2A3シングル・アンプの改造(まとめ/最終回)
 
 ※2016/10/09 19:55  追加投稿
  改造後の回路図で電源部の電解コンデンサーの容量値の
  表記に誤りがありましたので修正しました。
 ※2016/10/12  追加投稿
    今夜、無事、アンプがコロッケさんに届きました。末尾
  からコロッケさんの記事を見てください。
 
  ブロ友のコロッケさんがリサイクル店で購入した「2A3シン
グル・アンプ」の投稿記事にコメントを入れたきっかけで、アン
プを宅配便で送っていただき、診断をすることになったのですが、
結局、大きな問題は無かったものの、気になる点が多くあり、改
造して全て作り直すことにしました。これまでの経過については、
末尾のアドレスから投稿記事を読んでいただくとして、改造が完
了し、長時間の通電テスト、試聴の結果、私なりにある程度満足
のいくアンプになりましたので、改造後の最終回路図等について
紹介します。
 
 元々は、整流管に80を使用していました。「80だと多少ア
ンプの総電流に不足があるのでは・・・」とのコメントを入れた
のが、診断のきっかけでした。しかし、プレート電流を少し少な
くした軽い動作での回路でしたので、80でも全く問題はありま
せんでした。
 
イメージ 1
 
 
 改造前の回路図については、既に紹介済ですが、配線を見なが
ら書き下ろしたのが下記の回路図です。
チョーク・コイルは、メーカー不明で、規格もわかりませんが、
見た目と両端の電圧等から判断すると、電源トランスや、出力ト
ランスと同じノグチトランスのPMC-518M(180mA10H)
のようです。
 
イメージ 2
 
※訂正:上記回路図で12AX7の第1ユニットのプレート/シャーシ間電圧が130V
    と表記されていますが、ここは約125Vで、回路図の右側の第2ユニット
    のカソード/シャーシ間の電圧が130Vです。SRPP回路の場合には、
    通常、ここの電圧が供給電圧の1/2になります。
 
 上記の回路図のように12AX7のSRPPドライブ回路による
シンプルな回路です。 一般的にはSRPPドライブ回路の場合、
片側ユニットのカソードに高電圧がかかります。(この回路の場
合130V)そのために真空管のヒーター/カソード間の耐圧が問題
となります。同じ回路で6SL7-GTを使うと電圧は多少変わるも
のの、6SL7-GTのヒーター/カソード間の耐圧規格は90Vです
ので、このままの回路では真空管が駄目になることがあります。
 幸い、12AX7ヒーター/カソード間の耐圧規格は180Vと高
いために大きな問題にはならないと思いますが、ここは安全のため、数十Vのヒーター・バイアスをかけるのが普通です。
 
ヒーター・バイアス回路の追加と整流管の検討
 
 そのため、改造にあたっては、ヒーター・バイアス回路を追加
することにしました。
なお、整流管には80を使用していたので、ここはオクタル・
ースのソケットに取り替え、5U4Gなどの整流管に変更を考
たのですが、せっかく80があるので、同じUXソケットで5U4
と規格が同じ5Z380の代わりに挿してみたところ、2A
の動作は、Ep275V、Ip約56mAで、Pd=15.4Wとなり
若干、2A3の最大プレート損失(Pd)15Wをオーバーします。
この程度ならあまり問題はないのですが、気分的に良くありません。
 
そのため、整流管後のチョーク前にB電圧の微調整と、ケミコン
への突入電流防止のため51Ωを追加しました。この抵抗は80
や、5Z3のような直熱整流管の保護抵抗にもなります。
その後、多少電源部を強化し、最終の回路としましたが、ヒータ
ー・バイアスの説明、及び電源部の強化についての説明は、末尾
のアドレスからこれまでの投稿記事を読んでいただければ幸いで
す。
 
