私の記憶の中の久留米ラーメンの話(3) | あくまでも私の持論なんですが

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現在の久留米ラーメンの変化

私が東京に出てからも、ラーメンの味の基準は豚骨スープであり、久留米ラーメンであった。

勿論、それは醤油ベースや味噌ベースのラーメンを否定するという事ではない。
東京で出会った醤油や味噌ベースの縮れた太麺というラーメンは私にとって実に新鮮だった。
自己主張が強く他の料理との組合せを拒む久留米ラーメンと違い、どんな料理とも相性の良いあっさりとしたスープは非常に美味しく、それはそれで楽しめたのである。

また家系ラーメンのような濃厚なスープも、方向性は違っても嫌いではない。ただこってりスープに太麺の組み合わせがややしつこい印象がある程度だ。

ただ、そうは言っても地元を離れてみると無性に久留米ラーメンが恋しくなるものだ。

東京のラーメン店は醤油や味噌の他に豚骨ラーメンも扱っている店もあり、最初に見た時にはそのレパートリーの豊富さに驚いた。
私もメニューに豚骨があると、とりあえずは豚骨を頼む事が多かったのである。
また、吉祥寺のホープ軒や調布のバスラーメン等、豚骨スープを売りにしているラーメン店にも行ってみたこともある。

だが、どの店でも私の食べたいラーメンに出会う事は無かった。

どこも独自の味付けは美味しいし、豚骨の雰囲気はそれなりに味わえるのだが、やはり久留米ラーメン独特の匂いやこってり感はどうしても感じられないのだ。

まあその事実は先に触れた通り、東京の人には匂いがキツすぎて受け容れられないのだから仕方がない。
なのでたまに帰省した際には必ず地元のラーメンを食べていたのだが、この数年久留米ラーメンに違和感を感じるようになっていた。

どの店も昔の久留米ラーメン独特のこってり感があまり感じられないのだ。

そう思うようになった元々のきっかけは210号線沿いに大砲ラーメンの支店が開店した頃ではなかったかと思う。

大砲ラーメンの本店も実は昭和28年からある老舗だ。
本店は大通りから少し入った住宅街のような場所にあるのだが、店舗の駐車場以外にも周辺に多くのコインパーキングがあり、行列の絶えない人気店だった。(もっとも私はその頃まだ本店で食べたことはなかったが)

ただ、評判は聞いていたがその立地と食べるのが難しい事から知る人ぞ知る名店、という立ち位置だったのである。

噂の行列店が大通り沿いに開店したとあって私も食べてみたが、極細麺とかなりあっさりとしたスープである。

勿論久留米ラーメンにしてはという意味ではあるが、脂の臭みはかなり抑えられており、それでいて味は深みがあって非常に美味しい。

それまでの久留米ラーメンのこってり感を代表する大龍ラーメンとは対極に位置するラーメンだったのである。

濃厚こってりな味を期待していた私としては少し肩透かしを食った印象だったが、地元に住む家族達にはかなり好評だった。

確かに、最近の健康志向で塩分や糖分、脂質を抑えたものが流行する中、久留米ラーメンの味や濃厚さは地元の人にもしんどくなっていたようで、大衆食堂型のあっさりとした、しかも凝ったスープというのは新鮮だったようだ。

それに今では本場の久留米ラーメンを食べようと観光客も訪れる様になったので、そういった人達には比較的食べやすいのではないかと思う。(それでもまだ豚骨の匂いか強いのは確かなので好き嫌いは分かれるとは思うが)

街道型の非常にこってりしたスープに対抗した食堂型の久留米ラーメンが流行るきっかけになったのは間違いない。
ただ私自身にとってこってり感を抑えて美味しさを追求するラーメンというのは東京でも食べられるので、それ程新鮮味があるわけではない。
地元でしか食べられない昔ながらの味を期待していたので残念だっただけだ。

だが、それについては心配はいらない。
大砲ラーメンではメニューとして昔ラーメンという昔ながらの濃厚なスープも提供している。
こちらは(私にしてみればまだ濃くても良いくらいだが)充分満足できるので本場の味が食べたい人には是非こちらをおすすめする。

話は戻るが、どうやらそれ以来こってり感を抑えた極細麺の大衆食堂型の久留米ラーメンが主流となっていったようなのだ。
私も何軒か人気店と呼ばれている店を食べ比べてみたが、そのほとんどが大衆食堂型であり、濃厚こってりな街道型ラーメンはすっかり姿を見なくなったのである。

私がショックだったのが、あの濃厚さが売りのはずの大龍ラーメンですらも昔のこってり感が無くなってしまった事だ。

スープの味や中細麺の見た目は変わっておらず、美味しいことは変わりないのだが、昔の強烈な濃厚さはすっかり影を潜めてしまっていた。

そのためか、脂に負けない為の濃いめの味付けだけが妙に際立ってしまい、少しくどい印象が残ってしまうのだ。

更にワンタン麺やつけ麺、チャーハンなど、さまざまなメニューが増えており、ラーメン一本で勝負している雰囲気ではなくなっていることが非常に残念だった。
個人的には周りの流行りに流されず、是非昔の濃厚さを取り戻して欲しいものだ。
(続く)