今回は前回の続きの話なのであらすじはありません。


第9話 悲傷と憎悪⑥


 「まずは・・・呪陣を描くんだ・・・」


 本は奇妙な呪陣が描かれたページを開いて、それを真似して描くように指示する。


 俺は筆と墨を使って、呪陣を紙に書き写していく。


 円形に描いた文字はどう見ても現代の言葉ではなくて、全く理解できないものだった。


 それでも俺は意味もわからないまま、その呪陣を模写し終える。


 「その、呪陣の真ん中に・・・髪を・・・」


 筆を置いた俺は指示通り、短くて細い髪をパラパラと髪の真ん中に乗せる。

         反転部分(↓)  

 「さぁ・・・誰をノ ロウンダ・・・? 」

 

 本はクスクスと笑いながら問いかけてくる。


 俺は、親父の社員旅行の写真が収められたアルバムから、迷わず1枚の集合写真を取り出す。


 それにハサミを入れ、ある人物を切り抜く。


 「何で・・・コイツなんだ?」


 本はその写真を見て、わざとらしくそう問いかけてくる。


 散々俺の心を読んできたのだから、そんなこと聞かなくてもわかっているくせに。


 俺は切り抜き終えた写真をヒラヒラと揺らし、本に向かって静かに言う。


 「コイツ、葬儀のとき線香もあげなかったんだよ」


 そう・・・コイツは親父に手も合わせずにずっと笑っていたんだ。


 『今までおいしいしごとばかりしやがって。でも、オマエが死んだおかげで大役にありつけた』


 親父の前で小声でそういって、笑っていたんだ。


 田島広重・・・こいつは親父の会社の同僚だ。


 会長のお抱えにだった親父を妬み、たびたび愚痴や嫌みを言っていたと、周りにいた人間が葬儀のとき漏らしていた。


 コイツは親父の死を喜んだクズなんだ。



 「まずは試しに・・・か?」


 やはり口にしていない言葉、まで読み取って・・・本はなんでもお見通しみたいだ。


 「そうだ」

                          反転部分(↓)

 本はできると言い張るが、本当に相手をノ ロイ・・・コ ロスことができるのか、俺にはまだ 確証がなかった。

                  反転部分(↓)

 だからまずは実験台にコイツをノ ロッテみるんだ。


 地獄へ落ちるのか否か、確かめてやる。


 「それなら早速・・・指を呪陣へ・・・」


 俺は言われるがままに、右手の人差し指をそっと呪陣の上に乗せる。


 「おいおい・・・いきなり利き手の人差し指かよ・・・」


 本はなぜか俺を止めにかかる。


 利き手の人差し指が何でいけないのかはわからないけど、俺は忠告に従って左手の親指に代えてみた。


 「良案だ・・・さあ、その指に・・・」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?


 次の指示を聞いた俺は、その場で一瞬動きを止める。


 「今、何て?」


 どうしてそんなことをしなくてはいけないのか理解できなくて、もう一度本に聞き直す。


 「だから・・・」


 でも何度聞いても本は同じ指示をだしてくる。


 嘘だろ・・・そんなこと・・・常識では考えられないことだった。


 けれどここまできたからには、やるしかない。


 意を決した俺は本の指示に従い、次の行動に移る。


 第9話 悲傷と憎悪⑥ 完 ~ 悲傷と憎悪⑦

 


 

 

今回は前回の続きの話なのであらすじはありません。


第8話 悲傷と憎悪⑤

 「かわいそうに・・・」


 そんな俺に向けた同情と蔑み混じりの言葉が、遠くから聞こえって来る。


 「ほら、家宅捜査予定だったんだろ」


 「息子も大変だよな」


 周囲の人間たちの興味本位名の会話の最後に、俺に投げかけられた言葉を思い出す。

           反転部分(↓)

 「逃げるために・・・ジ サツか・・・」


 逃げるために・・・その言葉が俺の心に突き刺さった。


 

 「違う!!!」


 あの親父がそんなことをするわけがない。

                反転部分(↓)

 親父は・・・追いやられて・・・コ ロサレタも同然。

     反転部分(↓)

 「いや、コ ロサレタンダ!!!」 

      反転部分(↓) 

 あいつらにコ ロサレタンダ。


 無実の罪を着せられ、屈辱的に・・・それなのに・・・。


 「あいつらは今ものうのうと生きているんだ!!!」


 親父を殺したのに何の罪も償わないまま、平然と暮らしている・・・そんなのないよ・・・


 「おかしいだろ・・・?」


 そうだ、そんなのおかしい。


 本当の罪人が裁かれないなんて、殺人者が裁かれないなんて許されないだろ。


 「ならば・・・その手で裁けばいい・・・」


 誰もあいつらを裁かないのなら、俺が地獄へ・・・この手で突き落としてやろう。


 父を死に追いやった人間を、1人残らずこの手で地獄へ送ってやるんだ。

 

 「この指で・・・な・・・」


 俺は本を抱えて立ち上がると、仏間を飛びたした。


 向かったのは親父の部屋・・・。


 

 綺麗に整頓された部屋の真ん中に座り込み、本にページを開かせる。


 「どうしたらいいんだ!? 教えてくれ!!」


 今すぐその方法を俺に・・・その問いに満足そうに笑いながら、本は答える。


 「道具をそろえるんだ・・・」


 まずは俺は本の指示通り、儀式に必要な道具を手当たり次第に掻き集めた。


 紙、ナイフ。


 「人間の髪・・・?」


 何に使うのはよく分からないけど、ハサミで自分の髪の先を少しだけ切り取る。

(ロウソク、ビョウ)

 蝋燭、鋲 


 「綿の布・・・?」


 本いわく、包帯のような軟らかくて巻きやすいものがいいらしい。


 筆、墨。


 そして・・・写真。

反転部分

 ノ ロウ相手が写っている写真を、親父のアルバムの中から探し出しその場に並べる。


 部屋の扉もカーテンもすべて閉めきり明かりを消した暗闇に蝋燭をともす。


 いつもの見慣れた部屋が細い炎に揺らめいて、なんともいえない不気味さを出す。


 これで準備は整った・・・さあ・・・始めよう・・・。



第8話 悲傷と憎悪④ 完 ~ 悲傷と憎悪⑤