■ルイジ・ケルビーニの合唱曲
2曲のレクイエムと荘厳ミサ曲(ミサ・ソレムニス)
ルイジ・ケルビーニは、イタリア生まれの作曲家ですが、多くのオペラと宗教音楽を残しています。交響曲を1曲だけ、作曲しています。(私はトスカニーニ指揮のCDを所蔵しています) ・・・その他では、弦楽四重奏やピアノソナタなども書いてはいますが、オペラ作曲家と宗教音楽作曲家として400以上の曲を作曲しています。多くのオペラを作曲しているのですが、結構有名なのは、「メデア」くらいでしょうか・・・マリア・カラスがトゥッリオ・セラフィン指揮でこのオペラを録音しています。その一部の曲がこのBOXにもおさめられています。
さて、ここに紹介するBOXはケルビーニのレクイエム2曲や荘厳ミサ曲(ミサ・ソレムニス)などの宗教音楽をリッカルド・ムーティが指揮したものを中心に収めた7枚組のもので「ケルビーニ生誕250年ボックス」 として2010年に限定発売されたものです。
なぜ、これだけ多くのケルビーニの曲をムーティが録音したのかは分かりませんが、自ら若いメンバーを対象にした「ケルビーニ管弦楽団」というオーケストラを設立していることから、ケルビーニが好きなのでしょう。それにムーティはイタリアの指揮者ですから・・・
それにしても、この7枚組のBOX・・・・CD1枚分位の価格で販売されていた超、超お買い得の廉価盤。特に合唱ファンである私にとっては、ケルビーニの宗教合唱曲を纏めて聴くことが出来、これほど嬉しいものはありません。
7枚に収められた曲目は末尾のとおりです。ムーティ指揮の演奏の他に、ネヴィル・マリナー指揮などによる曲もいくつか収められています。
このBOXの全曲については、ここでは述べませんが、このセット盤の中では、「レクイエム ハ短調」 と 「レクイエム ニ短調」 の2曲のレクイエムと「荘厳ミサ曲 ニ短調」 「荘厳ミサ曲 ホ長調」 「荘厳ミサ曲 ト長調」 の3曲のミサ・ソレムニスが何と言っても聴きものです。ケルビーニのミサ曲は録音も少ないため、いずれも貴重な音源でしょう。
二つのレクイエムのうち、混声合唱のハ短調レクイエムは、ルイ16世追悼の為に作られたものですが、ベルリオーズが激賞したといわれ、また、ベートーヴェンもこの曲を高く評価し、「自分がもしレクイエムを作るとしたらケルビーニのような曲を作りたい」と言ったというのは有名な話。しかし、ベートーヴェンは、生涯レクイエムは作曲しませんでした。(もし、ベートーヴェンがレクイエムを書いていたなら、どのようなレクイエムの曲になっていたのでしょうね・・・) そういうことがあったためか、どうかは分かりませんが、ベートーヴェンの葬儀に際して、このハ短調レクイエムが演奏されたようです。
また、男声合唱の「ニ短調レクイエム」は、比較的珍しい男声合唱用のレクイエムですが、彼自身の葬儀に演奏されています。
どちらのレクイエムもソロはなく合唱とオーケストラの演奏なので、純粋に合唱を聴きたいと仰る方にとっては、合唱のための美しいハーモニーが多く聴けるこの2曲はお薦めです。「ハ短調レクイエム」は一見、地味なレクイエムにも聴こえますが、「Dies irae」 などでは、かなり劇的な表現もみられます。
実は、この曲、私が若い頃に所属していたアマチュアの合唱団の定期演奏会で、ピアノ伴奏でしたが全曲を歌った経験があるために、私にとっては思いいれのある曲になっています。
一方、「ニ短調レクイエム」 はケルビーニ晩年の作品ですが、男声合唱らしく力強さと重厚さがあり、また、「サンクトゥス」 の旋律はなかなか魅力があります。聴く方によっては、混声合唱の 「ハ短調レクイエム」 より、こちらを好む方が多いかもしれません。ムーティの演奏は、どちらも合唱のハーモニーを重要視した演奏で、実に聴きごたえがあります。
荘厳ミサ曲(ミサ・ソレムニス)の3曲ですが、この中では「ニ短調 荘厳ミサ曲」が個人的には最も好ましく感じます。全曲で約80分ほどかかる長大でスケールの大きな荘厳ミサ曲です。「クレド」 などは圧倒的な演奏で、全体としてもバイエルン放送合唱団の美しいハーモニーが見事です。「ホ長調 荘厳ミサ曲」でも「グローリア」での華やかさと豊かな響きなど、この曲でもバイエルン放送合唱団は見事にムーティの指揮についていきます。「ト長調 荘厳ミサ曲」は戴冠式のためのミサ曲でもあるため、華やかさなども随所に感じますが合唱団は、こちらは 「ロンドン・フィルハーモニー合唱団」 私には合唱のハーモニーと声の美しさはバイエルン放送合唱団の方が好ましく感じました。
