結論からいうと、土曜日のリーグワンでは〝風〟は吹かなかった。

 

3試合全てが〝トップ6〟生き残りに関わるゲーム。金曜日の下剋上に続く変化を期待したのだが、全て上位チームの勝利に終わったため、戦前の混戦模様が80分後にはプレーオフ進出チーム確定という結末になった。

 

観戦したのは秩父宮でのBL東京(6位)vs静岡BR(8位)。3カードの中でも最も〝勝者が笑う〟一発勝負度の高い試合だったが、リーグ連覇中の6位が力の差を見せた。

 

勝負の肝はブレークダウンに尽きる。

 

ターンオーバー獲得数のスタッツだけを見れば7対6と大差はない。だが、試合が進み、個々の選手の消耗も進む中で、勝者が接点でのファイトで優位に立った。スタッツに残るターンオーバー、そしてジャッカル以外にも、BL東京の接点でのファイトに重圧を受けた静岡がサイドエントリー、オフフィートとミスを繰り返し、数値以上の格差を生んでいた。

 

脳震盪での長期離脱から復帰2戦目のCTB眞野泰地、LOジェイコブ・ピアース、途中出場のFL木戸大士郎もヘッドオンで突っ込むような必死のブレークダウンファイトで気を吐いた。今季が終われば府中を去るリッチー・モウンガの50キャップを称えるにはいい戦いぶりになった。

 

中でもインパクトを残したのはSH高橋昂平。長らく1年後輩の杉山優平の控えとしてベンチスタートを続けてきたが、今季第4節相模原DB戦から「9」を背負ってきた。

 

この1歳差の2人は同じポジションでも明確にキャラクターが異なる。優平がパスワークを軸に攻撃的な9番として筑波大時代から注目を浴びた一方で、昂平は防御とブレークダウンでのファイトというSHらしからぬ強みをみせてきた。その「らしからぬ」プレーが、この日はいつも以上に勝利へのエッセンスになっていた。

 

167㎝、79㎏。典型的な和製SHの規格だが、この日のターンオーバー数はジェイコブと並ぶ両チームトップの3回。15-22とリードされた直後の前半36分は、一度はラックでターンオーバーされたボールに絡んでPKを奪い、その後のWTBジョネ・ナイカブラのトライに繋げた。62分には、自陣22mライン内で3度スクラムを選択した静岡の右展開で、CTBセミ・ラドラドラの突進に、眞野のハードタックルに続くジャッカルで窮地を救った。73分にも、猛反撃を仕掛けた相手に、今度は木戸のタックルとシンクロして再び絵に描いたような3度目のジャッカルを決めた。

 

「FWの後ろに立っているので、絡み易いポジションだと思うし、僕の強みにしている武運。真っ向勝負は最初から分かっていたので、僕らも1週間準備してきた。ここまでちょっと僕らが受けてしまう試合があったので、今日は本当に皆が熱を持っていいディフェンス出来たかな。静岡は1人ひとりいいキャリー出来る選手がいるが、すこし孤立してしまうケースもあったので、僕個人としては狙えるところは狙っていこうと意識していました」

                          

本人はこう両チーム最多のターンオーバー(全てジャッカル)を振り返ったが、先発起用を決めたトッド・ブラックアダーHCはこう評価する。

 

「いままでパスだったりSHとして課題があるかなと思っていた。その中で強みは、今日見せたようにジャッカル。タフに。しんどいところに頭突っ込んでいける選手だが、課題が残っていて去年まで入ったり出たりだったが、シーズンオフは9番を自分のものにするぞという気構えで取り組んできた。課題を克服してチャンスをしっかりと掴んでいる」

 

恩師でもある専修大監督・村田亙は華麗な個人技で日本代表でも不動の9として活躍したが、その華やかさとは正反対の〝武器〟で魅了する。本人は今季「9」を背負い続ける成長をこう振り返る。

 

「僕自身、パス、キックのクオリティーをしっかり見つめ直して、スキルコーチと一緒に取り組んできた。シーズン前の鹿児島合宿あたりで、トディ(ブラックアダーHC)からも『自分らしさを出していったら』と話してもらった。(試合に)出られないときはチームに合わせようという気持ちだったが、自分の強みを出していかないと出られないなと考えて、それが上手く繋がっています」

 

優平もここで「21」に甘んじる選手でも才能でもない。歴史を紐解けば、その村田亙を筆頭に、伊藤護、藤井淳、吉田朋生、現役の小川高廣ら歴代府中の9番は日本代表にも選ばれてきた。この個性の全く異なる2人の9番も、十分にジャパンを狙える圏内だ。昂平、優平の争いの先に、桜の9番も見えてくる。

 

高橋が象徴するこの日の接点ファイトは、主将リーチマイケルがチーム全体に対していいリードをしてきたようだ。前週、勝てばプレーオフ進出にリーチがかかる10位横浜E戦で26-50と大敗。黒星もさることながら、その不安定さに先行きの不透明感を残した。結果的に一騎打ち状態となった静岡戦へ向けては、「ディフェンスもアタックもコリージョンエリアに拘ってやってきた」と振り返るように、相手も身上とするブレークダウン勝負をキーポイントに置いて再始動したが、火曜日のフィジカルなセッションの出来が悪く、スキッパーは練習メニューの〝追試〟を指示。翌日のオフを跨いで、木曜日の練習で再びブレークダウンメニューをハードにやり直して、チームも激しさを取り戻したという。

 

ゲームを見ての印象では、単なる激しさよりも、ダブルタックルや接点でのセカンドマン、サードマンの寄りとサポートも意識、反応で相手を凌いでいた。攻撃権を持っても接点からのボールリサイクルで微妙に精度を欠いた静岡と僅かな差が、トップ6入りとプレーオフ進出失敗という大き過ぎる差に結びついた80分だった。

 

無事PO進出で3連覇への可能性を残した勝者だが、諸手を挙げて喜んでいる状態ではない。静岡が目立っていたものの、イージーにボールを手離すシーンは少なくない。トップ4チームに比べると、この日の2チーム同様「微差」ではあっても、明らかに差がある。その一方で、意識してフィジカルエリアでのバトルで善戦したこと、攻守と左足キックでキーになる眞野、アタックの軸になるCTBロブ・トンプソン、1年ぶりに復帰したWTBジョネ・ナイカブラの見事な回復ぶり、ラインアウトの精度アップなど、勝つための素材は整いつつある。立ち上がりのスコアチャンスなどで、さらにキャリーとチャンスも作れるHOアンドリュー・マカリオを、さらにキャリーとして生かすフェーズを作れれば、戦闘力はさらに上がるだろう。

 

参考までにだが、前半14分のジョネの自らのグラバーキックを好捕してのトライは、今季奮闘するFL山本浩輝の超絶オフロードの為せる業。こういう脇役(失礼ながら)が働き始めると、この先の戦いには大きなプラス材料だ。

 

主将マイケルが会見で呟いた一言が、いまのチーム状態をよく物語っている。

 

「特別なことはしていない。初めてちゃんとラグビーをしたという感じ」