▲快足にハードタックルも魅せるWTB内田くん。ルックスもなか
なかだが、そのポテンシャルを世界の舞台でどこまで開花出来るか
週始めの6月16日に湾岸エリアを東へ遠出をしてきた。
目的地は千葉県長生郡。
未来の桜の戦士がジョージアへ飛び立つ前の合宿がお目当てだ。
改めてFIFAワールドカップの関心度を再認識させられたのは、この日の千葉の山奥くんだりまで来た記者の数。いわゆる「新聞記者」という括りでは「0人」。新聞各社から、見事なまでに〝取材対象外〟だと突き付けられた。ラグビー惨敗である。
この業界出身者としての基準では仕方のないことではある。勤務していた時代以上に記者数も潤沢とはいえないであろう中で、〝北中米案件〟のために国内外で人手が必要な状況は間違いない。房総半島の里山まで書き手を1人出すことも意味がないという判断だ。もちろん上記した「記者」以外に数名の取材者はいたのだが、なんとも寂しい限りだ。U20というタグビー強化には重要な世代の〝ワールドカップ〟でも、この有様だ。ここは、彼ら大学生ではなく、実質上国内の「楕円景気」を引っ張り上げる役割を担う、シニア代表の関心度がモロに影響していると考えていいだろう。
で、記者数とラグビー人気の能書きはほどほどにして、参加メンバーの中で真っ先に話を聞きたかったのが、WTB内田慎之甫くん(筑波大2年)だった。
先ずは、本番の日本戦情報だけお伝えしておこう
■ジュニアワールドチャンピオンシップPool B日本代表試合日程
月,日 現地(日本) 対戦相手(開催地)
6.27 15:30(20:30) ニュージーランド(クライン)
7. 2 20:30(25:30) イタリア(同)
7. 7 15:30(20:30) スコットランド(同)
👇メンバーについては、ここいらへんで
〝桜の蕾たち〟は、既に20日に決戦の地へと飛び立ち臨戦態勢に入っている。
で、名前を挙げた内田くんは、既に佐賀工高、そして昨季の所属大でも、如何なくそのスピードを見せつける存在だが、わざわざ山奥まで出向いて話を聞きたかったのは、先の遠征で行われたNZU(ニュージーランド学生代表)との最終戦でのパフォーマンスだった。
チーフスの本拠地FMGスタジアムを決戦の舞台に用意してもらった一戦では、18分のキックチェイスから、かのミルズ・ムリアイナの甥で、既にハイランダーズとも契約する天才肌のNZU#10ミカに走り勝ち、ルーズボールを浮かせてSO丹羽雄丸くん(同志社大2年)のトライアシスト。自身も2トライと持ち味の快足も如何なく見せたが、それ以上に、サイズに似合わない所謂「えぐいタックル」で何度もデカいNZUメンバーに突き刺さっていた。
「デカい相手に低いタックルいって、いい場面もあったが、下にいっても上(上半身)で繋がれちゃってピンチになる場面も多かった。そこはチャンピオンシップへ向けて課題で、ボールを殺しに行くタックルがもっと出来たかな思います。大学の試合では弾かれてしまう場面も多いが、NZUがフィジカルに任せたアタックをしてきたので、いい感じでタックルには入れました」
ご本人は、決して満足していないのだが、確かに多くの好タックルの後に相手にボールを繋がれるシーンが何度もあったが、そこはNZ本場仕込みのオフロードの巧みさと組織防御のマターにもなってくる。この大学2年生のタックル自体の質は悪くはない。17分の自陣レッドゾーンでの右サイドを崩してきた相手への一撃や、23分のラッシュアップして相手WTBを仰向けに倒すプレーなど、大きな相手の懐に入り込むような低さとパックの強さが光る。167㎝、73㎏というサイズを考えれば、インターナショナルのステージでコーチから関心を持たれるのは容易ではないが、一見するとハンディキャップと思える〝小ささ〟を武器に出来ていると感じさせた。
勿論、いいタックルとスピードの「正当な理由」も持つ。
オンラインの観戦でも、その鍛えあげられたマッシヴさが芸術的な領域の太腿が印象に残った。これが、あの初速から一気にギアをトップに上げる加速力を生み、低く鋭く突き刺さるタックルの源泉だろう。その尋常ではない加速力で、防御の1歩目2歩目が遅れて、結果的には抜き去られている。本人も「下半身、背中の筋肉が大事だと学んで、そこを大事にして鍛えてきた」と自己鍛錬の効果を実感する。
