もうアイルランド戦メンバーも発表されましたが、毎度の代表戦あとの〝おさらい〟でも。
シーズン初テストとなるイタリア戦。皆さん、どんな採点でしたか?
マオリ戦後のコラムを読めば、だいぶ親切なトーンだとお察しでしょうは、昨季までの2年間の苦闘を考えると、イタリアとのテストも、やはり素直に70点以上は上げてもいいか。
今回のイタリア戦コラムは、なんだか自分でも取り留めなくポジティブ要素を並べてしまったけれど、要点は下記の2項目かな。
① 防御の熟成(とりわけ個々の責任感、そして3人のユニットとしての集散の精度アップ、さらに全体の防御オーガナイズ)
② キック戦術の熟成およびキック、パス、ランのバランス
上記2項目は、コラムでも触れた部分、舌足らずな部分が混在しているのだが、要は段階的にチームとして機能し始めていると評価したい80分だった。多くの選手が特別な何かが上乗せされたのではなく、3年目の蓄積、チームとしての完成度の進化をイタリア撃破の要因に挙げている。
①の防御面は、#6ベンさんの驚異的なパフォーマンスが先ず大きなインパクトになったが、それにも引っ張られて、否、適切な言葉を選べば「助けられて」、FW・BKともに昨季以上の出来栄えだった。
ただし、タックル以外の要素も然りだが、コラムでも指摘した通り、アズーリの出来栄えはすこし踏まえておいた方がいい。6ネイションズの中では、〝若干ながら〟ではあるがヨーロッパベースのテストが多いチーム(とはいえジャパンほど長時間フライトにヤワだとは思わないが)。そこそこ気温抑え目だった試合前日のラマロ主将とのやりとりでも、やはり湿度はキツいものがあったし、チームのちょっとしたコンビネーションを見ても、「?」のプレーは少なくなかった。
つまり、日本での出来栄えも、8掛け、8割5分で見ておいていいだろう。
まぁ、それでも桜のジャージーの昨季までからの前進は認めたいゲームだった。
で、先ずその防御の熟成からだが、この部分、コラムでは端折ったが、HC代行ニールさんにも試合後の会見でも当然聞いたのだが、その答えはこんな内容だった。
「ディフェンスコーチのギャリーが本当にいい仕事をしてくれています。彼はすごく情熱を持ったアプローチで選手たちをコーチしてくれて、そこにエディーがアグレッシブな姿勢でディフェンスをしろとやってきたことで、今日のような結果になったと思います。日本の強みでもあるトランジションのところもしっかり出来ていた。ここまで拘って来た成果だと思います。でも、最終的にディフェンスというのは、張っているのは選手ですから。彼らが素晴らしい仕事をしてくれたと思います」
なるほど、なるほど。選手からはGG(ジージー)とも呼ばれるギャリー・ゴールドについては、昨秋のアイルランド戦後のコラムでも「さらっと」レベルで触れているが、 ニールさんの言葉どおりなかなかパッションと〝狂気〟を持って組織防御と個々のタックル力アップに磨きをかけているのだろう。イタリア戦後の取材で原田衛くんにも、GGさんの防御担当としての良さを聞くと、こんな話をしてくれた。
「(良さの)一つは情熱というか、ディフェンスってチーム愛というか、どれだけチームのために体を張れるかで、それがディフェンスの醍醐味だと思う。なので、システムもそうですけれど、どれだけ情熱を持って臨めるか。そういうところを、ギャリーさんはレヴューとか、個々のタックルについてもですが、指摘してくれるので、そこがイタリア戦は良かったのかなと思います」
もうすこし、なにか情熱以外の大きな(具体的な)エッセンスがあるようにも思うのだが、原田くんだけではなく、コーチ、選手揃ってギャリーさんのパッションの所を挙げているのは揺るぎのない彼の資質であり、誰もがインパクトを受けているギャリーのコーチとしての〝強み〟なのだろう。
ここら辺は、定点観測的にその取り組みを見られないのは残念だが、ゲームの中でのパフォーマンスとしては十分に頷ける成果を残していると言っていいだろうか…むしろ、ここからの相手とどこまでやり合えるか、合えないのかを見ていきたいところだ。
だが、これもジョン・カーワン以降のコーチが何度も指摘してきたことではあるが、日本選手が、1度のツアー、1回の合宿、1日の練習で見せる=積み上げるパフォーマンスの進化はなかなかのものになろうとしている。ここもチームとしての3年目の進化の大きな要因だろう。