その他のミサ曲や、小品もなかなか聴くことの出来ない作品が多く、このBOXは、充分にケルビーニの合唱を興味深く聴くことが出来たセットでした。
このBOXの曲目です。購入先であるタワーレコードの通販サイトからコピーしました。
CD1
ミサ曲 ヘ長調「ディ・シメイ」(1809)
ルート・ツィーザク(ソプラノ)、ヘルベルト・リッパート(テナー)、
イルダール・アブドラザコフ(バス)、バイエルン放送合唱団
バイエルン放送交響楽団、リッカルド・ムーティ指揮
2003年3月5-8日、レジデンツのヘルクレスサール、ミュンヘン(ライヴ)
CD2
荘厳ミサ曲 ニ短調(エステルハジー皇太子のための)(1811)
カミラ・ティリング(ソプラノ)、サラ・フルゴーニ(コントラルト)、カート・ストレイト(テナー)、
トーマス・トマッソン(バス)、他、バイエルン放送合唱団
バイエルン放送交響楽団、リッカルド・ムーティ指揮
2001年1月18,19日、レジデンツのヘルクレスサール、ミュンヘン(ライヴ)
CD3
1. 荘厳ミサ曲 ホ長調(1814)
ルート・ツィーザク(ソプラノ)、マリアンナ・ピッツォラート(メゾ・ソプラノ)、
ヘルベルト・リッパート(テナー)、イルダール・アブドラザコフ(バス)、バイエルン放送合唱団
バイエルン放送交響楽団、リッカルド・ムーティ指揮
2006年6月22,23日、ガスタイクのフィルハーモニー、ミュンヘン(ライヴ)
モテット-
2. Antifona sul canto fermo 8. tona
3. Nemo gaudeat
バルバラ・フレッケンシュタイン(ソプラノ)、バルバラ・ミュラー(コントラルト)、
ベルンハルト・シュナイダー(テナーI)、アンドルー・メイヤー(テナーII)、
クリストフ・ハルトコプフ(バス)、他、バイエルン放送合唱団
2007年4月18,19日、レジデンツのヘルクレスサール、ミュンヘン
CD4
1. レクイエム ハ短調(1816)
アンブロジアン・シンガーズ
フィルハーモニア管弦楽団、リッカルド・ムーティ指揮
1980年7月17,18日、キングズウェイ・ホール、ロンドン録音
序曲集-
2. 「エリザ、またはモン・サン・ベルナール氷河への旅」
3. 「メデア」
アカデミー室内管弦楽団、ネヴィル・マリナー指揮
1991年5月22-24日、アビー・ロード第1スタジオ、ロンドン録音
4. 「メデア」-あなたの子供の母親は
マリア・カラス(ソプラノ)
ミラノ・スカラ座管弦楽団、トゥッリオ・セラフィン指揮
1955年6月9-12日、スカラ座、ミラノ録音
CD5
1. 荘厳ミサ曲 ト長調(ルイ18世の戴冠式のための)(1819)
ロンドン・フィルハーモニー合唱団
ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団、リッカルド・ムーティ指揮
1988年3月28,31日、ウォトフォード・タウン・ホール、UK録音
序曲集-
2. 「ポルトガルのホテル」
3. 「二日間、または水の運搬人」
4. 「アナクレオン、または逃亡者の愛」
アカデミー室内管弦楽団、ネヴィル・マリナー指揮
1991年5月22-24日、アビー・ロード第1スタジオ、ロンドン録音
CD6
1. ミサ曲(シャルル10世の戴冠式のための)(1825)
2. 宗教行進曲
フィルハーモニア合唱団
フィルハーモニア管弦楽団、リッカルド・ムーティ指揮
1984年7月3-5,8日 アビー・ロード第1スタジオ、ロンドン録音
序曲集-
3. 「ファニスカ」
4. 「アベンセラージュ、またはグレナダの軍旗」
アカデミー室内管弦楽団、ネヴィル・マリナー指揮
1991年5月22-24日、アビー・ロード第1スタジオ、ロンドン録音
CD7
1. レクイエム ニ短調(男声合唱と管弦楽のための)(1836)
アンブロジアン・シンガーズ
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団、リッカルド・ムーティ指揮
1973年9月24,28,29日、オール・セインツ教会、トゥーティング、ロンドン録音
2. コンサート序曲
アカデミー室内管弦楽団、ネヴィル・マリナー指揮
1991年5月22-24日、アビー・ロード第1スタジオ、ロンドン録音
3. ソナタ 第2番(ホルンと弦楽合奏のための)
バリー・タックウェル(ホルン)
アカデミー室内管弦楽団、ネヴィル・マリナー指揮
1973年5月22,23,31日、アビー・ロード第1スタジオ、ロンドン録音
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