私の記憶の中の久留米ラーメンの話(1) | あくまでも私の持論なんですが

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 私の中のラーメンの記憶


私は福岡県久留米市の外れの出身なのだが、地元でラーメンといえば当然ながら豚骨スープの久留米ラーメンである。

九州出身の人間なら大抵はそうだと思うのだが、私は子供の頃豚骨ラーメン以外のラーメンを見たことが無かった。

ラーメン店のスープは無条件に豚骨であり、醤油ラーメンや味噌ラーメンといったいわゆる普通のラーメンは即席めんでしか見たことがなかったのだ。

なのでテレビドラマ等でラーメンをすすっているシーンを見たときには何故店でインスタントラーメンが?と不思議に思っていたものだ。

私が3歳か4歳位の頃会社員の父がラーメン屋をやっていた時期があり、店舗の2階で生活していたことがある。

何故会社員でありながらラーメン屋を?と不思議に思う人もいるだろう。
ラーメンを出前で頼んだ事がある人はラーメンの丼ぶりの上に汁が零れない様にラップを被せているのを見た事があるはずだ。

まだラップがメジャーではなかった当時、父の働いていたその会社ではビニールシートの周囲に輪ゴムを巻いた物、まあヘアキャップをイメージしてもらうのが分かり易いと思うのだが、とにかくラーメンの汁を零さないための商品として販売していた。

そこの社長は結構変わった人物で、まだ発売したばかりで認知度の低いその商品のデモンストレーションの為にわざわざラーメン屋を開くことにしたのである。

それならば既存の店に依頼しても良さそうなものだが、そこが変わり者で行動力のある社長たる所以である。
しかも専門家を雇うでもなく、自社の社員でどうにかしようとするところがまた面白い。

で、元々実家が食堂で調理師免許を持っていた父に白羽の矢が立った訳だ。

料理人が嫌で会社員となっていたはずの父なのだが、そこは凝り性である父は当時の有名店にて修行をし、自分なりの味をきちんと確立して店を開いたそうだ。

その期間は短いものだったが、これも会社の都合で店を畳む事になった時にその事を惜しむ人がお金を出すから店を買い取って続けないかと言われたそうなのでそこそこ繁盛していたらしい。

そんな訳で物心ついた頃には毎日の様にラーメンを食べる機会があり、その味が私の記憶に染み付いているのだ。

本場の九州豚骨ラーメンとは

豚骨ラーメンと言えば東京では白濁したスープに極細の縮れ麺、キクラゲ、紅生姜、場所によっては明太子や高菜といったトッピングのチェーン店を思い出す人も多いのではないだろうか。

まあそのイメージは概ね正しい。確かに博多ラーメンの系統でお土産などで売られているラーメンは正にこんな感じである。ただし、実際に食べてみてこれが本場九州の豚骨ラーメンかと言われれば異論のある人は多いはずだ。

私も本場の博多ラーメンや各地のラーメンを食べ比べた訳でもないので偉そうなことは言えないのだが、少なくとも東京で食べる豚骨ラーメンと呼ばれている物は私の食べ慣れていた久留米ラーメンとは味もこってり感も全くの別物で、風味が多少似ている程度でしかない。

ではそれらが偽物だと言うとこれもまたそうとは言い切れない。というのも、県や地域によっても主流となる味やこってり感はまちまちで、これこそが本場の九州豚骨ラーメン、と呼べる様な明確な特徴は実は無いというのが本当のところだからだ。

大枠で九州豚骨の共通点といえばその名の通り豚の骨を煮込んで出汁を摂っていることくらいで、それ自体も豚骨以外に鶏ガラ等を併用してあっさりとした感じを出したり、逆にねっとりとした食感を出したりと濃さも風味も様々だ。
それどころか白濁スープですらない店もあるらしいのでスープひとつとっても千差万別なのである。

麺もストレートで細麺が主流ではあるが、縮れ麺も全く無いではないらしいし、太さも東京よりは細い程度だったり極細だったりとこれもまた様々だ。
ただ、太麺やモチモチとした食感の麺はなく、味も比較的蛋白で喉ごしの美味しさが共通した特徴と言える。

結局、東京の醤油ラーメンが店によって出汁の取り方や味付けに個性がある事と何ら変わらないということである。
(続く)