イタリア相手の80分間を見ても、1対1のタックルでのヒットの強さ、ユニットとしての集散の確実さ、個々の判断もあるだろうが、連携し合いながらのオフザボールの選手の動き=ポジショニングと、昨秋以上のレベルに入ってきている。大会ウェブサイトを見れば明らかだが、イタリアがタックル総数172回の内ミスタックル16、ドミナントタックル5だったのに対して、ジャパンが153回中ミスタックル14、さらにドミナント10という数値が防御の勝利を指し示している。
前主将の方のマイケルは、事ある毎にこんな事を話している。
「練習は前ほどのキツさはない」
第1期エディージャパン時代は、まだまだ世界トップ水準の戦いにおけるゲーム理解度、スキル、そして決定的なフィジカルの格差を、徹底したハードワークでなんとか補ってき。だが、この第2期での大きな変化の一つは、所属チームでの積み上げも含めた個々の選手のフィジカル、スキル、ゲーム理解度の進化だろう。このような「ベース」の部分の上乗せの恩恵もあって、「第2期」では、マイケルの言葉通り以前のような時間、ボリュームをかけずにジャパンとしてのクオリティーを上げていると感じている。ここも定点観測不可能のため「感じている」としておこう。
そして、忘れてはいけないのが、ここまでの代表戦での積み重ねだろう。
自分自身も含めてだが〝外野〟はどうしても勝った負けたで一喜一憂するものだ。だが、エディーや、マイケルのような経験豊富な選手がいつも口にするのは、数年前と比べて飛躍的に組めるようになったティア1クラスとのテストマッチの増加だ。
簡単な比較を紹介しておこう。
エディーの2度も含めて直近3回のHC就任2シーズン目のテストマッチの数字だ。6か国対抗およびラグビーチャンピオンシップ参戦チーム(実質ティア1)とそれ以外のティア2(もしくはティア3)との対戦数の比較だ。就任2シーズン目というのは、初年度、つまりW杯翌年のマッチメークが、日本、対戦相手双方にとってすこし不安定になることで、安定的に試合を組める2シーズン目という設定だ。
【13年】 【17年】 【25年】
T1 4 5 6
T2 10 6 5
ここは、国際部門で手腕を発揮したJRFU岩渕健輔前専務理事(8月1日よりJRFU会長補佐)、国際部のメンバーらの貢献およびエディーら現場の一部〝口利き〟もあっただろう。喫緊の代表戦を振り返っても、昨秋のロンドン・ウェンブリーでの南アフリカ戦後に、選手は日本でプレーする多くの同国代表選手とのテストについて「リーグワンでの対戦とは全く違っていた」と〝本気〟の世界王者を思い知らされている。
最近代表選手も盛んに口にしている(半数以上はメディアの誘導でだが)〝ゴールド(エフォート)〟について、イタリア戦後にマイケルが触れていて、後半に所謂ボコられたアイルランド戦後についてこんな事を話している。
「ゴールデンエフォートというキーワードがありますが、昨季のアイルランド戦後半のメンバーがあまりパフォーマンスが良くなかった。それを修正して、今回は週の始まりからインパクトを与えられるように意識してやってきた。個人としてはタックルミス、ノックオンがあったので、しっかりもう一回やっていきたいと思います」
マイケル自身の反省は置いておいて、ダブリンでのアイルランド戦後半の惨敗でのワークレートが非常に低かったことを、次のシーズンにはかなり修正出来ているのは、秩父宮での80分でも良く判る。こんな負けからの学びや直接肌で思い知らされた格差が、世界のラグビーの中で自分たちの置かれた座標や、足りない物を実感させられたことで、「国内でいちばんいい選手が集まるチーム」を「世界で勝つには足りない物ばかりのチーム」に意識変革させ、貪欲に成長を求める空気感がチーム内に醸造されてきているのだろう。
だいぶ長たらしく書き綴ったが、2番目に上げたキックを交えた戦い方でも、「ゲーム理解度」のアップが大きな要因になっている印象だ。コラムでも何度も触れてきたが、ティア1ネイションズとの対戦で痛感するのが、個々の選手のゲーム、試合展開を読む能力の差だ。このエリアの差が、結果的にプレー瞬時瞬時に自分がどう動けばいいか、何に備えればいいかという判断力の差にもなる。結果的に、対戦相手が日本より適切に、早くに、次のプレーに動いて日本が後手を踏むというシーンは、何度も味わわされてきた。
