前回の続きなのであらすじはありません。
第7話 悲傷と憎悪④
最初はそれが一体何なのか、理解できずにいたんだ。
俺は立ち尽くし、目の前の光景をただただ見つめていた。
喪失感とか悲傷感とかそんなものよりも、そこにある塊が何なのか理解できなくて。
「なんですか・・・それ・・・?」
別途の上にゴロンと転がるそれを指差して、俺は周囲の人間に答えを求めた。
でも・・・みんな俺を哀れむような目で見るだけで、質問に答えれはくれなかった。
「見通しの悪いカーブで崖に転落されたようです」
俺はそれにゆっくりと歩み寄り、体の途中までかけられていた白い布をそっと捲ってみる。
「そのまま車は炎上」
全体を見渡してみて、俺は初めてそれが人間だと認識できた。
「発見されたときには、既に桐生さんは亡くなられていました」
淡々と話し警察官をよそに俺は、その人間だと認識できたものを1ヶ所ずつ確認してみた。
(タダレ)
焼け爛れて縮れた・・・大きくて温かかった手。
それは幼いころ、繋いで歩いた手。
『愁真は私の自慢の息子だ』 ↓
反転部分
そういって頭を撫ででくれたその手は腕から骨が剥き出しになっていた。
焼け崩れ散らばる・・・優しくて朗らかな顔。
それはいつも笑い合った顔。
『愁真の前では笑顔でいたい』 ↓
反転部分
そういって微笑んだ顔は黒子げで誰なのか分からないうえに、頭部が割れて頭の骨の中が空洞になっていた。
「親父・・・?」
触れた部分には体温も鼓動も感じられなくて。
「なあ・・・親父・・・」
揺すってみても鉄のように固い体は転がるだけで。
「親父・・・返事しろよ・・・」
俺の問いかけに、答える口はなくて。
口らしきものが、どこにも見当たらなくて。
ああ、そうだ・・・肉の塊になってしまったんだ・・・。
「うっ・・・」 ↓
反転部分
同様から吐き気をもよおして、俺はその場にしゃがみこみ嘔吐する
声にもならない言葉も思いもすべて、心や体から吐き出そうとした。
悲傷と憎悪④ 完 ~ 悲傷と憎悪⑤に続く