益田「中世の食」再現プロジェクトとの共同開発により考案された「戦国益田氏弁当」を初めて食べてみました。

 


 

この弁当の由来は、今から452年前の永禄11年2月にさかのぼります。益田地域の大領主であった益田藤兼・元祥親子は、中国の覇者毛利元就の居城であった吉田郡山城(現在の広島県安芸高田市)を訪問しました。この訪問こそは、一時は一触即発の敵対関係にあった両氏の和解のためであり、益田氏が毛利氏に服属することを示す場でもあるという重大な意味を持っていました。

ここで、益田親子は、高価な贈り物と一世一代といってよい豪華な料理を振る舞います。揺るぎない忠誠の証とするとともに、益田氏の財力、さらには貿易による物資調達能力、そして奥深い文化力を誇示し、毛利氏に強く印象付ける無言のデモンストレーションでもあったのです。贈り物と料理の素材には、交易によらなければ入手できない朝鮮半島の虎皮や北海道の海の幸が含まれ、益田氏の海洋領主的性格を物語っていました。その後、益田氏は毛利家中において、新参かつ一門外ながら別格の永代家老に列せられますが、この料理はそのきっかけの一つとなったとも考えられているのです。

 

益田氏には平安末期から明治まで家中に伝わった文書が「益田家文書」として残されており、日本有数の武家文書として重要文化財に指定されていますが、この文書の中には、この日の料理の献立が詳細に記されています。そして、この食を現在によみがえらせようとするのが、平成20年に始まった益田「中世の食」再現プロジェクトでした。

 

このプロジェクトは、遠い過去の料理を、益田市内の5つの食品製造業者がそれぞれの技術を持ち寄せ合い、現在に再現するものでした。しかし、このプロジェクトによる復元料理は、今の日常的な食事とは異なっているうえ、特別なイベント開催時など提供の機会も限られており、必ずしも商業ベースに乗る持続可能なものとはなっていませんでした。

 

それがこの度、5日前までの予約が必要で、3個以上20個以下の注文という条件付きながら、いつでも決まった値段で誰でも味わえるようになったのが、この「戦国益田氏弁当」です。

この弁当には当然いくつかのこだわりがあります。まずは、素材の選定において、益田家文書の記述になるべく沿い、ルーツとの共通性に基づいているということ、また現在の益田市産の素材を活かしているということです。特に、調味料は魚介や煎り酒という伝統の旨味をふんだんに使っています。さらには、「旬」にこだわることから、四季それぞれでメニューも異なるものにしています。現在は秋バージョンで、秋サケ、西条柿、マツタケ、秋ナスなどが取り入れられています。1月10日からは、鯛めし、ブリ、数の子などに入れ替わる冬バージョンが発売されるということです。

 

私もようやく賞味させていただく機会を得ましたが、清流高津川のツガニのテリーヌ、真砂豆腐、鴨肉の治部煮などもあり、なんとも贅沢で満足感たっぷりのお昼でした。(なんと、デザートには地元の三松堂さんの大福まであります。餡の中にはキウイフルーツが入っていました!)

 

 

益田市が今年度文化庁から日本遺産認定を受けたテーマのタイトルは「中世日本の傑作 益田を味わう ―地方の時代に輝き再び―」ですが、まさにこの戦国益田氏弁当は中世の益田を味わうことができる格好の食といえます。

 

さて最後に、気になるお値段は、税込み3600円(益田市内配達無料)。ご注文は、ステーキグランセゾンさん、電話番号0856-22-8239まで。