スピードに関しては、高校、大学と正確なスプリントタイムを計測していないため、自分自身では分からないというが、50m5秒台クラスの足を持つ。本人は「レベル違い過ぎますよ」と苦笑したが、見た目の印象では筑波の先輩でもある福岡堅賢樹の領域のフィニッシャーだ。
大分のスクールで小1から楕円球を追い、父親の母校でもある佐賀工、関東の強豪・筑波大とキャリアを積んできた。初めて挑む〝大会形式の国際舞台〟へは「ここで活躍出来ないともっと上のカテゴリには呼ばれないと思うので、自分のスピードだったり、小さくても戦える自分の強みを見せていきたい」。自分のリミットまで持ち味を発揮する舞台が近づいている。
U20ジャパンを率いる大久保直弥HCは、この快足ランナーについて「日本のチェスリン・コルビなれる存在」と評価する。シニア代表を見ても、ようやく怪我からの復調を感じさせるジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)、昨秋のヨーロッパ遠征でも負傷離脱まで攻守にインパクトを残した石田吉平(横浜キヤノンイーグルス)と同じ系譜の〝コンパクトWTB〟が存在感を見せる中で、その後を継ぐランナーとして注目の存在だ。トレーニングスコッドとして宮崎に呼ばれる武藤航生(横浜E)も含めて、この若いアウトサイドBKたちが、この先どこまでトップチームに食い込んでいけるか。こんな観点からでも、ジョージアでのパフォーマンスが楽しみだ。
上記した名前に加えて「若手」という括りで考えれば、シニア代表のスコッドとして初めて宮崎に入った22歳のFB上ノ坊駿介、23歳のWTB植田和磨(ともにコベルコ神戸スティーラーズ)ら才能を発散させるアウトサイドがふつふつと浮上してきている。ここはJRFUおよびエディーの中期的な思惑が上手く実を結ぼうとしている(一部には「若手投資よりもいまのベストを選ぶべき」という不満も聞こえるが…)。当然ながら、この顔ぶれの中から最終的にジャージーを掴む者、掴めない者も出て来るだろうが、彼ら20代前半の才能が、自分の持ち合わせた能力をどこまで磨き上げることが出来るかは、これからの日本ラグビーには欠かせないテーマだ。
もう一人、自身を磨き上げる存在としてこの〝山奥〟で話を聞いておきたかったのはPR本山佳龍くん(静岡ブルーレヴズ)。先日のコラムで話を聞いたこともあり、「その後」のご自身の感触を知りたかった。途中出場したNZU最終戦では、最初のスクラムこそ上手く組めなかったが2度目のセットはしっかり相手に重圧を掛けてPKを獲得するなど、すこし〝お兄さん〟の、サイズのある相手ともしっかりと組み合えていた。8分のラインアウトからのモールでもドライブの軸となりトライを生み出すと、33分の敵陣22mライン手前での空中戦ではモールでいいエッジを作り出してゴール前まで25m近くを押し込んだ。
この1年は、高校日本代表合宿での怪我から、前半の半年はリハビリ、後半はようやく実戦復帰してゲーム勘を掴みつつあると感じたが、本人は「フィジカル面でもスクラムでも通用する場面もあったが、ボールキャリーで高くいってしまうと持ち上げられたり、そこからボールを奪われたりしたのを肌身で感じた。そこを改善していきたい」と実戦での感触を話している。内田くんも同じだが、ジョージアで結果を残すことも十分に重要な一方で、それ以上にこの経験を自身の成長の糧として、さらにシニア代表でも活躍出来るプレーヤーとしてU20カテゴリーから先へ進むことが最も重要だ。
NZU戦のパフォーマンスで、この2人に加えて印象に残ったのは、CTB福田恒秀道(帝京大1年)、SO丹羽くん、そしてこのツアーから主将を担うNo8坪根章晃くん(帝京大3年)あたりだろう。西野誠一朗、山崎大雅という慶應義塾LOコンビのワークレートも、流行りのオフザボールでのエフォートとしては興味を惹くものだった。
福田くんに関しては、父・恒輝さんが早稲田大SO時代に取材してきた経緯もある。当時の、この伝統チームの中では、あまり型に嵌らない発想とプレーが印象的な司令塔だった。そんな個性に惹かれて、記事にする以上によく話をした選手だった。その型に嵌らなさもあり、就職した社会人の強豪は早々にチームを離れてしまったが、ポジションこそ1つズレるものの息子は父にも通じるスキルフルなミッドフィールダーとして高校、大学、そしてユース代表として存在感を発揮している。
