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ヒロポタンの足跡

これは、気まぐれヒロポタンのたどった足跡(主に飲食系 その他諸々)を忠実に、そして、写実的でありながらも叙情的な文章で綴った、臨場感溢れる心温まる手記です。

 5月3日。宿泊調査を無事終了した我々は、帰宅してからの今夜の夕食として、パンを購入することにした。単にパンといっても、その辺のドラッグストア等で販売しているパンではない。折角、那須塩原市にいるのだから当市内外の地域住民から親しまれている「ベーカリー・クリームパン」という、栃木県北部地域における指折りの人気パン店に立ち寄ることとした。



 名前が示すとおりクリームパンが推奨品なのだが、他にも特製のカレーパンやサクサクのクロワッサンの量り売りなど、五感を魅了して止まない多種多様のパンを気軽に購入することができる。我々も過去に2度購入した実績がある。ただし、その時はいずれも午後の利用であったため、ソルドアウトの札があちらこちらの皿の上にちょこんと奥ゆかしくも控えめに置かれていたのだった。無論、今回は午前中に入店したので、たくさんの小麦から誕生した可愛い妖精達が、甘い香りとともに満面の笑みでニコニコと我々を熱烈歓迎してくれた。



 家族全員でアレもコレもと一本釣りの荒わざを惜しみなく多用し、結局、パンだけで総額約2000円もの買い物をして、我々も満面の笑みを店内に振り撒いて外に出た。
 見上げれば、昨日の不安定な天候と一転して、透明度の高い空が目にも優しい爽やかな青色の絵の具で大雑把に染められていた。まさにドライブ日和である。この時、我々は県北部にいるというメリットを最大限に活かして、福島県白河市まで足をのばすことにした。白河市と言えば、個人的にはやはり白河ラーメンを真っ先に連想する。調査任務を無事終了してのんびりと助手席で寛いでいるうちのカミさんにリサーチを依頼した。その結果、数ある白河ラーメン店の中から、帰り道のことを考慮して「麺屋 雅宗」と「手打ちラーメン 雅」の2店舗に絞り込んだ。最終的に門を叩いたのは、雅のほうだった。その理由は…。当文章を紡いでいるこの期に及んでは、もはや不明である。但し、あくまでも個人的な推測であるが、当時リサーチにおいてワガコの好みに近い方で決定されたのではないかと思われるのである。


 宿泊施設の朝食を大量摂取したことに伴い、著しい空腹感を抱くにはまだ早かったのだが、雅の暖簾を潜り、目の前に注文品が並べられ始めると、キュートな洋装から落ち着きのある和装に衣替えした小麦から生まれた妖精達との再会に心は舞踊り、胸の中で「ポンッ!」と静かに鼓を打ちながら喉の奥深くへ流れゆく味を楽しんだ。


 

〈帰路の経由地〉

 陽が落ちる前には我が家のある宇都宮に無事到着した。帰宅後、窓を開けて止まっていたリビングの空気を流し、ソファでひと休みした後、連れて帰ったキュートな妖精達をテーブルに丁寧に整列させた。いよいよ、妖精達の内部構造をじっくり観察する時間が到来した。


 高鳴る鼓動をしずめ、包丁の刃先を、小麦色の柔肌にゆっくりと落としていった。


 切断された妖精達をそっと手に取り、顔を近づけて、「さあ、ボクと一緒になろうね。」と、優しく諭すように目で囁いた。一口、また、一口と、ゆっくり時間をかけて、目を瞑りながら妖精達を頬張った。瞬間、官能的な甘さが五感を支配した。
 そして、しばらく不思議な妄想の世界に広がる秘密の花園で、時を忘れて妖精達と戯れたのだった。