日本を出て1年目は毎月、2年目からは2〜3ヶ月ごとに、いろいろな国に行った。
タイから台湾に拠点を移してからもそんな生活が続くと思っていた。
最後の旅行から3年。
世界をパンデミックが襲った。
免疫系に持病があり、大動脈解離で退院した後の夫と2人
私達は引きこもる以外に自分達を守る術がなかった。
マスクと手洗い、極力出かけないようにしてきた私達。
「航空券とパスポートのみで、行き来が出来るようになるまで」と、
日本への一時帰国すらしていない。
そんな私達は今日、空港に向かっている。
嬉しくて涙が出る。
行き先はまだ日本ではないけれど…
同じ生年月日の数字とアルファベットが並んだお互いのパスポートは、既に新しいものとなり、押す場所がなくなりページを増やした古いパスポートにはたくさんのスタンプが押されている。
ああ、そうだ、
一緒になって10年。
私達はいつも旅をしていた。
いつも隣にいて、
美味しいものも、まずいものも、珍しいものも、食べてきた。
4つ星ホテルなのにボヤ騒ぎにあって、バスローブのまま外に避難したり、乗ったタクシーの運転手さんに全財産スラれたり、人生で初めてヒッチハイクしたのも、ゾウに乗ったのも、気球に乗ったのも、この10年の出来事だ。
旅先でピンチになると、人の本質があらわになる。
不機嫌になる時だってあった。
でもそれ以上に、お互い
思い合い、とにかく愉快だった。
いつでも珍道中だった。
離婚3回を経た私の4度目の結婚。
(夫は初婚)
10年の節目に(スィートテン)ダイヤモンドはなく
私達は2人で飛行機に乗っている。
じわじわくる。
よみがえるたくさんの思い出と、
どこにも出られなかった3年を思うと、じわじわくる。
私達は、生き延びていることを実感する。