皆さん、突然ですけど「Ospek」ってインドネシア語知ってますか?

 

「オスペック」って読むんですけど、「Orientasi Studi dan Pengenalan Kampus」(学習オリエンテーションとキャンパス紹介)の略がこの「Ospek」です。

 

一応、インドネシアのWikipedia叔父さんに聞いてみたところ、

「Ospekとは大学で行われる行事の一種で、主に新入生に対して大学のキャンパスを紹介したり、学部、学科内での新入生同士の、または先輩たちとの交流を深める活動」

と答えてくれました。テリマカシ。

 

「新入生オリエンテーション」と言うと、日本だと恐らく学科の先輩がやるようなものではなくて、むしろ学校側が用意するものですよね。

何でインドネシアは学生たちがそれをやるのか。

 

それは、、、、

 

「Ospek」というのが実は僕らがイメージする「新入生オリエンテーション」とは、全く異なる行事だからです。

 

Wikipedia叔父さんが答えてくれたのは上辺の「Ospek」です。

実際の「Ospek」というのは、先輩たちから新入生に大して行われる「教育的指導」です。

いや、何と言うか、教育的なのかも最早怪しいのですが、、、ちょっと言い方を悪くすると「いじめ」みたいな感じになってしまうんですけど、、、

 

どういうことをするのかと言うと、例えば僕の奥さんのアリーナが大学に入学した際は、学校に集合し、そこから山奥のロッジのようなところに連れて行かれます。

 

その時の「Ospek」は2泊3日だったそうで、そこが宿泊施設になる訳ですが、いやそもそも新入生への学校紹介とちゃうんかい!場所移動してどうすんねん!と最初からツッコミを入れたくなる展開です。

 

そこからはとりあえず山道を走らされたり、キッチンがあるにもかかわらず自分たちで薪などを拾って来させられたり、ヒントなしで森の中に置いてある「キーホルダー」を探して来いと言われ、当然見つからず延々先輩たちから説教されたり、夜中に叩き起こされて夜道をあてもなく歩かされたり、、、

 

と、まあ、そんな調子で進んでいくので、当然、新入生は疲労や理不尽さが重なって精神的にやられます。

そして最終日を迎え、「Ospek」を耐え抜いた新入生たちを、急に優しくなった先輩方が思いっきりもてなす。

そこで安堵の涙を流しながら、深まった同期の絆を確かめ合い、大学生活をスタートさせる。めでたし、めでたし。

 

みたいな行事です(笑)

 

これ、僕らからしたら何してんねん!って話じゃないですか?

でも、伝統的にどこの大学にもあるんですよね。

最近では流石にもう「Ospek」止めようやという学生も多く、こういう形ではない本来の僕らがイメージするような「新入生オリエンテーション」を行っているところが大半にはなってきているようですが、依然として「Ospek」が存在していることは確かです。

*ちなみに奥さんはやられたことが阿呆らしすぎて、自分が先輩になったときは一切関わらなかったそうです。

 

しかも、以前はこの「Ospek」で亡くなる学生が出てニュースになったりしていました。

演劇などをやっている人は特にわかると思うですけど、人間って演じてやっているつもりでも時が経ち、感情移入していくとだんだん現実と虚構の境目がわからなくなってエスカレートしていくものなんですよね。

 

インドネシアで起きた100万人大虐殺の真相に迫るドキュメンタリー映画『アクト・オブ・キリング』。事件の被害者に取材するのではなく、加害者に自らの行為を演技で「再現」させることにより、人間の闇と大量殺人の狂気をあぶり出すという内容の映画は世界的にも大きな話題になりましたが、この映画はまさに「演じる」ということが、人間にどのような影響を及ぼすのかについても興味深い一面を見せてくれます。

虐殺の「再現」。その奥底で監督が見たもの:映画『アクト・オブ・キリング』

https://wired.jp/2014/04/19/act-of-killing/

インドネシアの大学進学率って30%くらいなんです。

苦労して、頑張って勉強して入った大学の「新入生オリエンテーション」で亡くなるって無念すぎるでしょ。

 

と、なんで僕が今日はこれについて書いているかと言うと、、、

昨日、この「Ospek」をオンライン上で行った大学があり、その動画が拡散され、炎上しました。(学生のプライバシーもあるので、動画を貼るのはやめておきますね。気になる方は探してみてください。)

 

「Universitas Negeri Surabaya」通称「UNESA」(スラバヤ国立大学)という非常に優秀な大学だったのですが、新入生が「ベルト」を着用していないことに難癖をつけ、延々と説教している動画です。

 

「Ikat pinggan diperlihatkan(ベルトを見せてみろ)」が昨日のTwitterトレンド入りし、その動画で説教をしていた先輩二人の顔と名前が拡散し、SNSに誹謗中傷のコメントが相次ぎ、現在二人共SNSを閉鎖しています。

 

インドネシア人の反応を見ると、

 

「今の時代にまだ、こんなことしてる奴がいるのか?」

「こんな先輩が同じ学部にいたら恥ずかしいわ。退学でいいんじゃない?」

「UNESAでさえ、こんなアホがいるのか」

 

と、ネガティブな反応が多いです。

一方で、Twitterでは「Ikat pinggan diperlihatkan(ベルトを見せてみろ)」大喜利がすでに始まっており、様々な写真と共に笑いも展開されています。

ここはインドネシアらしい!(笑)

 

個人的には伝統的な「Ospek」は時代にそぐわないと思いますし、2006年に初めてインドネシアに来て「Ospek」の話を聞いた時から、必要ないだろうと思っていたので、この炎上でさらにその流れが加速するのはいいことだなと思っています。

 

皆さんはこの「Ospek」どう思いますか?
または、日本にもかつてこういうのあったんですかね???

知ってる人がいたら、是非教えて下さい。

 

それでは、皆さんにとって今日が昨日よりちょっとでもいい日でありますように。

 

ひろ。

*「え?」