この現実は今も続いていると感じているが、イタリア戦を観ると、準備段階でのコーチング、インプット=事前のお約束も含めて、桜のジャージーも「どう動けばいいか」という領域で、なんとか世界10位と渡り合えている。アズーリのファーストトライは完全に個人技でやられたが、コラムでも触れたが、むしろ17分の右展開からの松永拓朗のトライや、遡っての前半9分、15分など随所で見せたSO伊藤龍之介とWTB植田和磨とのドンピシャのキックチェースなど、ジャパンの意図したアタックが機能して、トライシチュエーションまで持ち込めているのは評価していい材料だ。
経験値に裏打ちされた判断力は、なかなか差を埋められない究極の差でもあるのだが、日本代表はそれを組織連携やゲーム、戦術理解の深化でなんとか埋め合わせようとしている。このエリアも、引き続き、さらにレベルの高いエメラルドグリーン、トリコロールのジャージーとのゲームで、どこまで対抗出来るのかに注視していきたいものだ。
先にも書いた通り、ハイボールの選択や、ラン、パスとのバランスについては、予想以上に伊藤龍之介がいい選択とスキルを見せている。ここも結果的に、彼のアグレッシブなゲームスタイルに直結するのだが、コラムでも紹介したイタリア代表HCゴンサロさんの言葉に、外交辞令ではない部分があると信じたいところだ。ま、それがお世辞だとしても、桜の#10がここまでの160分で見せたものに何の遜色もないのは間違いない。
テストラグビーという舞台では「小ささ」「フィジカル」というマイナス面は間違いなくある。だが、どのポジションも共通ではあるものの、ゲームで15人と15人が対峙したときに相手に「嫌だな」「面倒」と感じさせる10番はそう多くはない。それを感じさせる21歳を、残る15か月でどこまでテストラグビーで本当に遣り合える10番に仕上げることが出来るのか、時間切れで選外になるのか。ここは、コーチの腕の見せ所だ。
個々の選手の評価は、2027年10月へのセレクションも交えてコラムの方で書いている。ネタ証しをすれば、27年へ向けたセレクションの部分は〝ぶろぐ〟からの引用も多々あるのだが、そこはお許しを。なのでココ(個々)についてはココ(此処)ではそこまで奉らないでおこう。〝記入漏れ〟した何人かはいるが、そこを網羅すると結構な文字数にもなるものだ。
さて、時間は「試合後」より「試合前」という段階だ。無事チームに合流したエディーは、オンラインのメンバー発表会見でこんな意気込みを語っている。
「この大会、最初の週はいい成績を収められた。非常に印象深いスタートが切れましたし、素晴らしいラグビーを展開出来た。アイルランドはイタリアとはまた異なるチームですし、様々な脅威をもたらす相手です。先週よりもポゼッションが多くなるとは思いますが、我々はディフェンスの向上に拘って準備を進めてきた。そこでしっかりとラインを上げていきたい。ポットで仕掛けてくる相手にクイックラックでボールが出るとアタックが優位になるという展開も想定して、そこのエリアに着手してきました」
そう。多々あるフォーカスポイントの中でも一つの焦点は防御でありコンタクトエリアでのバトルになる。シャムロックのジャージーの男たちは、まずしっかりとこのエリアでの制圧を挑んでくる。そんな勝負で注目したいのは、個々のワンオンワンタックルでイタリア戦のクオリティーを見せられるか。その後の組織防御を着実に履行できるか。そこが一定のレベルでパフォーマンス出来るとしたら、次に伊藤龍太郎を軸としたアタックで、どこまでバリエーションを持って世界3位を苦しめられるかという勝負になる。
因みに、2027年での日本の開幕戦(vsサモア)が行われる舞台(会場)、ニューカッスルでの試合について指揮官は
「今はアイルランド戦に集中している」
エディーらしい対応で会見を終えている。
あ、このタイミングなので、アイルランド戦メンバーについても触れておこう
リンク通りだが、スターターの変更は一時離脱の石田吉平に代わりメイン平のみ。メインが力を発揮するチャンス到来であるのと同時に、この変更の無さは、本気のテストの雰囲気に包まれていいものだ。
イタリア撃破で見所が増えた次の中間地帯戦。対戦相手がかの国に居座っての2戦目と考えると、若干日本がアウエーなのか…いずれにせよ、前週土曜日に世界10位に浴びせた固い防御と、バリエーションを増やすアタックで、どこまで世界3位を苦しめられるのか。
勝負の時まで、あと2日余りに迫る。


