専門外のスクラムについてのおはなし。

 

みちのくへの旅など〝寄り道〟したため、3月に予定していたネタを遅ればせながらアップした。せっかく遅らせたので、4月にも実は北与野にあった〝虎の穴〟を再訪問して、付け足しをしてから編集サイドに最終稿を手渡した。

 

2年前に〝開校〟した後、この教室の存在を知り「おや」と思っていたが、失礼ながら、企画倒れに終わる可能性も考えていた。開校1年以上が過ぎ、運営も出来ているのかという思いもあり、ペコさんに直接連絡。「先ず概要を聞かせて」とお会いしたら、概要のヒアリングがそのまま取材になってしまった。裏を返せば、それほど聞き応えのあるハナシだった。

 

 

 

 

今や堀江翔太や稲垣啓太がスポットを浴びる時代だが、それでもまだまだフロントローの〝市民権〟は十分とは言い難い。誰もに持て囃される時代じゃない。まぁ、それが出来ているのはジョージアだけかも知れないが…。

 

個人的にはフロントローという稼業は、究極的には縁の下の力持ちでいいとは思う。独り歩きするイメージで褒め称えられるのではなく、いかに仕事をやり遂げられたか。その中で、ペコさんが訴える通り、このポジションでも「輝ける場」はあるのは真理でもある。いや、むしろTBやバックロー以上に構造的であり理論的、そこに情緒的な要素が加わるのがフロントローの、そしてスクラムの世界だろう。

 

 

▲ペコさん曰く「昭和の練習ですよ」。その通りのメニューでスクラム師を育てる

 

 

普段は寡黙でシャイな男たちだが、スクラムを組むことにかけては雄弁だ。そして、組み合う瞬時に、両サイドがどう相手より優位に組むのか、個々にはどう首をとるのか、駆け引きと権謀術数を巡らせるフィジカル且つサイコロジカルな勝負を、80分の中で刻々と繰り返す。味わい深い、尚且つ人間臭いポジションだ。

 

今は亡き岡仁志監督を同志社に訪ねると、よくこうこぼしていたのを思い出す。

 

「もう今は、新入生は怖くてスクラムをよう組ませられんわ」

 

高校で1.5mルールーが導入され、中学では実質上ノンコンテスト。そこで、いきなり大学に入って先輩らとフルコンタクトで組み合うのは、当時でも危険なことと認識されていた。幸いなことに、大工大高(現常翔学園)ら全国トップクラスの強豪高校の指導者たちがスクラム練習を怠らないために、まだ組み合う経験を持ちながら大学に進学してくる新入生もいるのが救いだが、多くの高校ではそこまでスクラムを学ばないまま進学してくるのも現実だ。

 

2歩も3歩も引いてみれば、今でも、否今だからこそ更に、テストラグビーでも重要なファクターのスクラムを、大学1年で初めて本格的に組み始めるという現実は、代表強化には大きな疑問符が付く。勿論、安全面、とりわけスクラムの場合は、頚椎を痛める深刻な怪我も間違いなくある中で、ユース世代においそれとハードに組むことを求められないという世の流れもある。

 

 

▲コラム内に登場する南部くん。〝颯2世〟を目指す

 

 

だが、発想を「組ませない」から「安全に組む」という転換が、1.5mルール導入後、ここまで長きに渡り手付かずのまま放置されているのは議論の余地はあるだろう。

 

より安全に、そしてペコさんが唱えるように、よりスクラムを組むことを楽しめる環境をどう作っていくか。これは、未来を担う世代から「いま」の大人たちへ突き付けられた宿題のようなものだ。