私はガスの検針の仕事をしていて
毎月一回、同じお宅を訪れる
先月、悲しいことがあった
そのお宅は平屋の借家で3軒並びの真ん中
ある日のこと、いつものようにメーターのある裏口に入ったら、洗濯機が無くなっていた
変だなと思いながらも
契約は終了していないので
そのまま数字を打ち込んだ
洗濯物を干すスペースであったはずの
小さな庭には、物干し台も無く
空になった植木鉢がひっくり返り
草は少し伸びていた
ここは以前は、おばあさんが
猫を飼っているようだった
夏の頃は、日の当たる南側の戸が
少し開けたままになっていて
そこから猫が、飛び出して来て
ビックリしたことがある
また、秋晴れの日には
網戸越しに、二、三匹の猫が
丸まって寝ていた
そんな姿に私は
とても癒されて、しばらく
そこから立ち去るのを躊躇ったほどだった
それが、ついに先月、契約解除となった
この家の主が居なくなった家は
がらんと静まり返っていて
ただ、草だけが、私の胸元ぐらいに
伸びていた
猫はどうなったのだろう?
とても胸が締め付けられるような感覚になったが、止まっている時間は無く
淡々と次のお宅へ向かう自分が
なんだかやるせなかった
同時に、猫の行方が気になるくせに
それを知ろうとしない自分が
冷たい人間だとも思った
誰かにもらわれて
可愛がってもらえていたら
いいのだけれど