仕事で外回りに出た。渇ききっている田んぼに水が入り始め、潤いが蘇りつつあった。時折吹き抜ける南からの柔らかいそよ風が、シルクのような水面に細かいヒダを造っていた。乱反射する力強い陽射しの戯れがチカチカと瞳を刺激した。車窓から、そんなゲル状と化した茶褐色の水田の広がりをぼんやりと眺めていた時、突発的かつ必然的に、去る日曜日の昼に食べた醤油ベースの肉汁うどんの事を思い出した。この連想、イッツ、オートマチック!
その日曜日のこと。ランチの選定について「トロピカルージュ・プリキュア」を観賞しながら家内で忌憚なく意見を出し合っていると、閃いたようにうちのカミさんから花むすびのうどんはどうかという提案が出た。「花むすび」とは、宇都宮市の南隣に位置する上三川(かみのかわ)町内において、広々とした寂しげな田園地帯にポツンと一軒のみ佇んでいながらも、開店時は常に人集りが形成されている栃木県内屈指の人気うどん専門店のことである。その提案について、自分はもとより、麺類を食べると学校でのイヤナコトも全部フッ飛んじゃう程に麺好きの子供からも特段異論が出なかったことから全会一致での採用となり、前々から気になっていたといううちのカミさんにとって、遂にドキドキ止まらない記念すべき悲願成就となった。

到着時点で駐車場はほぼ満車の状態だったが、幸運にも出る車がいたため入れ替わりで停めることができた。数組待ちは想定通りだったものの、実は、午後3時前から宇都宮駅前の大型商業施設トナリエで時間厳守の用が入っていたため、若干ハラハラとした心境を隠せないままソリティア等で気を紛らわしながら待合スペースで待ち続けた結果、およそ十数分で入店を促す「どうぞ~」の声が耳元に届いた。
頼むべきメニューは既に決まっていた。待っている間、待合スペースに置いてあったラミネート加工の施されたメニュー表で検討済みだったのだ。最も、初めての花むすび体験なので、ここは迷わず自動的に一番人気のメニューから入門することにした。そのメニューとは、「岩海苔と背脂の肉うどんに、ちょい天盛りセット」のことである。うちのカミさんは二番人気の「豆乳明太子うどんの同セット」、子供は単品肉うどんで初手を打つ作戦に出た。つけ麺タイプのメニューは15~20分程度時間を要する説明を受けたので、平静を装って辛抱強く待ち続けた。そして、キラキラと輝くツヤのあるうどん達が目の前に運ばれた。卓上はパラダイスと化した。

