著者の千野栄一さんは、2002年に死去したスラブ語研究の大家で、

留学先だった東欧チェコのプラハで明け暮れた古書収集や、

異国の人々との交流を描いたエッセーです。

 

1987年刊行の単行本が、40年近い時を経て昨年8月に文庫化され、

発行部数6万8500部という異例のヒットになっているそう。

 

 

プラハの古本屋 (中公文庫 ち 9-1)

 

社会主義国での古書探しをユーモアたっぷりに書いてあり、

ある書店主は著者が求める本を「発禁処分だから売れない」と言いながら、

ニコニコ笑い、いつの間にかその本は著者の手の中にある、

といったエピソードなど、日本国内では考えられないお話もたくさんです。

 

中でも私が一番興味をひいたのは、「小さなバイリンガリストたち」という項目。

 

千野さんはプラハ・カレル大学のスラブ語科、

奥様は同じ大学のロシア語ロシア文学とチェコ語チェコ文学を学ぶチェコの方。

 

二人はチェコ語で会話し、国際結婚の後二人の子供さんが生まれ、

長女が1歳、長男が4か月の時日本に帰国されます。

 

その後の環境と、二人の子供の言葉の成長が面白く、

日本に住んでいるときは自然に日本語を習得し、

夏休みに3か月ぐらい奥さんと一緒にチェコに行くと、

チェコ語を話し、日本に帰ってくると全く日本語を忘れてしまっているが、

10日もたつとまた日本語を思い出す。

 

そして小1、幼稚園年中でまたチェコに行った時は、

日本に帰った時にチェコ語もほぼ定着し日本語も思い出して喋れるようになる。

 

更にこの時分は、夫婦は大人の会話の時はロシア語で話している、

というからすごい!

 

でもそれを子供たちが察したので、今度は夫婦はドイツ語で話す。

 

そういう環境なので、それぞれが勉強して長女はロシア語を、長男はドイツ語も習得してしまう。

本当にびっくりの話ですね。

 

 

 

バイリンガルの子供は、自然に出来上がるわけではなく、

とにかく夫婦の努力と、日本やチェコの学校や幼稚園の先生方の

(チェコにいる時は学校に編入したりしている)

思いやりで成り立っていくのだという事を、身をもって体験されています。

 

全くわからない者にとっては、

言葉はその地に行くと子供なら勝手に喋られるものだと思っていましたが、

使わないと忘れてしまう、という当たり前のことを

克服するための努力も怠ってはならないようです。

 

生まれ変わったら、3か国語ぐらいカッコよく喋りたいものです!

 

それにしても、千野さんはプラハで繰り返しビールを飲む。

実においしそうに。

私はお酒は飲めないのですが、本場のビールはさぞおいしいことでしょうね。

 

面白くて一気読みした本です。