認識されてるのはいかほどの人たちか…。

 

なんてエラそうに書く前にオマエがしっかり書いておけと怒られそうだが、東芝ブレイブル―パス東京は唯一定期的に「定例会見」を行ってきたチームだ。

 

「なんじゃそれ⁉」

 

という輩もいるかも知れないが、まだに文字通り「定例の会見」だ。

6月11日に府中くんだりまで行ってきた。

薫田真広社長(兼GM)が事業面を中心に、会社の状況や取り組み、新たな戦略を語り、状況に応じてHCやキャプテンが登壇して、チームの近況や前節の振り返り、次戦への意気込みを語る。先ずは強面(失礼)社長のシーズン総括の挨拶を。

 

「クラブとしましては3連覇がかかったシーズンでしたが、結果は中々満足いかない1年だった。初めての7連敗も喫しましたし、開幕と最後の埼玉パナソニックワイルドナイツとの2試合をみても、決して満足いく試合じゃなかった」

 

この発言は、GMという立場を踏まえたものだったが、社長としてのコメント、つまり事業面での説明は興味深いものだった。親会社(東芝)からの提供資金こそ非公開だが、毎回、事業に関わるそこそこ踏み込んだ数字も明らかにしているのが、このチームの定例の特徴でもあるが、この日公開された数字=2025-26年収支の一部をお伝えしておこう。

 

 

【2025-26年シーズン事業売上高】

総額 11億970万円 154%

(スポンサー、母体企業支援除く)

《内訳》

スポンサー収入 7億5300万円  210%

チケット収入  1億9800万円    98%

(1試合入場者数     12781人      126% ※リーグ最多)

グッズ収入      8800万円    87%

ファンクラブ収入   4470万円  126%

アカデミー収入    2600万円  124%

※%は前シーズン比

 

 

売上が2桁億円というのは、スポーツビジネスを広く見渡せば大した額ではないかも知れないが、薫田社長が「聞いたことは無い、おそらくウチだけだと思う」と語ったように、ラグビー界ではエポックな数字だろう。ラグビーもようやく20億、30億という数字を目標に掲げる時代になった。

 

錚々たる――という表現はすこし持ち上げ過ぎだろうか。

しかし、薫田社長も「グラウンドの結果に反し、事業の数字では成長出来た。数字狙いにいって取れたという意味では事業スタッフよくやった」と評したようにリーグ6位、準々決勝敗退に終わったチームとしてはかなり善戦と見ていい数字だろう。昨季まで連覇を遂げていたチームという恩恵を踏まえた上でも。

 

マイナス成長となったのはチケット収入とグッズ販売。ここはチームの不振が如実に表れたようだ。見方を変えれば、成績的にはかなり落ちたところで、下落をこの程度に抑えることが出来たのは上々かも知れない。

 

収益のバランスがスポンサーに大きく依存しているとも解釈出来るが、ここはリーグワンという事業の現状が反映されている面もある。先ず、致命的にチケット総数=座席数が少なすぎる。確かに集客力(ホストゲーム)もリーグ最高位のこのチームでも1万2000人台程度ではるが、2万~3万人というキャパのスタジアムが安定的に確保出来ない国内&ラグビー事情では、この数字を拡大するには、そこそこの努力が求められる。

 

同時に、開幕戦でチームが実施した「4万人プロジェクト」のような取り組みでは、どうしても収益以上に集客を重視するため、地元小学生などの招待の比率が高まり、結果的にチケット収入にも影響するからだ。

 

そのため、まだまだ事業化過渡期のリーグワンでは、やはりスポンサー収入に依存せざるを得ない。理想としては、この売上の中でリーグ側の収入や分配が、チームに還元されることが増えれば。このリーグの収益性は、NTTグループ等の大口なスポンサーでリーグも善戦する一方で、放映権など海外リーグでは大きな収入になるフィールドに開拓の余地がある。ま、ここらのハナシはまたあらためて。

 

ピッチ上の総括はトッドさん自らが登壇。優勝から6位へ転げ落ちたシーズンを受けて、こう発言している。

 

「望んだ結果にはならなかったが、来季へ向けてこの4項目を準備していきたい」

 

その4項目は、

①     セットピースの改善

②     ハイボール

③     スキル、遂行力の改善

④     ディシプリン

 

