「雨は冷たいけど、ぬれていたいの。思い出も涙も流すから。」
これは、森高千里さんの『雨』という有名な歌のフレーズである。この歌を聴くと、その中に登場する女性の寂しい気持ちで潰されそうになってしまう心を、必死に耐えようとしているいじらしいまでの表情や仕草、肩の震えを否応なく悲しみいっぱいに想像させられ、思わず胸が締め付けられる。
ついに関東地方も入梅を迎え、しばらく雨とともに生活することになるのだが、しかし、それにしても、月曜の雨は冒頭の歌詞にあるような叙情性溢れるシトシト感はまるでなかった。雷鳴の轟きを伴って、突発的に大粒の雨が宇都宮の街を一気にのみこんだ。折り畳み傘などでは気休めにすらならず、キケンな雨がこの身を襲撃してきたのだった。
休日2日目の昨日(月曜日)の事。ワガコは通常通り学校へ登校したので、昨日はうちのカミさんとランチした。折角だから、偏食男子のワガコがいてはなかなか入れない飲食店にしようと二人で意見交換した結果、市内中心部にある香辛料たっぷりのアジア系カフェレストラン「ブリスカフェ」で互いの波長が一致した。そこで、午前中はうちのカミさんが料理教室に参加する用が入っていたので、終了時間に合わせて適当な場所で合流することにしたのだ。従って、自分は徒歩により路地裏を逍遙しながら向かうことにしたのだったが…。
甘い誘惑をやっとの思いで振り切って、ぐいぐい歩みを進めていったのも束の間、上空は見る見るうちに恐怖感を覚える黒雲に覆われ、やがて雨が落ちてきた。雨は次第に強さを増し、歩く路面も水が勢いよく跳ねるまでになってきたので、やむを得ず最寄りのコンビニエンスストアに緊急避難した。合流する時間にはまだ早いと思い、僅か100円の支出でカフェ気分を味わえるホットコーヒー片手に、九死に一生を得た面持ちでのんびり外を眺めていると、辺りはドッと大雨に沈んだ。

コーヒーを飲み干した頃、タイミング良くうちのカミさんが駐車場に入ってきたので無事合流した。車内で再度話し合った結果、車を留め置く所から件のブリスカフェまで10分程度歩かなければならなかったので、とりあえず今回は見送って、次善の策にと考えていた「カトマンズキッチン」へ向かうことにした。カトマンズキッチンは、年末にやはりうちのカミさんと食事を楽しんで以来2度目の利用である。チキンカレーの奥の深い味わいはもとより、何よりも仄かに甘い焼きたてのナンが食べ放題である事が嬉しい(「羽ばたいて、たどりついた所」参照)。
扉を開くと、香辛料たちの複雑な香りとともに、気は優しくて力持ち的ヒマラヤ山脈出身の岳人を想像して余りある笑顔の似合うインド・ネパール系外人スタッフさんが我々をにこやかに歓迎してくれた。

前回はディナーだったため1200円程度のメニューを選んだが、今回は手頃なランチにした。ディナーのメインディッシュとして戦艦大和級の存在感を示しているタンドリーチキンがなくても、見ようによっては巨大な空母にも見えるナンを何枚でも心ゆくまで食べられるので、それで十分なのである。

甘めのラッシーを最後に飲み干した。見上げれば、窓の外は青空が眩しく広がっていた。
