ブレザー姿と火縄銃 | ヒロポタンの足跡

ヒロポタンの足跡

これは、気まぐれヒロポタンのたどった足跡(主に飲食系 その他諸々)を忠実に、そして、写実的でありながらも叙情的な文章で綴った、臨場感溢れる心温まる手記です。

 始まった途端に、充実の黄金週間が終焉の時を迎えた。あぁ、5連休よ、さようなら…。再び楽しい連休が訪れるまで、心の片隅に家族と過ごした充実の日々を大きくメモしておこう。しかし、そのためには当該黄金週間で起り得た出来事等を端的に明文化しておく必要がある。

 前夜祭を兼ねて、去る4月30日の夜にココスで飲酒したことは前回投稿記事のとおりである。その当時、フワフワとした宇宙遊泳にも似た疑似体験を楽しんだので翌日の体調を密かに危惧していたのだったが、起床後、アルコール摂取に伴う副反応が特に出現しなかったことから内心ホッと胸をなで下ろした。食欲不振を伴った消化器系を中心とする全身の疲労も感じなかったため、黄金週間初日の5月1日に、晴れてランチを家族総出で満喫することにした。なお、この日、うちのカミさんが、午後3時から宇都宮駅前の大型商業施設トナリエで予約時間厳守の痩身術を受ける用が入っていたので、ランチは当施設内の飲食店を利用しようということで話が速やかにまとまった。しかし、具体的にどの飲食店を利用するかについては、家族内協議において一時膠着状態に陥ったが、この様な時だからこそ居酒屋を昼食会場とするのはどうかと自ら提案したところ、それは当を得た妙案であるとほぼ全面的な支持を得られたため、トナリエ内地下に入っている居酒屋「つぼ八」で昼食するという提案が無修正で採用された。

 麗しきゴールデンウィークの幕開けとは思えない程、宇都宮市内から駅周辺にかけての道路状況は空いていて、大きな混雑に巻き込まれることもなく、概ね定刻通りに到着した。
 トナリエの地下には、所謂ユーホーキャッチャーをはじめ様々なアーケードゲームがフロアの一画に整然と配備されていて、ピコピコとしたエレクトリックな大音響が常時フロアいっぱいに響き渡っている。そして、この日も想定通り、我々家族を乗せたエレベーターのドアが開いた瞬間、大音響という名の巨大なサメに、我々は抗うこともできず一瞬で丸飲みされた。
 フロアの中ほどには、多種多様のクレープや清涼飲料水を購入できるパステル画のような可愛らしい軽食店が入居していて、その店を囲むように、誰でも自由に利用できる4人座りのテーブルがここもまた整然と設置されている。普段このエリアを通過する際は利用者も疎らで、明らかにテーブル設置数が余剰なのではないかと余計な心配をしてしまう事が多いのだが、この日に限っては各校則で決められたブレザーをスタイリッシュに着こなした大勢の学生達等で活気に満ちた賑わいを見せていた。そんなブレザー姿の集団を尻目にどんどん奥へと突き進んで行くと、目的地であるつぼ八が「ひる呑み!」の看板とともに両手を広げて我々を静かに迎え入れてくれた。


 居酒屋という響きと、これでどうだァ!という視覚的な魔の誘惑に、未練残しても心寒いだけだと思い、ついビールを頼みたくなってしまう気持ちに一瞬傾いた。

〈視覚的誘惑〉
 
 …しかし、今、我が身を脅かしている空腹という喫緊の課題を解消することを最優先事項と考え、「呑んじゃぇ~」という悪魔の囁きをブルブルッと振り切って、最終的にはおすすめメニューの山賊揚げ定食を迷いなく注文した。なお、子供は焼き鳥が食べたいと訴えたので焼き鳥3本を、また、うちのカミさんはエビフライの定食を慎ましく所望したので、併せて注文した。
 暫く店内をぼんやり眺めているうちに、食べるべき品々が次々と小気味良く運ばれた。
 古代浪漫溢れる山賊揚げを一つ口に含んだ瞬間、まるで胸を火縄銃でズドンと撃ち抜かれたような衝撃を味わった。鼻をツンと刺激する山椒の尖った香りは隣に座っていた子供にも伝わり、興味津々でソロソロと箸をのばしてきた。大人の階段を登り始めている子供の味覚に、「遠慮せず、食べていいよ」と快く促した。

〈狙われた山賊〉

 しばし家族全員無言のまま、生命の存亡に関わる重大な空腹問題に各自真剣な眼差しで取り組んでいた。

〈進捗率90パーセント〉

 …愛しいワガコよ。あと数年も時が経てば、キミも折り目正しいブレザーに身を包んだ立派な学生に成長するのだろう。そして、大人になったら裕福な生活を送りたいという、希望という名の荷物をキミならきっと軽々と持ち上げることが出来るだろう。そんな夢の途中で、今日の出来事やボクの事を、そっと思い出すがいい。