 下の写真は整流管に5Z3を挿した時の写真です。写真では、
多少、電源トランスに近くに写っていますが、実際には間隔もあ
り、放熱等の問題はありません。
 
イメージ 3
 
  ----- 改造後の最終回路です。-----
 
イメージ 7
 
 回路図を見ていただければ、おわかりのように増幅部については、改造前と全く同じで回路定数等の変更はありません。抵抗などの部品も取り外したものを、そのまま使用しましたが、電源部についてはヒーター・バイアス回路の追加等により多少、家にあったあり合わせの抵抗やコンデンサーなどを追加しています。
 
 ※2016/10/09 19:55 追加投稿
       改造後の回路図で電源部の電解コンデンサーの容量値の
    表記に誤りがありましたので修正しました。
     B電源平滑回路 350V22μFは、350V33μFでした。
   上記の回路図は、600V 0.22 フィルム・コンデンサーの
   追加とあわせ修正しましました。
 
 
 ----- 2A3の動作確認について -----
 
  今回の改造による2A3の動作は下記のとおりです。
 
 【 5Z3使用時 】
     Ep:260V     (305V-45V)
   Ip:54.9mA (45V÷0.82KΩ)
   Eg:-45V
   Rk:820Ω
   RL:2.5KΩ
   Pd:14.3W   (260V×54.9mA)
 
 【 80使用時 】
  Ep:253V     (295V-42V)
  Ip:51.2mA (42V÷0.82KΩ)
  Eg:-42V
  Rk:820Ω
  RL:2.5KΩ
  Pd:13W       (253V×51.2mA) 
 
    と、なっていて2A3の最大プレート損失規格(Pd)の
 15Wの範囲内になっています。
 5Z3を使用した場合には約3.5Wの出力が得られます。
 80を使用した場合には5Z3の時より若干、出力は小さく
 なりますが、聴いた感じでは、大きな差はありませんので、
 80を使用したほうが、2A3の動作はかるくなっています
 ので、多少は2A3の長寿命化になるかもしれません。
 
 ハムは、スピーカーに耳を押し付けて、やっと聴こえる程度
 で、実質ノーハムです。部品配置の関係で、音量調整のVR
 が100V電源側にあるので、ここからごく僅かのハムを拾っ
 ているかもしれません。通常、VRは、この配置なら右側に
 するのがベター。しかし、2A3は元々、ハムの少ない真空
 管なので交流点火で十分です。
 
 参考まで、改造前のシャーシ裏の配線状態と、改造後の配線
 状態を写真に撮りました。改造前の配線はリード線を長くし
 た空中配線で、いわゆる「ジャングル配線」この配線は回路
 の変更や実験にはやりやすいのですが、今回の配線を見ると
 かなりゴチャゴチャ感もあることから、ほとんどの抵抗等も
 取り外し、配線は全て初めからやり直しました。
 取り外した抵抗等の中にはかなりリード線が短い物もあり、
 半田付けがモリモリ状態になってしまったところもあるため
 あまりきれいな配線には出来ませんでした。
 
 改造前(どなたの配線か全くわかりません)
 
イメージ 4
 
 改造後私、HIROちゃんの配線です。電源部の変更によ
      り少し抵抗やコンデンサーが増えています。配線の
      色別は、独自でJISの5色法ではありません
 
イメージ 5
 
 ----- その他、少し気になるところ -----
 
  今回の改造で、家にストックしてある部品等の関係で、十分
 改造出来なかったところもあります。これについては、アンプ
 を改造した責任上、不都合が生じた場合には再度、修理等を、
 させていただきます。
 
 ①このアンプの2A3のハムバランサーでは100Ω 1.5Wの巻
  き線のVRが使用されていましたが、個人的には、2W以上
  で100Ω以下(30~50Ω位)が適当かと思っていますが、
  手持ち品が無かったので、そのまま使用しました。
 (2A3ならハムバランサー無くでも抵抗2本でもOKです)
 
 ②シールド線については、もう少し太い物を使用したかったの
  ですが、手持ちが少なく、改造前のものをそのまま使用しま
  した。
 
 ③個人的には2A3は、出力トランスの1次側Zpは、2.5K
  Ωが標準ですが、ここは私の勝手な好みで3.5KΩに変更した
  かったのですが、出力トランスの3.5KΩのリード線が短かっ
  たので2.5KΩの標準としました。(だからリード線タイプの
  トランスは嫌いなのです)
 