サイズは、今のインターナショナルでは決して恵まれないが、NZU戦では意図的にSOの位置でボールを持つアタックが多い中で、パスを受けながら前に出れるプレーぶりが印象に残った。本人は「父からは、タッチフットとかでの抜き合いなどで学びはあります。相手と正対しながら前に出るのは、ジャパンでの攻め方として、相手の内肩(ウイークショルダー)にしっかり仕掛けるのは教えてもらってきた」と振り返ったが、この福田くんの動きが、アタックラインを引っ張り上げて、日本らしい攻撃的なラグビーを作り出していた。こういうボールもラインもドライブさせられるCTBが居ることで、先に触れた内田くんら快足アウトサイドがスピードを発揮出来るラグビーが見せられれば、27日に開幕する大会も面白い。
丹羽くんは桐蔭学園時代にゲームメーカーとして注目した存在だったが、西の伝統校に進学したこともあり、なかなか大学でのプレーを観られなかった。オンラインながらNZU戦で久しぶりにプレーを観たが、フラットパスを使いながらラインを動かし、自ら相手防御のギャップに仕掛ける目敏さは高校時代から変わらない。話を聞くと、「紺グレ」のチームではポジション争いでなかなか苦戦を強いられているようだが、まだ2回生や。このハミルトンでの試合も、いい仕掛けをしながらコンタクト後にボールを奪われるなどのミスもあったが、ここはこの先のゲーム勘と国際経験の上乗せで十分補える部分。U20で国際ステージでの経験値を上げ、〝何か〟を掴んで、西の古豪、そして若手が浮上しつつあるシニア代表での10番争いへも進んでいってほしい才能だ。
坪根主将についても、開始早々からストロングキャリーを見せて、NZUレベルのサイズとフィジカルには十分戦えることを証明した。生涯初のスキッパーに、本人は「しゃべるタイプじゃないので、背中で、プレーで見せてくれと言われています」と控え目に語ったが、饒舌なタイプではない一方で、南半球からの映像からはプレーで引っ張るタイプのリーダーとしての仕事は十分果たせていると感じた。「NZ遠征では、体は大きいけれど1個1個のスキルの部分では日本の低さであったりスピードは効くと思った。一人ひとりがそこをしっかり出来れば、チームは更によくなる」という。格上ばかりのジョージアでの〝本番〟で、どこまで前へとボールを運び、チームを引っ張れるか。将来へ向けた試金石になる。
NZU戦では個々の選手がそのポテンシャルを輝かせた部分があった一方で、地面のボールへの絡み方、ボールが止まった時の反応の速さとモーション・スキルの的確さは、流石に〝オープンサイドの産地〟に一日の長があった。それがU20ジャパンのポゼッションを低下させることに繋がった。さらに、密集サイド、所謂チャンネル0から1にかけてのエリアを簡単に突破されて、一気にインゴールまで持っていかれる失点が目についた。
ここは、とあるチーム関係者の指摘で納得したが、今の国内大学レベルのラグビーでは、インターナショナルレベルでは当たり前の密集サイドでのねちっこいフィジカルな攻防がそこまで多くないという傾向がある。いいテンポ、流れでボールが出れば大きくボールを動かす選択肢も多いため、NZUが仕掛けてきたエリアでの防御に若干の淡白さがあったのだという理屈だ。
このチャンネル0-1での防御破綻は坪根主将も「ラックサイドを崩されたのが多かった。FWで負けているのは事実です。そこは鍛えていきたい」と指摘する。ジョージアでの本番では、対戦相手はNZU戦のビデオやU20ジャパンのサイズを観れば、明らかにこのチャンネルに仕掛けてくる。NZU戦であからさまになった〝宿題〟を、本番キックオフまでにどこまで修正して臨めるかも鍵を握ることになる。
そのジョージアでの戦いを考えると、坪根主将が初戦のNZに関しては、かなり分析も進み、ゲームプランも選手の中に落とされていると語っている。いきなりプール最強の相手との対決にはなるが、2015年W杯の南アフリカ戦、7人制の16年リオ五輪NZ戦に倣って勝負どころに置いていい。最初に当たる最強の相手こそ、本気で倒しに行くべきターゲットだろう。例に挙げた「歴史的金星」の時は、周到過ぎるほどに技術面、戦術面、メンタル面で勝つべき正当性まで掴んだ上で臨んだ試合だった。今回も、この1年以上に及ぶU20のキャンペーンの全てを賭けるようなキックオフまでの準備が出来れば、動かないはずの山も動く可能性はある。
全ては準備と彼ら自身の決意にかかっている。



