昨日の出来事で既に「旬」ではないが、リヨンのおはなしを少々書き残しておこう。
曇天の湾岸をぶっ飛ばして東へ。
船橋・栄町の〝怪物〟オペティ・ヘルの移籍会見を覗いてきた。
縦・横・奥行きと相変わらず分厚い「立方体」に、柔和な笑顔での登壇が、なんとなくオペティの移籍への本音を物語る。
大きな理由はスクラム。
「フランスのレベルの高いリーグで成長を目指したい」と更なる進化を求めての決断だという。数年前から日本以外のさらにハイレベルなリーグでの挑戦は頭の隅にはあったという。チームやエージェント、さらに仲間からの誘いを認めているが、「まだその当時は、僕自身にそこまでの実力はなかった」と説明する。この発言からも判るのは、スピアーズとジャパンでの進化があったからこそ、結果的にオペティを海外へと後押しすることになったということだ。
そのジャパンでのプレーが〝ショーケース〟となり、海外強豪クラブの目に留まることになったのも間違いない。本人、笑顔で詳細は語らなかったが、複数海外クラブからのオファーがあったことは認めている。その中で、繰り返しになるが、スクラム強化には最適という判断で、フランスが誇るグルメタウンでのプレーを選んだ。
受け入れ先のクラブにも少々触れておこう。
スピアーズの公式リリースでは「LOU」。通称、略称だが、先に書いたように所謂リヨンだ。正式名称は「リヨン・オランピック・ウニベルシテル」。創部は1896年と、パリに次ぐ大都市のクラブに相応しいが、実力的には歴史のほとんが〝中堅〟という印象だ。この日の会見でも、スピアーズ関係者と「オタク(クボタ)が強くなり始める前の位置づけくらいかな」なんて雑談をしていた。現時点でのフランスTOP14でも、14チーム中11位という実力だ。
この順位を考えると、オペティにとってポジティブ要素は「プレー時間」だ。トゥール―ザンを退団した齋藤直人は、世界最高峰の#9と同じチームでプレーすることで、自身の成長を目指したが、プレータイムという観点では苦戦を強いられた。「学び」か「プレー時間」か――。この議論に正解はないが、自分が何を求めて強豪クラブに挑むかによってその価値は変わるものだ。
個人的には、より高いステージでプレーするなら、いかに長くピッチに立ってプレー出来るかは、選手個々が得るものを考えると相当価値のあるものだと感じている。もしオペティが、他の名立たる強豪クラブ以上に、リーグ11位のチームでプレータイムを稼げるとしたら、その恩恵はかなり大きなものになるだろう。まぁ、その成長が、オペティをさらなるフランスの強豪や、プレミアシップなどでの挑戦へと後押しするなら、日本代表とスピアーズにとっては大きな損失になるかも知れない。それでも、数シーズンとはいえ日本でインパクトを残した選手が、さらにステップを上がって行けるとしたら、その選択肢を尊重するべきだろう。個人としては、信条的にも心情的にも「個」を優先するべきだという価値観だ。
リヨンのハナシに戻るが、23年RWCでは、9月28日にトゥールーズで日本vsサモアの一夜明けで、そこそこ強行軍でこの町を訪れ29日のNZvsイタリアを観戦した。残念ながら試合会場のPO=パルク・オランピックはサッカーの本拠地だが、完成10年あまりの6万級スタジアムは壮麗な建造物ではあった。ただし記憶に焼き付くのは、試合後の〝事件〟だ。
主催者側からは、遅い時間帯に中心地までのメディア用シャトルバスがあるというインフォメーションがあったが、予定の時間を過ぎても一向にバスはやってこない。イタリアンのベテランジャーナリストも同じ〝罠〟にかかっていたが、そもそもフランス人の話を100%信じるのは間違いなのだ。だがそれでも、ご丁寧にメディアインフォメーションにも書かれていたことだ。そんな状況の中で、日付も変わった時間帯になり、既にスタジアム内外もゲームの後始末、清掃のするスタッフ程度しか残っていな状況になった時に、数名の帰宅しようとしたWR(ワールドラグビー)、組織委スタッフと遭遇。状況を説明すると、諸々連絡をとった挙句に、「どうやらシャトルはないようだ」と説明するのと同時に、「申し訳ないので、俺たちの車でホテルまで送るよ」と思わぬ提案をもらった。
おそらくホスト側としても、メディアに「噓の説明をされた」と書き立てられるのは得策ではないという思惑もあったのだろう。深夜のリヨンをかなり懇切丁寧に降りたい場所まで送り届けてくれた。実はこのリオンのNZ戦翌日はアルゼンチンの〝事前偵察〟も兼ねてvsチリを取材する魂胆だったため、深夜のリヨン駅で時間を潰して朝イチの列車でナントに向かう計画だった。そのため、ホテルではなくリヨン駅まで送ってもらい、始発を待ったのが事の顛末ではあった。
かなり脇道に逸れてしまったが、スタジアムのハナシに戻ろう。
ラグビーは、やや小ぶりなスタッド(ドゥ)ジェルランが本拠地ではあるが、それでもキャパシティは4万超となかなかのもの。観戦し易さでは、むしろこちらの器のほうがベターかも知れない。願わくは、オペティがリヨン人の不確かな情報で深夜~未明に路頭に迷うことがなければいいのだが…。
そして、ファンは気になるオペティの移籍の詳細だが、結論から書くと完全移籍になる。府中のワーナー、原田のような、いわゆるレンタルで日本国内での契約を継続しながらの挑戦ではないのだ。代理人マターということもあり、本人はあまり詳細には触れなかったが、2年契約というよりはむしろ1プラス1、つまり2シーズン目はオプションないし要相談という内容だという。
勿論、本人は「戻って来てスピアーズでプレーしたい気持ちはある」と話しているが、その気持ちに偽りがない一方で、彼が望むような活躍が出来れば〝復帰〟の可能性は遠ざかるという皮肉な現実もあるだろう。そして「代表」については、今回メンバーから外れているように、当面はリヨンでの順応に注力することは、エディーとも相談済みだという。気掛かりは、ジャパンがオペティもプレーするヨーロッパへ出向く秋のテストウィンドウに参加が出来るのか。そして、育ったオーストラリアが舞台となる1年後に、桜のジャージーを着るのか。全ては、新天地でプレーを始めてから見えてくるだろう。