 ④ソケットの方向が統一されていません。ソケットの縦、横の
  取り付けは、好みもあるのですが、このアンプでは整流管、
  出力管のソケットは、同じ横付けなのですが、整流管だけが
  フィラメント側が180度、逆になっています。そのためか
  このアンプでは、ソケットの表のフィラメント側にマジック
  で●印が書かれていたので、そのままで配線しました。
  UXソケットは、どの角度でも入ってしまうので、球を挿す
  時には十分注意が必要です。
  また、2A3の左側(真ん中のソケット)の挿し込みが少し
  ゆるので若干接触が悪いです。多少、接触部分を締め付け
  ましたが、あまり締めるとソケットを壊すので、適当なとこ
  で止めました。
 
 ⑤電解コンデンサー(450V22μF)が不良のため、500V
  22μFに交換しましたが、手持ちが無く中古品を使用しまし
  た。これによる大きな問題は無いと思われますが、不具合が
  出た場合にはあらためて修理します。
 -------------------------------------------------------------
 イメージ 6なお、最初のコロッケさんから
 のコメントでの質問で整流管の
 80の予備が欲しい。オークシ
 ョン等でKX-80というのが
 出ているが互換性があるのです
 か?との質問もあり、同じもの
 と回答したものの、この改造で
 80のご購入を逃してしまわれ
 た事のお詫びと、この改造で十
 分に楽しませていただいたお礼に、整流管の5Z3RCA新品
 元箱入り)をアンプと一緒に送りますので、お使いください。
 良く2A3シングル・アンプに使用される5U4Gと同じ規格
 です。UXのため5U4Gより、古い球ですが、問題なく使用
 できます。購入するとなると多少入手が困難な球ですので大切
 に使ってほしいと、思います。(チェック済です) 
 
 
 出力管が同じRCAの2A3ですので、整流管もRCAだと、
 少しは見た目も楽しめるかもしれません。
 
 アンプをお返しするにあたっては、注意事項等、守っていただ
 きたいことなどを記した「HIROちゃんがボケるまで有効な
 修理保証書」も送りますね~~~~~
 
 あっ・・・忘れていました。今日1日だけ通電し、異常が無い
 ことを再確認した上で、明日、宅配便でお返しします。楽しみ
 にしていてくださいね・・・
 
  ※2016/10/09 18:30  追加投稿
 
  上記の「HIROちゃんがボケるまで有効な修理保証書」
  あとから、この投稿記事に追加投稿し紹介します。後で見て
  くださいね。タイトルを付けての新たな投稿はしません。
 -------------------------------------------------------------
 
 これまでの参考記事です。
 このアンプの診断・改造に関するこれまでの投稿です。
 アドレスをクリックすると記事につながります。
 
 2A3シングル・アンプの診断/改造 ①
 2A3シングル・アンプの/改造 ② 配線終了
 2A3シングル・アンプの/改造 ③ 電源部強化
 2A3シングル・アンプの改造/トラブル発生
 
 ----------------------------------------------------------
 ※2016/10/11 追加投稿です・・・・
     今日、宅配便でコロッケさんにアンプを送りました。
 
     今回の保証書で~~~す。爆  笑
 
      ------ 修理保証書 -----
 
■修理保証期間   HIROちゃんの頭がボケてきてアンプ
          作りを止めるまで。 
 
■修理保証の内容
   通常の使用で設計・製作上の問題から故障した場合には、原則、
   無償で修理します。
   ただし真空管、電源トランス、出力トランス、チョーク・トラ
 ンス等の交換等が伴う修理の場合には、使用者の負担となりま
 す。なお、その他の部品交換の場合には相談の上、決定するも
 のとします。
                  修理者 HIROちゃん
 
※2016/10/12 23:45  追加投稿
 本日、無事アンプがコロッケさんのところに届きました。
 コロッケさんの投稿です。 ↓
 では、今日は、このへんで・・・HIROちゃんでした。