リーグワンはレギュラーシーズンが終わりプレーオフ、入替戦という最終コーナーへ。
週末は、皆さまどのスタジアムへ出向きましたか?
各々、楽しめる80分だったようだが、観戦ゲームのおさらいを、先ず土曜日から。
熊谷らしい強風、否豪風の中でのプレーオフ前哨戦①は、スコア上では期待外れではあったが「見応え」という意味では、十分遠出の価値はあったと感じるゲームだった。
書き残しておきたいのは、勝者の#10山沢拓也のパフォーマンス。ここは唸らされた。
先ず興味深かったのは、横殴りの風の中で両チームがどんな戦いを見せるか。
伏線になったのは同じワイルドナイツがD-Rocksによもやの黒星を喫した1週前の試合だった。ゲーム自体は、デビュー戦で28タックルを敗者に食らわしたFLオスティンなどのトピックスがあったが、港区北青山では異例の強風がインパクトを残した。
ワイルドナイツの風下からのキックオフでスタートした80分。セオリー通り、通常以上にキックを抑えてパス&ランで仕掛けた中で、首位チームの12-17で折り返した。試合前の時点で最下位だったチーム相手に、よもやのビハインドでのハーフタイム。とはいえ、逆転が信条であり、猛烈な風上に立つはずだった後半に〝まくる〟のは、そう難しくない見通しでもあった。
だが、後半が始まると、1時間前に吹き荒れていた風は凪に転じていた。これが決定的な敗因とは言えなかったが、個人的には非常にシンプルかつ短絡的な〝学び〟を感じていた。
強風の日は前半風上を取るべし
これが不変の定理だとは主張しない。だが、いつ何時どう変化するか判らない自然現象に関しては、その時点=キックオフ時の状況を優先するべきだと実感した。。
それから8日後の熊谷も、さらに強い風の中でのゲームとなったが、ワイルドナイツは再び風下からのキックオフでゲームを始めたのだ。しかし、前週と違っていたのは「10」が齊藤誉哉から山沢に代わっていたことだ。
スタンド最上段の記者席からキックオフのカウントダウンを聞きながら頭の中で、こう呟いていた。
「この風下からのスタート。ワイルドナイツと山沢はどうゲームをデザインするのか」
その回答が、キックオフから見て取れた。山沢の右足から蹴り上げられた楕円球が、強烈な向かい風で押し戻されながら落ちて来る。それを身長198㎝の#5エセイがキャッチしてラック。そのまま左展開して、CTB長田智希がラインブレークしてそのままインゴールへ。電撃トライは開始20秒の出来事だった。
向かい風は一般的には厄介なものではあるが、ハイパントに限れば〝いい選択肢〟になる。それをものの見事に体現したキックオフだった。
このキックだけなら「よくできました」レベルだが、この#10は15分には自陣22mライン内から逆風を突いて50mのエリアキックを繰り出し、1分後にもロングキックとは言い難いものの再び22m内からエスケープキックでハーフライン後方まで押し戻すなど「風下=不利」というセオリーを蹴散らした。
勿論、ここが山沢にとってのホームスタジアムという利点はあった。本人は見事なエリアキックについては「風が舞っているので、どのエリアならどんな方向に吹いているかも意識しながら蹴った」と振り返る。ピッチの上で、どの位置でどんなキックを蹴ればいいのかをしっかり頭にインプットし、同時に刻々と変化する風も読みながらゲームを組み立てていたのだ。
足だけではない。21分の自らのトライは、敵陣右展開でのフラットパスで、縦に走り込んできたHO坂手淳史に防御ラインを崩させてから、次フェーズでのCTB長田への内返しから再びパスを受けてと、ハンドリングワークで仕留めた。この個人技で、スコアは21-0。ここまで1試合平均19.8失点しか許していないチームとしては〝セーフティーリード〟として、流れを引き寄せた。
エディー第一期政権の時に、高校生で練習生として代表に呼ばれた山沢だが、エディー→ジェイミー→再びエディーと、代表に呼ばれては外されるという憂き目を味わわされてきた。天性のアタックセンス、足技を持ちながら、防御、フィジカル面を中心とした不安定さを嫌われてきたが、この日のパフォーマンスを見ると、やはり魅力溢れるアタッカーだ。この試合がリーグワン100キャップのメモリアルマッチとなり、特製Tシャツで祝福された山沢に、敵将リーチマイケルは試合後の会見で「大きな怪我をしながら山沢が100キャップを獲得したのは本当に嬉しい」と称えたが、度重なる怪我の中で「100」に到達出来たのは、健在ならスタート、ベンチに関わらず常にメンバーに選ばれていたことも窺い知れる。
勿論、このワンサイドは山沢1人がゲームを支配したわけじゃない。大きな要因は接点でホストが優位に立ったこと、敗者がセットで不安定さを見せ、シーズン通しての課題だがディシプリンの低さ(それも接点が要因ではあるが)、徹底し続けてきたキックを使わないアタックなどの要素があっての45-0ではあるが、次のステージ=プレーオフでも、野武士の#10のファンタジスタぶりは楽しみな要素になる。
あまりにワンサイドになった土曜日とは対照的に、日曜のプレーオフ前哨戦②はスリリングな展開になった。
と、書きながら、実はスコアや試合展開以上に「1位通過」側の強さを印象付けた80分だった。
最終スコアは神戸の24-19。「いい試合じゃん」でいいスコアではある。だが、レッドゾーン侵略=22mライン突破を軸にした〝数字あそび〟に勝敗の明暗が読み取れる。
スタッツ上でのレッドゾーン侵入回数(カッコ内は22m侵攻回数分のスコア率)は下記の数字だ。
スティーラーズ 9(2.3)
スピアーズ 7(2,7)
スコア率ではむしろ敗者が上回っている。だが、さらに詳細を深掘りすると、興味深い差が見えてくる。
手元のメモでは、22m侵攻は少し違う数字が残る。
スティーラーズ 7
スピアーズ 6
これはあくまでもゲームを見ながらのメモ書き、つまり見落としもあれば、厳密な22mラインを越えた回数ではなく、一連の攻防の中で何度かラインを前後したようなプレーは「1回」とカウントしているものだ。
この数字の中でスティーラーズは、前半2回のレッドゾーン侵攻で2トライをマークしている。対するスピアーズは、前半を19-17で折り返しながら、5回の22m突破で3トライ。悪い数字ではないとしても、神戸の効率には及ばない。そして後半を見ると、22m突破は神戸5回、船橋1回と逆転。しかも、神戸が初めて船橋を自陣22m内に入れたのは後半35分のことだった。
戦前にSNSですこし呟いた数字をおさらいすると、1試合平均反則数9だったスピアーズのこの敗戦での反則は13。平均12から10に抑えた勝者とは差をつけられた。同じく「優等生」数値だった1試合平均得失点差21も、スコアが示す通りの結果だった。神戸がよく守り、ディシプリンでも上回ったという結果は、勝ち進めば再び相まみえる決勝戦でも少なからず影響を及ぼす数字になるだろう。
その一方で、かなり地力のある神戸に対して肉迫するスコアを残した船橋も十分〝圏内〟という力を示した。数字が全てを支配するものではないが、この日に計測されたものを覆して船橋が悲願の覇権を掴むには、何かの上乗せがマストになる。
