ビーバー/レクイエム イ長調(15声のための)
レクイエムというと、クラシック・ファンの間では未完ではあるもののモーツアルトのレクイエムをはじめ、ケルビーニ、ベルリオーズ、ドヴォルザーク、ヴェルディ、その他、ラテン語によるものではありませんが、ブラームスの「ドイツレクイエム」、近代ではフォーレやデュリュフレのレクイエム、ブリテンの「戦争レクイエム」などが有名でしょうか・・・
これまで、このブログではフォーレ、ラター、ヴェルディ、ケルビーニ(2曲)、ヴィクトリアのレクイエムについて投稿してきましたが、モーツアルトや、その他の作曲家によるレクイエムも順次、紹介していきたいと思っています。
さて、今回紹介するレクイエムはビーバーのレクイエムです。
ハインリヒ・ビーバー(1644~1704)はオーストリアの作曲家ですが、ヴァイオリニストでもありました。曲としては「ロザリオのソナタ集」と呼ばれるヴァイオリン曲が有名ですが、宮廷音楽家として宗教曲も多く作曲しているようです。
ビーバー作曲によるレクイエムは「ヘ短調のレクイエム」もあるようですが、私は聴いていません。今回紹介するのは「レクイエム・イ長調(15声のための)」です。ザルツブルクで1692年ころに作曲されたようです。
私のこの曲のライブラリーは下記の2枚だけです。

グスタフ・レオンハルト指揮
オランダ・バッハ協会合唱団&管弦楽団
(ドイツ・ハルモニア・ムンディ盤)

トン・コープマン指揮
アムステルダム・バロック管弦楽団&合唱団
(エラート盤)
このビーバーのレクイエムは、レクイエムでありながら長調で書かれていて、下記の7曲からなっています。
1.イントロイス Introitus
2.キリエ Kyrie
3.セクエンツィア Sequenz
4.オッフェルトリウム Offertorium
5.サンクトゥス Sanctus
6.アニュス・デイ Agnus Dei
7.コンムニオ Communio
モーツアルトのレクイエムなどは、死に対する暗い悲しみや、激しさを強く感じますが、このレクイエムは、長調で書かれているためか、曲の暗さや激しさ、深さはあまり感じられず、淡々とした流れの音楽となっています。死に対する恐怖感ではなく幸福感的にも聴こえてきます。特に第3曲のSequenz、第4曲のOffertorium、第5曲のSanctusでは、トランペットの使い方がとてもユニークで華々しく活躍します。ちょっと聴いているとレクイエムではなく、単なる明るいバロック音楽と錯覚するのでは・・と、私の個人的な感想としては若干、レクイエムとしては違和感がないわけではありません。しかし、それがかえって死者の栄光を讃える意味では良いのかもしれません。Communioの終曲でも明るい長調の和音で曲を締めくくります。
このレクイエムはバロック音楽が好きな方にとっては、たまらなく魅力ある曲ではないでしょうか・・・
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では、また・・・・HIROちゃんでした。