もう大分前のことのように思えるが、北九州→神戸の旅を終えて、最後のチャプターを書き忘れていた。松江を離れ〝決戦の地〟神戸入りした当時の絵日記だ。
松江から神戸。こんな当初のシナリオがあったが、移動目前で軌道を修正した。神戸を通り越して大阪へ。まぁ、東京と横浜のようなものだ。大きな軌道修正ではなかったが、目的は大阪の旧友との会合と、大阪南部、堺の〝日本一の定食屋〟再訪だった。
堺へのルートは難波からの南海電車が定番だが、小生の場合はこのルートは使わない。今回は先ず天王寺まで行き、そこから阪堺電車に揺られて行くのがお気に入りだ。先ずは天王寺の見上げると首が痛くなる建物の横にある小さな〝停車場〟へ。以前、他のSNSで紹介したように、この巨大ビルと、それが見下ろす西成の街という構図が興味深い。富と貧困が混じり合う空間。
阪堺は、そんな街を走る電車としては、まさに絵に描いたような存在だ。こんなレトロな交通機関が、この大都市に生き長らえているのも興味深い。東京に当てはめれば「電車」というよりは都電荒川線。街中をコトコトと走りながら、スロートリップを楽しめる。差があるとしたら荒川線が東京をアーチ状に回るのに対して阪堺はひたすら南下する。天王寺起点の「上町線」と、かの新世界の入り口でもある恵美須町起点の「阪堺線」が、南下途中で1本になり浜寺まで走る。
▲令和にこんな停車場ある?▼車内も昭和的無防備さ
この定食の名店は「寺地町駅」が最寄り。だが、今回はそこまで行くことはなかった。阪堺電車の中で判明したのだが、当日はなんと休店日。少々路頭に迷うことになったが、そこははハプニングが日常のふらふら旅。堺、堺東という大きなターミナルも近い「大小路」という駅で降りてのプランBに計画を切り替えた。
とはいえ、プランと言ってもスマホ片手の情報収集で、なんとかお目当てだった店とも似通ったタイプの定食屋を見つけて突入した。すこし遅いランチが祟り、1軒目は営業時間のハズが入口はすでに施錠。2軒目も「あかんか?」と思いつつ夏陽に焼かれながら辿り着くと「どうぞ!」の声でようやく昼メシにありつけた。
住宅街の中の佇まいは、どこの町にでもあるフツーの定食屋。失礼ながら「パッとしない」という表現が似合うような店だった。メニューもどこにでもある品揃え、否むしろ品ぞろえは少な目である。この段階で、頭の中は「美食」ではなく、とにかく胃袋が満たせればという本能的な欲求に切り替わっていたのだが、結果的には、再訪ありの名店だった。
頼んだのは「お昼のおすすめ ミンチカツ定食からあげ2個付き」。実際に出されたものの見た目も、何の変哲もないフツーのメンチ。だが、みそ汁の最初の一口から持って行かれた。取り立てて特別さはなくても、丁寧に出汁を取って作られた深みがある。そのため一口の予定が3回そそる。メーンのミンチも唐揚げも、どうということはない町の、否家庭の料理の様相だが、しっかりと丁寧に作られているのが感じられる。
付け出しのような醤油で煮込んだぶつ切り鮪と、何故か隣にある卵焼きまで手作り感、そして丁寧に作られているのが判る。料理が盛られた四角いお盆をみれば、しっかりと一汁三菜に盛られている。「絶品」などと評価するのはそぐわない。丁寧に、しっかりと手を掛けて作られた料理、小鉢、汁物のアンサンル。猛暑の堺で、安心感に包まれたようなランチを楽しんだ。
▲一言で言い表すなら「優しい味」
満足感に包まれて定食屋を出ると、直ぐ近くにあった洋菓子店「フラン」に寄り道する。差し入れ用に購入した品もパイ生地の工夫が効いた逸品だったが、つまみ食い用に1個だけ買った小さなアップルパイも悪くない。個人的には果物の固さが感じられるようなパイが好みなので、この店のかなりしっかり、しっとり煮込まれた林檎は「…」ではあるが、パイ生地に織り込まれた豊穣なバターの香りは絶品である。やはりパイはバターだ。
そんなことを呟きつつ、夜の宴が待つ大阪市内へ、再び阪堺電車でコトコトと戻る。まるで、タイムスリップした昭和から令和に戻る旅のように。
今回の絵日記は、ここでおしまい。
既にSNSにも上げたものもコミで、残り物の写真を張り付けておくが、最初は矢鱈怒りっぽい人しかいないお店、そして神戸の人だけ特別な呼び方をする料理についての衝撃の真実だ。
































