かごしま近代文学館
わたしの大好きな作家 向田邦子さんの資料室がある。
向田邦子さんの 本を読むようになったのは
実は それほど昔ではない。
「寺内貫太郎一家」の脚本家として知られ、
若い頃のわたしは ホームドラマを作る人、としてのイメージを持っていた。
雑誌「クロワッサン」を愛読していたので
ファッションや料理の記事で登場する 向田さんの姿は よく 目にしていたし、都会的な洗練されたイメージに好感は持っていたが 不思議と 本を読むことはなかった。
優等生的な印象で、当時 太宰や谷崎を愛読していたわたしには 馴染みのない感じだったからかもしれない。
「阿修羅のごとく」というドラマを見て
大ファンになった。
ドラマチックなドラマではない。
劇的な展開はあるが、描きかたが ドライだ。
そしてリアリティーに溢れている。
すごい脚本家だ、と思った。
小説では「思い出トランプ」が すばらしい。
ゾクッとする。
これほど優れた短編が書ける人はほかにいないと思う。
しかし、「思い出トランプ」が 書かれた数年後に、向田さんは 航空機事故で亡くなった。
まだ51歳だった。
もっと たくさん 小説を読みたかった。
どんな小説を書かれただろうと思うと残念でならない。

向田さんが 小学生の頃 お父さんの転勤で 2年半ほど住んだことがある 鹿児島市。
「故郷もどき」の 鹿児島に 生前の品が寄贈されている。
原稿を読んだり
インタビュー番組のビデオを見たり
趣味で集めた器を見たり
茶目っ気たっぷりの 留守番電話 の 声を聴いたりしながら
向田さんに 想いを寄せて
ひとり 静かなときを過ごした。
