古典管47シングル・アンプの製作 ③
(最終回) 47/3Y-P1兼用 シングル・アンプ
 
今回、47/3Y-P1兼用のシングル・アンプが完成し「気まぐれ日記」の書庫で簡単に報告しましたが、今日は最終的に電圧等を調整しましたので回路図も含め、アンプの詳細についてあらためて紹介します。
 まずは完成したアンプの姿から・・・・
今回は3種類の大きさのST管を横一線に並べた配置としました。
 
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左から整流管の80、出力管47、ドライブ管の6Z-DH3Aです。これが、このアンプの標準使用真空管ですが、今回のアンプは、ブログのお仲間の「Yさんです」さんから頂いたRCAの半波整流管81も使用できるように設計しました。
さらに、このアンプは47と同じソケット接続で同じ2.5V管の傍熱管3Y-P1と挿し替えが出来るコンパチブル・アンプとして設計しました。3Y-P1は5球スーパー・ラジオで多用された6Z-P1と同じ規格の出力管です。
 
大型の整流管81を挿した時の47シングル・アンプと、整流管に12Fを挿し、出力管に3Y-P1を使用した時の写真は末尾に掲載します。
挿し替える真空管の種類により、見た目が大きく変化するばかりでなく、音の違いも楽しむことが出来るコンパチブル・アンプになっています。
 
■電源部について
使用した電源トランスは壊したアンプから取り出した中古品の再利用で、山水のPT-80Bを使用しました。
このトランスのB電源はブリッジ整流用で約80mAのトランスですが、今回は整流管に8112Fも使用できるようにするために半波整流としました。80(80K)、12F(12FK)、80BKは5V管ですが、81を使用するときは7.5V管のため11.3Vから抵抗をとおして電圧を7.5Vにして使用します。(81のフィラメント規格は7.5V/1.25Aですので11.3Vから7.5Vに下げるのは計算上、(11.3V-7.5V)÷1.25A=3.04Ωとなるので手持ちの2.2Ω+1Ω=3.2Ωとしました) テスターで電圧を計ったらぴったり7.5Vになっていました。
フィラメント電圧は切替スイッチで切り替えます。
なお、80、80Kは全波(両波)整流管なので整流管ソケットの2番ピン、3番ピンの2つのプレートをつないで半波整流用として使用します。
 
47を出力管として使用するときは通常は80又は傍熱管の80Kを使用しますが、81でもOKです。ただし81は元々、開発年度も古く、高電圧用(700V)ということも関係しているのか、81だと整流後の電圧は、かなり低く出ます。
 
3Y-P1を出力管として挿し替える時は、整流管は12F(12FK)80BKを使用します。そうすると全ての真空管の高さが揃い、見た目のバランスが良くなります。
なお、3Y-P1を使用する時は、B電圧はスイッチで切り替えて電圧を下げて動作させます。
 
整流管の80(80K)をコンデンサ・インプットで使用するの場合、コンデンサの容量は規格上、10μFですが、80BKは8μF、12F(12FK)81は僅か4μFになっていますが、今回は80に合わせ10μFを使用しましたが、この程度なら特に問題はないでしょう。
 
・・・出力管の動作・・・
■47の場合
 47は通常、Ep:250V、Ip:31mA、Isg:6mA、RK:450Ω、RL:7KΩが動作例として規格表に掲載されていますが、今回は電源トランスの容量が小さく、また半波整流で電流も多くとれないため、プレート電圧を少し下げると共に、電流も抑えました。そのためにRKは560Ωとしました。
 
1)整流管に80(80K)を使用した時の47の動作
Ep:231.5V(250V-18.5V)
Ip+Isg:33mA
Eg:-18.5V
と軽い動作となっています。出力は約2Wくらいです。
 
2)整流管に81を使用した時の47の動作
Ep:187V(202V-15V)
Ip+Isg:26.8mA
Eg:-15V
となっていて、81を使用した時は電圧が大きく下がります。
81の効率が低電圧では、かなり低いことがわかります。
 
