本日、インドネシア時間18:30(日本時間20:30)キックオフでAFCアジアカップ第三戦「日本vsインドネシア」が行われます!
僕が10年間住んでいるインドネシアと、僕が30年間育った日本が公式戦で、しかも勝った方が無条件で予選リーグ突破というシチュエーションで対戦できるなんてこんな幸せなことはありません。
インドネシアサッカーはサッカー協会や政治のごたごたでしばらく暗黒の時代を過ごしていて、W杯予選にすら出れないという時期が続いていたので、インドネシアが一定の存在感を持ってサッカー界に復活してきたことが本当に感慨深いです。
折角なので、この機会に現状のインドネシア代表の状況なんかを日本の皆さんにも知ってもらおうとちょっと記事を書いてみたいと思います。
シン・テヨン監督率いるインドネシア代表
今晩、対戦するインドネシア代表「Team Garuda」は今、大きな変革期を迎えています。
まず監督を務めるのは韓国人のシン・テヨンさん。
2018年ロシアW杯で韓国代表を率いて、ドイツを倒してアップセットを起こした監督ですね。2019年12月28日に就任してから3年間チームを強化してきました。
シン・テヨン監督がこの代表チームにもたらしたものは非常に大きいと僕自身は感じていて、就任から非常に強いリーダーシップと厳しい規律をもってこの代表チームを統率しています。
これまでのインドネシア代表は代表戦でちょっと活躍するスター選手が生まれては、国内リーグで高級取りとなり、生活が乱れ、プレーの質も落ち、代表でも自分勝手な振る舞いでチームが壊れる、というような悪循環が続いていました。
インドネシアは非常にサッカー熱が高い国で、国内リーグの給料も日本の基準で考えても全然悪くなく、しかもプロ選手は給料に税金がかからないということも手伝って、サッカー選手は高級取りになります。
これが全てを狂わせてしまってきました。
特に若い選手たちが活躍するものの、その後ほとんど成長しないまま消えていく。
そんなサイクルに終止符を打ったのがこのシン・テヨン監督と言っても過言ではないと僕は思ってます。スター選手だろうが遅刻や練習中の態度、代表活動への気持ちなどを見て、基準に達していないと判断した選手は合宿中であってもその場で帰らせるというようなことを行ってきました。
最初はそれに対してサポーター、選手両側から批判もありましたが、それを若い世代の代表の結果で黙らせてきました。確実に代表チームが強くなっていったのです。
シン・テヨン監督はU-19、U-20、U-23、フル代表を兼任しており、1979年以来2回目となるU-20アジアカップ出場を皮切りに、AFF Suzukiカップを平均年齢23歳のスカッドで戦い決勝進出、そして今回18年ぶりにAFFアジアカップに出場してきて、ベトナムを倒し、初の勝ち点3も獲得してます。
結果が出れば、選手もサポーターもこの人に賭けてみようという空気感が生まれますし、若手を積極的に登用する監督ということで若い選手たちが明確な基準の下に切磋琢磨する環境が生まれています。
インドネシア代表メンバーの変化
インドネシア代表は変革期を迎えていると書きましたが、それはシン・テヨン監督が出てきたからというだけではありません。選手側にも大きな変化がありました。
それは「帰化選手の加入」と「海外リーグ経験者の増加」です。
日本のニュース記事でも取り上げられていますが、現在のインドネシアのDFラインをさせているのが元U-21スペイン代表のジョルディ・アマト。
この選手は帰化選手なわけですが、実はおばあちゃんが北スラウェシの生まれの方で、インドネシアの血が入っているということでインドネシア代表にリクルートされました。
ここが中国などと少し違って面白いので説明しますね。
「帰化選手」と聞くと全くインドネシアに縁のない選手をインドネシア人にしているとイメージされがちですが、インドネシアサッカー協会は「インドネシアにルーツを持って他の国籍を選んでしまっている、もしくは選ぼうとしている選手にインドネシア人になってもらう」という活動を続けています。
194cmのセンターバックで、現在プレミアリーグ2部でレスターに次いで2位につけるイプスウィッチ・タウンFCに所属して試合に出場している「エルカン・バゴット」は母親がインドネシア人、父親がイギリス人のミックス。
おそらく今日も先発1トップであろうオランダの2部リーグ:エールステ・ディヴィジのADOデン・ハーグでプレーしている187cmの20歳「ラファエル・ウィリアム・ストライク」はおばあちゃんがスマランの生まれ。
ベルギーリーグ9位につけるKVメヘレンでプレーする28歳、184cmのディフェンダー「サンディ・ウォルシュ」はお母さんがインドネシアとスイスのミックス。
エールディビジのユトレヒトでプレーする20歳、188cmのボランチ「イヴァル・ジェナー」のおばあちゃんはジャワの方というように、他の国籍を取得する権利を持ちながらインドネシアに「帰化」してもらうという活動を続けた結果、今回のメンバー招集が実現し、過去最強のインドネシア代表と言われる程になりました。
350年近くにわたって「オランダ領東インド」としてオランダの植民地となっていたインドネシアはオランダの血を持ったミックスが非常に多く、そのルーツを追いかける活動をインドネシアサッカー協会は続けています。これは日本がドイツを中心に行なっていることと一緒ですね。
そのような選手が増えたことに加えて、この2年間東京ヴェルディでプレーして今季から韓国リーグ一部の「水原FC」への加入が決まっている「プラタマ・アルハン」や、韓国リーグでプレーして前節のベトナム戦でPKを決めたキャプテン「アスナウィ・マンクアラム」のようにインドネシア、マレーシア、タイ、シンガポールという東南アジア圏外のプロリーグでプレーした選手が、その経験や規律を代表チームに還元しています。
アルハン選手にとっては必ずしも出場機会に恵まれなかったこの2年間の想いをぶつけられる試合になると思うので、個人的に頑張って欲しいですね!
こういったメンバーにインドネシアリーグで活躍する国内の選手たちが組み合わさって、強力なスカッドになっています。
今晩の試合はDAZNでの放送のみというのが残念ですが、日本の皆さんに少しでもインドネシアサッカーの将来性や希望を見せられるような試合になったら最高ですね。
僕はどちらの国の代表チームも好きなので複雑な気持ちではありますが、両チームの真剣勝負を楽しみたいと思います!
皆さんもぜひ試合を楽しんでくださいね!!
ひろ。
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