■イタリアの名指揮者/カンテルリ
イタリアの名指揮者といわれている、グイド・カンテルリという名前を聞いたことがあるでしょうか・・・?(カンテッリと書いてある場合もあります)
右のCDジャケットの写真のように、今で言う、なかなかのイケメン男子!です。
1920年生まれ、当初はピアニストとしてデビュー、1943年にヴェルディのオペラ「椿姫」を振って指揮者デビュー。大戦後にデビューした指揮者の中では最も高く評価されていたひとり。活躍を期待されていたのですが、1956年、アメリカ公演に行くために搭乗した飛行機が墜落し、36歳という若さで世を去った指揮者です。しかも亡くなる、わずか数日前に、スカラ座の音楽監督に就任することが発表されたばかりだったという、悲運の指揮者でもあるのです。
予定していたアメリカ公演は、カンテルリと同世代の指揮者として躍進していたレナード・バーンスタインが、コンサートで代役を務めています。
もし、飛行機事故にあわず、そのままスカラ座の音楽監督に就任していたならば・・・と思った方は多いようです。
残念ながら彼の指揮するイタリア・オペラの録音は無いようですが、EMIなどにベートーヴェン、ブラームス、シューベルト、チャイコフスキーの幾つかの交響曲などの名盤を残しています。
この写真のBOXはカンテルリがEMIに残した全録音をCD8枚に収めた物。もう1枚はボーナスCDで、彼の演奏等に対する解説等をCDにしたものが入っていました。
曲目は、末尾に掲載します。(曲目は、購入先でもあるタワーレコードの通販サイトからコピーしました)
各曲ごとの感想について全て詳細に述べることは出来ませんが、いくつか代表曲について簡単に述べるとすれば・・・この中ではモーツアルトの「交響曲第29番」が光ります。この曲はカラヤンなども録音を残していますが、カンテルリの演奏は、一言でいうなら「快活で生き生きとした明るい演奏」でしょうか。
私の中での、この曲の名盤ベスト1は、この演奏です。
「音楽の冗談」は曲としての魅力が私にはあまり無いので、面白さを感じません。
ベートーヴェンは交響曲第5番と第7番が収録されています。どちらも重厚さや迫力といったものは、あまり感じられませんが、実に生き生きとしたベートーヴェンです。但し第5番は第1楽章が欠けています。セッションでは第1楽章を最後に録音する予定だったのでしょう。第1楽章を録音しないまま彼は亡くなってしまったのです。他の録音で全楽章のCDは入手できるようですが、このEMIへの第5番で第1楽章が欠落しているのは何とも残念です。
ブラームスについてもベートーヴェンと同様です。
このBOXのワーグナー:ジークフリート牧歌では、デニス・ブレインの見事なホルンを聴くことが出来ますが、ブラームスの第1番のホルンもフィルハーモニア管弦楽団なので、デニス・ブレインでしょうか?第4楽章のホルンが素晴らしい。
チャイコフスキーの第5番、第6番も堅実な演奏です。「悲愴」については、私はメンゲルベルクのような濃密で感傷性の強い演奏を好みますが、彼の演奏は感情的なものにあまりとらわれずに、純粋な音楽として取り組んだ演奏のように私は感じました。
ドビッシー、ラヴェルは、色彩豊かな音色?との表現が良いか、悪いかは、分かりませんが、各楽器のバランスのとれた音楽を聴くことができます。
なお、この録音はモノラルからステレオ録音に移行する時期の録音のため、ステレオとモノラルが混在していますが、モノラル録音でも聴きやすい音で鑑賞には、問題ありません。
・・・もし、飛行機事故に合わなかったら、いったいどのような指揮者になっていたのでしょうか・・・彼のイタリア・オペラを聴いてみたかった。。。
CD1
1. モーツァルト:音楽の冗談 K522 I.アレグロ (録音:1955年8月)
2. モーツァルト:交響曲 第29番 イ長調 K201 (録音:1956年6月)
3. ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67 第2-4楽章
(録音:1956年6月)
演奏:フィルハーモニア管弦楽団
CD2
1. ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92 (録音:1956年5月)
2. シューベルト:交響曲 第8番 ロ短調 D759「未完成」
(録音:1955年8月)
3. ロッシーニ:どろぼうかささぎ序曲 (1952年10月)
以上、フィルハーモニア管弦楽団
4. ロッシーニ:コリントの包囲序曲 (録音:1949年5月)
演奏:ローマ・スタビレ・アカデミア・ディ・サンタ・チェチーリア
管弦楽団
CD3
1. メンデルスゾーン:交響曲 第4番 イ長調 作品90「イタリア」
(録音:1955年8月)
2. シューマン:交響曲 第4番 二短調 作品120 (録音:1953年5月)
以上、フィルハーモニア管弦楽団
3. アルフレード・カゼッラ(1883-1947):パガニーニアーナ 作品65
(録音:1949年5月)
演奏:ローマ・スタビレ・アカデミア・ディ・サンタ・チェチーリア管弦楽団
CD4
1. ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68 (1953年5月)
2. ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調 作品90 (1955年8月)
演奏:フィルハーモニア管弦楽団
CD5
1. チャイコフスキー:幻想的序曲「ロメオとジュリエット」
(録音:1951年10月)
フィルハーモニア管弦楽団
2. チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64 (1950年9月)
演奏:ミラノ・スカラ座管弦楽団
CD6
1. ワーグナー:ジークフリート牧歌 (録音:1951年10月)
フィルハーモニア管弦楽団、デニス・ブレイン(ホルン)
2. チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」
(録音:1952年10月)
演奏:フィルハーモニア管弦楽団
CD7
1. ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲 (録音1954年6月)
2. ドビュッシー:3つの夜想曲より、「雪」、「祭り」 (録音:1955年8月)
3. ドビュッシー:海-3つの交響的スケッチ (録音:1954年9月)
4. ドビュッシー:聖セバスティアンの殉教 (録音:1954年6月)
5. ドビュッシー:交響的断章-ユリの庭
6. 同-法悦の踊りと第1幕の終幕
7. 同-受難
8. 同-よき羊飼い
CD8
1. デュカス:魔法使いの弟子
2. ファリャ:三角帽子より 隣人達の踊り
3. 同-粉屋の踊り
4. 同-終幕の踊り (録音:1954年6月)
5. ラヴェル:ダフニスとクロエ 第2組曲より 夜明け
6. 同-パントマイム
7. 同-全員の踊り (録音:1954年6月)
以上、演奏:フィルハーモニア管弦楽団
8. フランク:交響曲 二短調(全3楽章) (1954年4月)
NBC交響楽団
この書庫には下記の投稿記事があります。
■カール・ベーム コレクション No3
■ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ 「春」
■カール・ベーム コレクション No2
■デニス・ブレインのホルン音楽
■日本のオーケストラ2008
■カール・ベーム コレクション No1
では、また・・・・・