毎日毎日、仕事に追われてイヤになっちゃうけど、山肌は加速度的に日々緑色を濃くしていき、街路樹や庭先を彩る花木の主役も競い合うようにツツジや藤、ハナミズキが見頃を迎えている。季節の進行は野鳥達でも感じ取ることができる。カッコウをはじめとした夏鳥と呼ばれる渡り鳥たちががそろそろ飛来してくるのだ。カッコウは通常5月上旬に日本列島にやって来て、すみかとしている山地へ向かう途中、街の電線などに止まりながら、「カッコウ…カッコウ…」と、そよ風の伴奏に乗せて軽やかに歌う。今年は季節の進みが早いので、既に日本に飛来しているものと思われる。
ところで、カッコウの仲間は子育てをしない。学術的には「托卵」と言われる習性を持っていて、ウグイス等他の野鳥が巣を留守にしている間に、こっそり自分の卵を産み落として、ちゃっかり育ててもらうのである。必死に育てている親鳥は、自分が生んだ雛ではないとは、よもや夢にも思っていないだろう。自然界の微笑ましくもシビアな一面の話であるが、この話は、ここまで。これ以上続けないことにする。
そんなカッコウの歌声でも聞こえそうなすがすがしい晴天となった土曜日、我々家族一同は前夜のディナーミーティングで決めた日曜日の行動計画に従って、昼食にラーメンを食べに行った。今回の発案者は自分だった。うちのカミさんが宇都宮市東部の大型商業施設ベルモール内で昼時に用を達することになっていたため、用達後家族全員合流して、「しなそば屋」のラーメンを食べようと思い立ったのだった。発案当時、「それは名案!」と、うちのカミさんが少女の仕草で振り向きざまに目を輝かせて賛同してくれた。その事を、投稿記事を整理している今でも鮮明に記憶している。いつまでも、女子のままでいてくれる、愛嬌たっぷりのうちのカミさん。いつも、一番傍にいてくれて、本当にありがとう。
件のしなそば屋へは、ベルモールから徒歩で容易に到達できる。うちのカミさんとは昼過ぎの1時半に、しなそば屋店内で恙なく無事合流できた。決して広いとは言えない店内にはテーブルが数卓配置されてあったが、自分達を含めて満席の状況だった。自分は初体験、うちのカミさんは実に二十数年ぶりの再会の味ということもあり、二人揃ってスタンダードにラーメンと餃子一皿を注文した。子供は、例によって、つけ麺を即決した。待っている間、うちのカミさんが、しなそば屋にまつわる身の上話をしてくれた。自分は、その話に時折相づちを打ちながら、静かに耳を傾け続けた。やや眠さを伴った心地いい時間が、春の穏やかなそよ風とともにしばらくゆったりと流れていた。
初めて口にした、しなそば屋のスープ。このまま、永遠に飲み続けていたい…。叶うなら、焼き豚にこの身を変えて、ガブ飲みしながらスープの中を泳ぎ回りたい!と、童話にでもあるような妄想が頭の中を支配した。しかし、現実はそんなお伽話を受け入れてくれなかった。ラーメンは底を着き、脳細胞はおかわりの指令を発動しなかった。消化器系が満腹感で充たされたことが主な理由だった。
やっぱり、ボクは普段人間の姿をしたタマゴの置物さ。焼き豚にはなれなかったけど、すこしコゲある焼き豚を、ボクは旨そうに食べたのさ…。