■3Y-P1の場合(整流管は12F使用時の動作)
   Ep:159.4V(168V-8.6V)
   Ip+Isg:15.4mA
   Eg:-8.6V
   となっています。この時の出力は約0.9Wくらいです。
   なお、規格表では3Y-P1は出力トランスの一時側Zpが
   12KΩとなっていますが、今回は47と同じ7KΩで良しと
   します。
 
■回路図について
 
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このブログでは、同じ回路のアンプの製作を、おすすめしているものではありません。また、アンプの試聴結果は、個人的な感想です。したがって、このブログ内記事の回路図等は、参考にしないで下さい。同じ回路のアンプを、お作りになるのは自由だとは思いますが、全て自己責任の上、製作くださるよう、お願いいたします。投稿者としての責任は一切持ちません。真空管アンプ製作は、高電圧等による感電死や、火災、火気事故、シャシー加工時での怪我など、注意が必要です。安全第一で楽しいアンプ作りをしましょう。
 
ドライブ管には高μ管の75を使用する予定でしたが、手持ちの予備の本数が2本しかないので、6Z-DH3Aを使用しました。この球は検波・増幅用の2極3極管ですが、3極部の規格はオーディオで良く使われる12AX7の片ユニット(1/2)とほぼ同じ規格の真空管です。
6Z-DH3Aは、「大量生産されたラジオ球でノイズも多く、オーディオでは使い物にならない駄球・・・」 と仰るマニアの方もおられる・・・と以前にも書きましたが、そんなことは無いです。十分アンプに使えます。数少ない高μのST3極管として重宝しています。
 
かなり入力感度が高いため、カソード抵抗につけるパスコンは省略しました。
なお、NFBをかけると周波数特性も良くなると思いますが、今回は47の直熱5極管の裸特性の音を聴きたかったので、あえて5極管アンプでもNFBはかけませんでした
 
シャーシ裏の配線の状態です。あまりきれいな配線ではありません。
最近は目も悪くなり、半田がイモ半田状態です。汗
 
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整流管に81を使用した場合、81が大きいために、見た目のバランスが悪くなりますが、
大きい順に5本のST管が並ぶとST管の展覧会のようです。
 
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出力管に3Y-P1を使用し、整流管に12Fを使用すると5本の真空管の頭の高さが揃い、見た目が大きく変わります。
 整流管の12Fはわずか40mA用のみみっちい日本独自の整流管ですが、3Y-P1使用時の総電流は、33mA程度なので全く問題なく挿し替えられます。
これで十分な音量です。
 
■試聴結果
 ハムについては、今回47は直熱管ですが、2.5Vとフィラメント電圧も低いこともあり、ハムバランサーは16Ωの固定抵抗2本で省略しました。またST管を見せるため、5本の真空管を横一線に並べる配置にしたため、ドライブ管から出力管への配線などの引き回しが長くなるなど、配線上の心配な個所も多くありました。しかも半波整流です。
 ハムの発生が心配されましたが、全くと言っていいほどハムは、ほとんど聴こえません。実質ノーハムに近いです。これには自分でもびっくり。やはり直熱管でも3極管ではないのでハムも出にくいのかも知れません。
 
 肝心のアンプの音ですが・・・試聴結果ほど、適当なものは無いのですが、47は5極管の無帰還アンプでも直熱管の特徴が良く出ている気がします。音そのものは表現しにくいのですが、少しレトロ的な音で好みが分かれるところだと思います。中域から高域の音は素晴らしいものがあり、聴いた感じではクラシックよりジャズが合うかも知れません。
 
 3Y-P1も駄球扱いされますが、小出力ですが無帰還でも、おやっと思うくらいの繊細な音を聴かせてくれます。
 
 今回は、ブログでおなじみの「Yさんです」さんから、ひょんなことでRCAの81整流管を頂いたことがきっかけで、このアンプを製作しました。
 このようなコンパチブル・アンプはアマチュアだから出来るのであって、しかも真空管の規格から少し合っていないような適当な定数の設計で、適当に作っても、それなりに適当な音は出るから、アンプ作りはやめられないのです。もちろん、いくら適当な設計といっても、出来るだけ規格に近い動作が必要で、基本的には最大プレート損失(Pd)を超える動作は避けるべきでしょうね。
 
では、今日は、このへんで・・・・・HIROちゃんでした。