④ディシプリンに関しては数シーズンに渡る課題で、今季もワーストの235。勝敗にも大きく響いた。伝統的にはスクラムにこだわってきたチームだが、その破壊力は年々薄れ、ストーバーグは獲得したもののワーナーのような「高さ」を欠いたのも響いた。注目は②。従来、トッドさんがこのチームに落とし込んだスタイルは、パス重視のボールを展開するラグビー。しかし、シーズンを重ねる毎に相手は「基本蹴ってこない」という防御を敷くことで、強みを期待通りに生かせない試合も何度もあった。リーグワン参画チームの、相手の戦術に対する対応力はシーズン毎に高まっているのも響いた。③の遂行力の低さも、この防御し易いチームに転じたことも大きな要因だ。勿論、ここまでもキック0で戦ってきた訳ではないが、アタックバリエーションにキックを増やすことで、自分たちの強みを生かせることが出来れば、再び対戦相手の〝厄介度〟は高まるはずだ。

 

トッドさんの振り返りの中で、こう語っている。

 

「前シーズンまでに感じないプレッシャーがあった」

 

様々に想像は出来るものだが、本人に具体的にどんな部分がチームにプレッシャーとなったのかと聞くと、こんな説明をしてくれた。

 

「連覇した2シーズンはリーグで一番ボールをキープして攻め続けて、キックは最小でした。でもことしは一番ではなかった。相手にアタックを分析され、読まれる中で、どこかで手詰まりになる中で蹴る判断に踏み切れるか踏み切れないかと迷いがあった。2連覇をするところで機能していた部分、自分たちを高みに連れて行ってくれた要素を信じ続けるのか、すこし課題は残るが、もしかしたら何か糸口になる戦術を採用するのはというところは、ものすごく難しい判断を1年通して強いられました」

 

この4項目とコメントから想像力を掻き立てられるのは、捲土重来を目指す来季は、勿論いきなりキッキングチームは在り得ないが、トッドさん流のアタッキングチームを貫きながら、キックも上手く混ぜ込みながらのアグレゥシブさ溢れる新生ルーパスを見せてくれる期待感だ。

 

HCマターはここらへんで、会見最後に登壇したマイケル主将にも、自身のパフォーマンスに関してすこし触れておこう。

 

なんども触れてきたが、今季のマイケル。否、今季前からだが、彼の持つポテンシャルとしてはベストじゃないと個人的には感じてきた。今回のシーズンを終えての会見では、こうぶつけてみた。

 

「個人の数字的にはいいものもあるが、観ている側としてはパーソネルベストとは言えないシーズンだと思うが、本人はどう感じているのか」

 

それに対するマイケルは、こんな振り返りをしている。

 

「過去3年間自分の中ではパフォーマンスは上がって来た。今年は、シーズン前の代表での怪我で、その期間出来なかったものも感じていて、それが影響しているかなと思う。パフォーマンスはシーズン通して少しずつ良くなったと思うが、ベストではないなと。アスタッツは良くても、質はまだまだ上げないといけない。特にコリージョンエリアはかなり下がっている。理由がフィジカルなのか、スキルなのかそこはいま探しています」

 

アスリートの宿命ではあるが、確実に年齢による〝減退〟は免れない。だが、その一方で、リーチマイケルというアスリートを舐めてはいけない。彼の持つポテンシャル、経験値は、まだまだこの男を磨かせるものを備え持つ。何を磨き込み、鍛え上げ、新たに付け足していくのか。この選択を正しくすることが、マイケル再生の大きなテーマになる。ここは、もう一つの〝所属チーム〟日本代表での活躍、そしてチームのパフォーマンスにも大きく影響するだけに、是非、上手く克服して、バージョンアップを求めたい。

 

帰り際には、思わぬ遭遇もあった。

昼過ぎという時間帯もあり、チカバで昼食をと思いながら歩いていると、なにやら複数の人影が…。近づいていくと、大男と標準サイズの外国人。さらに近づくと、見覚えのある風体だ。

 

「どうしたの? チーム会見? どんなこと話すの?」

 

気軽に話しかけてきたのは、5週間程前に府中でのキャリアを終えたリッチー・モウンガだった。一見用心棒風の大男はセタ・タマニバル。この2人だけじゃなく、チームで〝オキニ〟の定食屋に入ろうとしているところだった。

 

「そう。きょうが最後の〇〇屋なんだ」

 

なにやらしみじみと、名残惜しそうに話したリッチー。

プライベートな時間を尊重したかったので、早々に立ち去ろうと「寂しくなるよ」と右手を差し出すと「俺もだよ」と応じてくれた。

 

別れ際の挨拶はお互いに「また会おう!」

立ち去りながら「来年のオーストラリア。その後はまた府中で!」と声を掛けると、ニカっと笑って手を振った。週末に予定されている「ファン感」の後に故郷へと帰る。イベント取材は現状ペンディングのため、場合によっては本当に来年秋のオーストラリアで再会かも知れないが、心の中では、どうせなら日本復帰で再会したいものだと思いながら、昼メシ物色へと気持ちを切り替えた。