノグチ)のPMC-100Mがヒーター巻き線も0-5-6.3V/2Aが3回路あり、またB電圧も100mAで、200V、240V、280Vのタップがあるので、これを使うのが最適でしょう。

 

  このアンプでは71Aを基準管として、12AはRkの抵抗値の切り替えによるバイアス電圧の調整も考えましたが、単純にB電圧を下げることで、12Aのプレート電圧を下げただけです。若干、Ep-Ipカーブから見た-Egの動作点から若干はずれていますが、程度から考え気にしません。出力トランスの1次側は71Aは4KΩですが、12Aの場合には2次側の4Ωに8Ωのスピーカーをつなぐことで1次側を見かけ8KΩとして使用します。(8KΩは動作例から見ると少し低いのですが問題なしです)

 

 前記のように71Aでも12Aでも小出力のアンプですが、非常に澄んだ音で、特にクラシックではヴァイオリン曲などの室内曲(ヴァイオリン・ソナタや弦楽四重奏曲など)を聴くにはもってこいのアンプといえます。

 現在、このアンプはクラシック音楽仲間の友人に貸し出し中です。友人のタンノイ/オートグラフでベートーヴェンなどの弦楽四重奏を聴きたいとのことでしたが、どんな音を奏でているのでしょうか・・・

 

このアンプの回路図は下記のとおりです。

 

 

 

  下の写真のアンプはトランス結合の71A/12A兼用アンプです。

 写真ではナス管の171Aを挿しています。171AはRCA社のものです。

出力トランスの1次側は7KΩで71Aには若干高め、12Aには若干低めですが、その中間で良しとします。B電源のチョーク後のケミコン容量33μFは少し少ないですね。今後、容量を増やすことを考えます。

 

 

 

 

このブログでは、同じ回路のアンプの製作を、おすすめしているものではありません。また、アンプの試聴結果は、個人的な感想です。したがって、このブログ内記事の回路図等は、参考にしないで下さい。同じ回路のアンプを、お作りになるのは自由だとは思いますが、全て自己責任の上、製作くださるよう、お願いいたします。投稿者としての責任は一切持ちません。真空管アンプ製作は、高電圧等による感電死や、火災、火気事故、シャシー加工時での怪我など、注意が必要です。安全第一で楽しいアンプ作りをしましょう。

 

そろそろ新規のコンパチブル・アンプのシャーシの製作にとりかからないと・・・

先に進みませんね・・・

では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。 (^.^)/~~~